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19.甘いだけの話


「ミオリ、手……」


早く手当てしなければとずんずん歩いている途中、ルッカが小さく呟いた。

言われてはっと気が付いた。


……ずっと手握ったままだった!

しかもどさくさに紛れてさっき顔も触ってた!

ノータッチの精神忘れてたわ!


「……っごめん!」


慌てて手を離そうとすると「大丈夫」とルッカが私の手をぎゅっと握り返した。温かい手が私の手を包む。


……何が大丈夫なんでしょうか。

私は心臓がばくばくして、顔が熱くなって全然大丈夫じゃないよ!


今すぐに離したくなるような恥ずかしさとは反対に、甘い幸福感が胸に広がる。

隣のルッカをそっと見ると、青紫の目がこちらをじっと見据えていた。

その視線の鋭さに息を呑む。


「俺すぐ成長するから」


「……うん」


告げられた言葉の真意はわからないけど、真剣な様子から目を逸らしてはいけないと思い見つめ返す。


「ミオリが可愛いって思わなくなっても逃がさないからね」


握る手に力が入り、引っ張られてルッカの方へ一歩踏み出す。

ルッカの綺麗な顔が間近に迫ったかと思うと、頬に柔らかい感触を残してすぐに離れた。



……



……



……え?



頬にキスされた!?



ルッカはしてやったりという顔をしている。

私は心臓が悲鳴を上げ続けて、もう顔が爆発してしまいそうだ。


「驚いた?」


「〜〜っ!驚くよ!」


空いてる手で頬を押さえて精一杯の抗議として睨む。


「嫌だった?」


しお、と音がしそうに眉尻を下げて悲しげな顔になるルッカ。あざとく首を傾げている。

こんにゃろう可愛いな。


「……嫌では、ないけどっ」


私に襲われたらどうするの!

もっと自分が可愛い自覚持ってくれるかな!


「よかった」


だよね、と言わんばかりの笑みを浮かべる。


………今まで私、ルッカのこと見た目も性格もパーフェクトな天使だと思ってたんだけど、もしやちょっと腹黒い?


「今はこのくらいにしとくけど、もっとちゃんと俺のこと見てね」


晴れやかな表情でそう言うと、ふと思い付いたように繋いだ手を一度離して握り直した。

指を絡めた恋人繋ぎにするとそのまま歩き出す。


「……ルッカさん、そろそろ勘弁して貰えますか……」


限界です。恥ずかしくて悶え死にそうです。


「ん?なんか言った?」


「……絶対聞こえてるよね」


気分的に爆発しそうな私を見てにっこり笑う。


「慣れて」


「無理だよ!」


それと早く手当てしに行こうよ!

綺麗な顔に出来た傷が気になって仕方ないから!


私の抗議の声はのらりくらりと躱され続け、夕焼け色に染まった空の下を手を繋いで帰った。




予想してたけど、翌日は村の人達に生暖かい目で見られたよね。


……羞恥心で召されそうです。




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