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4-24.令嬢の替え玉6

ドラゴンサイズの三毛猫に脇腹だけをピンポイントで踏まれる夢を見た。

痛てててて。重いし痛い。

可愛いその足どけて下さい、肋骨が折れそう!


……なんて下らない平和な夢を見てたのか。


寝返りを打とうとして痛みに呻いて目を覚ますと、ヴァルドがベッドの端に座っていた。

部屋はまだ薄暗いけど外は明け方のようだ。

いつものローブ姿になっている。


「おかえり。いつ帰って来たの?」


「先程だ。怪我をしたらしいな、どの辺りだ」


「こっちの脇腹だよ。どかっと蹴られて」


ヴァルドは私の脇腹に手を当てると魔法を使った。

じわじわと身体が温かくなり、腕を動かすだけで辛かった痛みが大幅に減っていた。


「凄いね、どんな魔法なの?」


「人間には使えんやつだな。そこらにある魔素を集めて生命力に変えてやるものだ」


ドラゴンチートなんだね。大変助かります。


「ありがとう。凄いマシになったよ」


「骨は繋がっただろうが完治ではないぞ。無理はするな」


……やっぱ骨折れてたの?だから動けなかったのか。

この仕事って報酬いいけど思ったより危険だなぁ。

今度から報酬が良い仕事は警戒しよ……あれ?

でもこの前のヴァンパイアの時は安い報酬で危険だったな。

危険のない冒険者の仕事なんてないと思ってた方がいいのかな。


……死体とかどうしたんだろう。

夏だし早く処理しないと臭いとか大変なことになりそう。怖っ。

あとルッカが倒した方は生きてたと思うけど雇い主とか聞き出せたかな。


みんなと話したいことが沢山あるわ。

ベッドから起き上がってみる。

うん、まだ少し痛いけど動けるわ。魔法って素晴らしいな。

腕には青アザが出来てるけどあんな奴と戦ってこれで済んで良かったな。

オークより弱いチンピラ倒して強くなった気になってるようじゃまだまだ三流だわ。頑張ろう。


◇◇


「凍らせて置いてあるよ。憲兵が引き取りに来るから」


「生きてた方も一瞬の隙に毒飲んじゃってさ、何も聞き出せなかったんだよねぇ。彼が氷使えて本当に良かったよ。そうじゃなければ燃やしたかな」


うん、聞いといて何だけど朝にする話じゃないな。

朝になって食事室にみんなが集まった。

朝食には昨日のミネストローネとパンに目玉焼きとベーコンにオレンジもある。

大人しくしてなさいと言われて手伝えずルッカ達が殆ど用意してくれたけど。

今はヴァルドも席にいるけどジュストさんだけまたいない。

朝食はいらない派なんだろうか。


「いや、騎士舎にいる時は食べるから今は遠慮してるんだと思う。自分が不在だったせいで怪我人が出たとかって」


「真面目ですねぇ」


そもそも不在だった理由をまだ聞いていない。

昨夜ルシアンさんとドニさんは私達が覆面男と戦っている時に別の男を相手にしていたそうだ。

そちらは戦力の分散と時間稼ぎが仕事だったようで、うまく生け捕りに出来たらしい。

隠れ戦力の人達にも襲撃があったそうだが負傷者が少し出たものの無事だという。


「くそ真面目なんだよ。ミオリが許せるなら呼んであげてくれる?」


「許すも何も自分の仕事して負傷しただけでジュストさん関係ないんですけどね」


「ミオリは大人だね。それジュストに聞かせてやって。外にいるから」


……なぜ外に?


