16.体調不良と芽生えた気持ち
最近の私は頑張っていると思っていた矢先、急に体調を崩した。
朝は河原で石投げ、畜舎の清掃、昼は羊の給餌や移動、夕方はルッカと訓練、夜は筋トレと充実した日々を送っていると思っていたのだけど……
元々が引きこもり気味のオタクだからね!
オーバーワークだったみたいだ。
ダイエット始めた途端に風邪ひく感じよね。
何だか怠いと思っていたら、熱を出して頭痛・悪寒・関節痛などの様々な症状を引き起こしていた。
ぐぁー!あちこち痛い!寒い!
でも仕事が!
電話ないんだけどここの人ってどうやって休むの!?
「グレゴには言っておくからゆっくり寝てなさい」
オリヴァーさんが出掛る際に声を掛けてくれた。
普通に口で伝えるのね。
そりゃそうか。
「食欲出ないなら飲み物だけでも飲むのよ」
ナタリーさんが薬や蜂蜜湯を持って来てくれる。
ご面倒おかけしてすいません……。
謎の熱はその朝から3日も続いた。
ようやく熱が下がった4日目の朝。
お風呂に入ってさっぱりした私は今後のことを考えていた。
①このままここで暮らす
ただし年配の人には嫌われている。悲しい。
それに居候を脱却する為には結構なお金が必要になる。
村に賃貸アパートが無いから。
家建てるのはハードルが高い。
②頑張って人族の街に行って暮らす
熊も狼もいる危険な森を数日かけて出ないといけないので結構な戦闘力と根性が必要になる。
これもまたハードルが高い。
③日本の家に帰る
帰れる方法があるならもう帰りたいわ!
美少女な魔法使いになりたかったんだよ私は!
……うん、③はただの願望だな。
でも①と②のハードルの高さ何とかならないかな。
訓練を頑張ったら②跳べる?
いいえ、途中で死んじゃう未来しか見えないわ。
じゃあ①しか残らないよね。
最初の村から一歩も出ないとかゲームならとんだクソゲーだけど。いいの。人生かかってるから。
勇者でも聖女でも無さそうだから引きこもってもいいと思うの。
熊に食べられるのも狼に食べられるのも嫌なんだよ。
「熱はもう下がったかい」
朝食にスープを飲んでいるとオリヴァーさんが聞いた。
「はい。明日からは仕事に戻ろうと思います」
「無理しないようにね。あ、だけどルッカには元気な顔を早めに見せてあげなさい」
ここ数日は毎朝ルッカが私の体調を気にしていたそうだ。
心配してくれていたと聞いて素直に嬉しくなる。
会いに行きたいな。
「まだ今日は大人しくしてるのよ」
承知しました。
翌朝は洗濯や身支度を済ませるといつもより早く家を出た。
道の端に立って待っていると仕事場に向かうルッカがやって来た。
「おはよう!」
「おはよう。もう体調はいいの?」
「うん。今日から普段通りだよ。心配掛けてごめんね」
数日ぶりに会えて嬉しいなぁと思っていたら青紫の目が柔らかく笑った。
「よかった」
……
……
……なんか心臓が痛い!
私はどうしてしまったんだろうか。
3つも下の、まだ幼さが残る少年にこんな気持ちになるなんて……。
え、ショタ?ショタコンになったの私?
乙女ゲームならワイルド系のキャラが好きだったはずなんだけど……。
ルッカの綺麗な薄い金の髪も、宝石みたいな青紫の目も元々とても好きだ。
天使みたいに可愛いと思ってたけど。
この心臓の痛みは尊いとはちょっと違う感情が混ざってる気がする。
「ミオリ?」
「ごめんなさい反省します!」
だから変態って嫌わないで。
「体調壊したこと?謝る必要ないと思うけど」
「そ、そう!自己管理が甘かったせいだからね!」
怪訝な顔をするルッカをちゃんと見られなくて、しどろもどろになってしまう。
やましい気持ちを見透かされてしまわないように、じゃあ仕事頑張ろうね!と慌ててその場から走り去った。
たぶん気の迷いだ!
そう、きっと凄く迷ってしまっているの!
だってそうじゃないと本気で変態になっちゃうからーーーっ!!




