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2.天使と出会った

歩き始めてどのくらいだろうか。


「そろそろイケメンと遭遇イベントないかな……」


もしかして何かに襲われるとかしないと出て来ないんだろうか。


足が結構疲れて来た。

道らしい道がなく、生い茂る草を踏んだり掻き分けたりしながら木々の間を進んでいるので大した距離を移動した気がしない。

唯一の救いは山と違って傾斜がなく、滑落する心配が無さそうな点だ。

難点はかなり寒いということだ。ひんやりとした空気が容赦なく体温を奪っていく。

真冬並とは言わないが、半袖では辛い。


森は夜の気配が濃くなり、もうすぐ真っ暗になってしまいそうだった。

空には月が3つ。

大きい月に小さな月が寄り添って、もう一つの月は離れた所にある。

異世界っぽいねーと見上げていると突然、離れたところから人の声が聞こえた。

男の怒号のようだった。


「やったぁ!人がいたー!助けてー!!」


声のした方へ駆け出す。木の根に足を取られて転んだけど瞬時に立ち上がってまた走る。

このチャンスを逃したらヤバい…気がする!


必死に走った先には少し開けた場所に池があった。

池の向こう側に男が立っていた。

暗いのと距離があるのであまり服装や顔はあまり見えない。


「すいません!いきなりで申し訳ないんですが私迷ってまして!道を教えて貰いたいんですが!」


一気に大声で捲し立てると男はこちらに何かを怒鳴り、私に背を向け逃げるように走り出してしまった。


「えぇえ!!ちょっと待ってー!」


なんで逃げるんじゃー!


池を迂回して追いかけようとしたが、既にその背中は暗い森の中に見えなくなっていた。

絶望的な気持ちが胸に広がっていく。


「嘘でしょ……」


助かったと思った矢先にこれはキツい。

泣きそうだ……。


「ーーー?」


パキッと小枝を踏むような音と共に、可愛い声がした。

ぶぉん!と音がしそうな勢いでそちらを向くと、木の陰からこちらを覗いている小柄な人がいた。


うぉぉー!良かったまだ人がいたぁ!


木の側まで駆け寄って行く。


「ちょっとごめん!教えて貰いたいことが色々と」


私が近寄ると相手は木の陰から出て来てくれた。


うわー可愛い。めっちゃ可愛い。


年齢は12、3歳くらいだろうか。

金髪かな?暗くてわからないけど色素が薄そうな髪をショートボブにしている。

大きくパッチリした目にスッとした鼻に形の良い唇。

西洋っぽい顔立ちの美少女だ。

服装は腰ほどの短いマントにキュロットパンツ、編み上げのロングブーツといった、イラストでよく見る狩人のような格好をしている。


「ーーー!ーー!」


少女が何かを懸命に言っている。

しかし意味がわからない。

日本語ではない。英語でもないことは確かだ。


「ごめんね、わからな…」


言いかけて、私は膝から崩れ落ちそうになった。


言語チートもないんかーーい!!

せめて!せめて言葉は通じないと無理だろがぁー!


来たばかりの憧れの異世界だが、早くも心が折れそうだ。


言葉が通じないことを悟った少女はくるりと後ろを向いて、背中側で縛られている自分の両手を私に見せた。


「え…」


誰だこんなことした奴。さっき逃げたあいつか?!

人攫いとかだったの?許せん!!


たぶん解いてくれと言っているんだろうと思い、きつく縛られた縄に手を掛ける。


なんだこれ、結び目かったい!

ハサミかナイフが欲しい!

うんうんと縄と格闘すること数分。


ごめん、素手じゃ無理だ……


申し訳ない気持ちで少女を見ると、少女は残念なものを見る目でこちらを見ていた。

非力で本当に申し訳ない……

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