ルシアンさんに言われて別荘の外に出ると庭先にジュストさんの姿があった。

木に背中を預けて座りどこかをぼんやり見ている。


「朝食一緒に食べましょう」


声を掛けると栗皮色の目が私に向いた。


「動けなくなっていたのにもう平気なのか?」


「仲間によく効く回復呪文を掛けて貰ったんで。お腹空いてるんで早く行きましょう」


「行ってくれ。俺は同じ席に座る資格がない」


資格とは何ぞや。

首を傾げる私にジュストさんが苦笑する。


「……昨夜不在だった理由だが、本当は俺も襲撃者側にいることになっていたからだ」


何ですって。初耳ですよそれ。


「裏切る予定だったが仲間や罪のない者に剣を向けることが出来なかった……俺は臆病者だ」


……いやそれただの良い人だから。

というか。


「もしかして人質取られてます?婚約者とか妹とか」


私の言葉にジュストさんが驚いた顔をする。

なんてわかりやすい人なんだ。

これ絶対ルシアンさん知ってただろ。

色々読めて来たぞ。



「昨日出会ったばかりのミオリでも気付くのに周りの人間が気付かないと本気で思ってたのか?」


ジュストさんを引っ張って食事室へ戻るとルシアンさんが笑顔で言った。


「じゃあお嬢様も……?」


「もちろん知ってる」


ルシアンさんの答えにジュストさんはひたすら困惑している。


「6人だよ」


ルシアンさんが説明を始める。


「従僕、庭師見習い、メイド、騎士。お前を入れた人質を取られていた人間の数だ」


「………。」


結構大変なことになってたんですね。

けど過去形で話すってことはもう救助済みかな?


「お嬢様からお前に手紙を預かってる。ミオリ達に説明する為にも使っていいって言われてるから読むぞ」


ルシアンさんはわざとらしく咳払いをしてから声音をワントーン上げた。やめなさい。


『ジュスト、貴方の大切な婚約者様は今うちで預かっております。お怪我なども無くご無事です。

お馬鹿さんに真面目な貴方のことですから、今回のことで騎士を辞めるなどと言い出すことでしょうがそれは許しません。

婚約者様を返して欲しければ仕事を続けることです。

いいですか?辞めて償うなどという甘えた考えは許しません。』


ジュストさんは頬を打たれたような表情で聞いている。


『ジュストは知っていますか?

貴族の財産とはお金や土地だけではないのです。領民も使用人も、騎士も全てが財産です。

裏切らない腕の立つ騎士も当然その中に入ります。財のある者は簡単に財産を手放したりしないものなのですよ。』


内容素敵なのにルシアンさんの声音のせいで感動半減するんだけど…。


『人質にされた人々全員の探索に少しかかってしまいましたが救助も終わり、準備は終了しました。

今回のバックにいるのは我が家と昔から犬猿の仲にある貴族です。うちの者達に手を出したことを思い知らせてやりましょう。

貴方は我が家の財産であり武器でもあります。

帰って来なさい。待っています』


ジュストさんの目が少し赤くなっている。

良かったですね。


「つまり今回の囮作戦ってジュストさんの為だったってことですよね」


「ごめんね。人質を取られたくらいで裏切るような騎士は要りませんわってお嬢様が考えたんだよね」


ジュストさんが裏切らないかのテストでもあり、敵の手駒を減らし尻尾を掴む為の作戦でもあったと。

手紙を用意してたってことは結果がわかってたっぽいけどな。

敵側はヴァルドをお嬢様だと思ってたし囮作戦の情報を漏らすこともしなかったんだろう。


うん、くそ真面目!

だから周りが助けてくれるんだな。


「じゃ王都までは行かなくていいってこと?とんぼ返りしていいの?」


黙って成り行きを見守っていたアンが口を開いた。


「うん、目的は達成したからね」


「報酬は変わらない?」


「変わらないよ。むしろミオリが怪我をした分請求したら?うちのお嬢様は納得したものには金払い良いよ」


「請求するわ」


アンはそう言うとスプーンを手にして食事を始めた。私も食べよう。

やっとご飯が食べられる。


腹ぺこ効果か仕事が終わった爽快感からか、朝食がとても美味しかった。


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