別視点 ルッカ2
夕暮れ時、早足で待ち合わせ場所に向かう。
今日は少し遅くなってしまった。
金属の精錬や加工をする鍛冶の仕事は面白い。
夢中になって作業をしていると時間はあっという間に過ぎて行く。
特に最近は叩かせて貰えるようになって面白さが増した。
「あ、ルッカだ。お疲れ〜」
軽いトーンで挨拶して来たのは近所のリリアだ。
「今日はミオリ石いっぱい投げてたよ」
リリアもミオリを見かけると自分に報告して来る。
村の歳が近い奴らがみんな同じことをしてくるのは何故なんだろう。
「あと今朝アーヴィンに酷いこと言われてたらしいよ」
最初の報告は楽しそうだったリリアが顔を曇らせる。
「………」
アーヴィンの人族嫌いは元々みんな知っているが、ここのところ当たりが強くなっている気がする。
ミオリは落ち込んで無いだろうか。
「わかった。ありがとう」
リリアと別れてからは駆け足になった。
川の近くにミオリは一人ぽつんと佇んでいた。
降り始めた雪を見ているのか視線はぼんやりと宙を見ている。
何を考えているんだろう。
お腹が空いた、とかだといいな。
辛いとか悲しいじゃないといいなと思う。
渡り人はみんな異世界からやって来る。
それも何の前触れもなく、突然今まで居た場所から切り離されるという。
家族や親しい人、大切にしていたもの全てに別れを言うことも出来ないまま渡って来てしまうのだ。
「あ、ルッカお疲れ様!」
自分に気が付いて、ぱっと表情を輝かせるミオリにホッとする。
寒さで鼻が少し赤くなっていてちょっと可愛い。
「あの岩に石を当てられるようになったよ!」
川の向こうを指して笑顔で言う。
「うん、意味わからないから説明してくれる?」
一体何の報告をされているのかと思ったが、どうやら仕事で魔獣撃退用の魔道具を渡されて張り切っているようだった。
その後いつもの接近戦の訓練をして、ミオリの体力が尽きると終わりになる。
「……ミオリ、なんか辛いことない?」
アーヴィンの話をしないことが気になって聞いてみる。
「……まだ、十戦でこうなる、ことかな」
膝に手を付いてぜいぜい息をしている。
その様子をじっと見ていると、息を整えてからミオリは微笑んだ。
「大丈夫だよ。そりゃ嫌な奴もいるけど、それより遥かに優しくして貰ってるから」
だから平気だとミオリは言う。
「ルッカもいるしね。私、この村大好き」
「……そっか」
自分の生まれ育った村を好きだと言って貰えるのは意外と嬉しいもんなんだな。
この先もミオリがいつも笑っているといいな。




