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18.無駄にタフな冒険者とモブ顔仲間


夏雲が青空に浮かび、草木が青々と茂る夏になった。


毎日暑いけれど夜は涼しくなるし、昼間の気温も森の中だけあって日本に比べると全然マシな方だと思う。

森の人はその肌の白さからあまり日光に強くないのか夏でもみんな薄手の長袖だ。

男女共につばの広い帽子も被っていた。


同じ格好をしていても私だけ健康的に日焼けしていくのが悲しい。


そして夏になると村に冒険者がやって来るようになった。

その大半は村の美女達を見たいという熱い想いでやって来る冒険者だ。

だからゴツい男ばかりだった。


……危険な森をわざわざ抜けて美女に会いに来る無駄にタフなところは嫌いじゃない。

しかしここに娼館があったら最高なのになぁ、などという最低な発言は控えて頂きたい。

人族って最低だわって若い人にまで嫌われたら私、暮らしていけなくなるから。



繁忙期の宿屋に時々夜にバイトに行った。


「ミオリ!ワインこっち!」

「ミオリ!ビール無くなった!」

「ミオリ!この後俺の部屋来ない?」


ワインを運び、ビールを運び、ビンタで黙らせる。

私はガタイの良い男達がわいわいと酒盛りをする食堂を忙しく動き回っていた。


羊の頭突き回避で鍛えられた察知力を発揮して、尻を触ろうとしたセクハラ野郎には全てビンタをお見舞い出来た。

酔っている男達は誰かがビンタされる度にゲラゲラと笑い、途中から誰がビンタされずに触れるかという私の怒りを無視したふざけたゲームが開催されていた。


みんな実力はある冒険者なので私のビンタ程度では大したダメージにならないのだ。

次から手にナックル付けて殴ろうかな。




「宿屋はどんな感じだった?」


あぁ、綺麗な顔と心のルッカに癒される……品がないむさい男達と奮闘した後だと特に。

ルッカはそのまま素敵な大人になってね。


「……変な奴ばっかりだった」


昨晩の出来事を話し出すとルッカは無言になり、尻ビンタゲームのくだりで顔から表情が消えた。


「もう宿屋行くの辞めろ」


口調が変わってるんですが……。

下品な話聞かせてごめん。


「ミオリが行くの辞めないなら昨日のゲームに参加してた奴の腕折って来る」


怖っ!物騒だな!!


「触られてないからね!?」


「触られてなくても触ろうとした」


「それで折るのはやり過ぎだよ!」


ルッカが切れている……。

頑張っても説得出来なかったので宿屋のバイトは辞めることになった。




夏も終わりに近付くと行商人のオズワルドさんが再び村にやって来た。

護衛にジークとロブさんも一緒だった。


「よぅ、久しぶりだな。ちったぁ筋力付けたか?」


「うん、頑張って鍛えてるよ」


前に来たのは秋の暮れだったけど約1年ぶりだ。


「そういやお前、宿屋で働いたりしてたのか?」


「ちょっとだけね。何で知ってるの?」


「ギルドで話してた奴がいたんだよ。美女村に普通の子がいたって」


………悪かったな。


「ビンタがいい味してるとか謎の評価されてたぞ」


何だよ、ビンタがいい味って。


「ここに来る冒険者って変な人多いよね……」


「まぁオズワルドさんみたいな行商人はわかるが、こんなとこに命懸けでわざわざくる奴は変人だからな」


変人枠だったのか。通りで普通の人がいないと思ったよ。



その日の夕方、いつもルッカと訓練している場所にジークも来て貰う事にした。

一年でどれくらい成長したのか見て貰う為だ。



……それがなんでこんな事になってるのかな。



ーーードンッ!ゴガッ!!



羊の移動に手間取り、慌ててやって来た待ち合わせ場所ではルッカとジークが剣戟を繰り広げていた。

互いの持つ木の棒が激しくぶつかり合い、それは本当に木ですか?と聞きたくなるような凄まじい音がする。


何度か激しい斬り合いをした後に勝敗が付いた。

ルッカが叩きつけた斬撃により、ジークの持つ棒が音を立てて折れた。


2人の動きが止まる。


「あーあ。くっそ強いな」


「そっちも」


少し悔しそうなジークにルッカが男前な笑みを浮かべている。

先程までの空気が嘘のように穏やかになった。


なんだよ、私を置いてけぼりに仲良くなったのか。

レベルが違い過ぎて仲間に入れない……切ない。


ていうかルッカもジークもそんな強かったのか……。


「お、来てたのか」


ジークとルッカがほぼ同時にこちらを向いた。


「あああ!?」


私は思わず声を上げた。


「わぁ!?顔に怪我してる!」


ルッカの頬に傷が!血が出てる!!


慌てて駆け寄り頬に触れて傷を確認する。

良かった、そんなに深くない。一刻も早く消毒を!

天使の顔に傷痕が残ったらどうするの!


「大した事ないから」


頬を赤くして顔を背けるところは可愛いけど今は緊急事態だからね!?


「おい、俺もちょっと怪我してんぞ」


言われてちらっと見ると、ジークも顎の辺りに小さな傷が出来ている。


「うん消毒しといてね。ルッカは今すぐ行くよ!」


「……お前何気に酷くないか」


「いやジークの顔とルッカの顔じゃ重要度が全然違っ……うぎゃっ痛い痛い!」


「はっはっは。面白いこと言うなぁ」


ジークが私の頭を掴んでギリギリと締め上げる。

とんでもなく痛い!握力凄いな!ゴリラか!


「いたたた!ごめんってば!」


涙目で謝罪するとようやく手を離してくれた。


「まだ明日もいるよね?私の相手はまた明日お願い」


今はルッカの手当てが最優先だ。


「かすり傷だろ……」


「一大事だよ!」


呆れるジークを放って、私はルッカの手を引っ張って歩き出した。



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