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4-22.令嬢の替え玉4

ガキンッ!ドッ!ゴンッ!


武器を打ち払った敵の腹を蹴り、頭が下がった瞬間に柄で殴り昏倒させた。

打ちどころが悪くなければ大丈夫。たぶん。

微妙な力加減なんて出来ないから死んだらごめんねだけど。

考えたら人間相手の戦闘って初めてだった。


……どうしよう。全く心が痛まない。

私は自分でも気付かない間に冷酷な人間になっていたんだろうか。

まぁ他人を平気で殺そうとする奴に同情する程お人好しじゃないってだけかもだけど。

スピードが速くて肉を食い破ろうと迫る獣の方が怖いな。人間だと怖いというより腹が立つわ。


戦闘はあっという間に終了していた。

後ろにいたルッカは魔法を使わず馬から降りて瞬く間に3人を叩き伏せ、ヤマトも1人をのしていた。残りの1人は私が今倒した奴だ。

前の6名はジュストさんとルシアンさん、御者のおじさんとアンで一気に片付けられた。

戦力に圧倒的な差があった。


「なんか手応えがないというか、絶対こいつらじゃバックの人間辿れない感じよね」


男達を縛り上げながらアンが言う。

縛る力が強過ぎるのかアンが縛る男は「痛い痛い痛い!キツ過ぎるだろ!」と悲鳴を上げている。無視されてるけど。


「ねえ、あんたがリーダーよね?ちょっと見ててね」


アンは近くに落ちていた人の腕ほどの太さの棒を両手で持つと力を込めた。

ミシミシと音を立てて太い棒が弓なりに曲がって行く。


『………。』


男達は静かにその様子を見守っている。


バキィッ!


「ね?わかるかな?じゃ少しお話聞かせてね」


にこりと笑いながらアンはリーダー格の男の腕を掴む。怖いな。


「雇い主は誰?」


「しらっ…知らねえんだよっ本当なんだ!」


「腕って2本あるし1本折れても問題ないわよね」


「本当なんだあああ!!」


腕をぐっと掴まれたリーダー格の男が涙目で叫ぶ。

街中で声を掛けられ金で悪事に加担したものの、雇い主の素性まではやはり知らないようだった。


「次があるかは不明だが先へ進もう」


用は済んだと再び移動を開始する。

縛った男達は邪魔になるので置いて行く。

街に知らせを飛ばしたので回収に人が来るはずだけど、その前に夜がやって来る。

魔物とか何も来ないといいね。頑張って。


彼らの武器はルッカとアンが遠くへ投げたので縛られた状態だとだいぶ頑張らないと取って来れないだろう。

置いて行かれるとわかった男達は喚いていたが、「じゃあ今死ぬか?」とルシアンさんが軽い口調で剣を首に当てると青くなって黙っていた。


日が沈みかけた頃に農村へ辿り着いた。

村外れには侯爵家所有の別荘がある。

本邸とは比べ物にならないサイズだが、それでも他の民家の二軒分はありそうな大きさだ。

王都に行く際に毎回通る村なのでわざわざ建てたそうだ。

マルティナが宿屋の部屋が気に入らないと言ったという理由で。お金持ちめ。


「肉を食いに行って来る」


ほぼ一日中馬車にいたヴァルドが別荘の部屋に入った瞬間に言った。

私とアンとヴァルドは同じ部屋を割り当てられている。


「人に見られないように行ってね。一応今は囮作戦中だからさ」


「わかった。複数の人間がここを見張っているようだぞ。気を付けろ」


そう言い残すと魔法で姿を消して窓からひらりと出て行った。


「……出ぎわに大事な情報置いてったわね」


ベッドに転がっていたアンが身を起こした。


「夕食作りに行こうか。今の件も相談しないとね」


キッチンに行くと連絡を受けていた管理人により様々な食材が置かれていた。

普段は連れて来た使用人がマルティナや侯爵の食事を用意するらしい。


「ハムとトトル切ってパンと出せば良くない?面倒くさいよー」


「せっかくだから温かい物食べようよ。明日の昼と夜は堅パンとかだろうし」


アンは料理があまり好きではないらしい。

文句を言っているアンに玉葱を剥いてと手渡す。

夏野菜いっぱいあるしミネストローネ作ろうかな。ハムは厚切りにして焼くだけでいいや。

人数多いし明日の朝も食べられるように大量に作るぞー。

野菜を洗ってはひたすら刻む。途中からヤマトとルッカも参加してくれた。


「ヴァルドは?」


隣でルッカが刻んだ野菜をどんどん鍋に入れて炒める。給食作ってるみたいでちょっと楽しい。


「狩りに。ここ見張られてるって言ってた」


「夜中に来るかな。トトル入れるよ」


「うん。寝る時はやめて欲しいよね」


「まぁ襲撃する側だったら就寝時が油断してて都合いいもんな。卵も食いたいから焼いていい?」


「ハム切ったわよ。お嬢様の部屋で待ち伏せする?」


「ハムは焼いて欲しいな。待ち伏せいいかもね。ジュストさん達にも相談しないとだけど」


……料理の話と襲撃の話が入り乱れ過ぎてないだろうか。

わいわいキッチンで騒がしい私達をルシアンさんが覗きに来た。


「任せちゃっててごめんね。俺料理出来なくて。皿洗いくらいは出来るから片付けはやるから……あれ、お嬢様は?」


「部屋で休んでます」


ということにしておこう。説明出来ないし。


「そっか、ずっとドレスで馬車も疲れるよね。ミオリ達は平気?」


「元気ですよ。ジュストさんは?」


「さぁ?ドニは馬の世話だろうけど、ジュストは真面目だから外で剣でも振ってるかも」


「夕食出来たら呼びます。それまでゆっくりして下さいね」


去り際に目が合うとルシアンさんが微笑んだ。

なんか意味有りげだったな。

……頭悪いから全然わからないわ。


ミネストローネと焼いたハム、ヤマトが焼いたオムレツにルッカが揚げたポテトがテーブルに並ぶ。

食べたら夜中の対策考えないとな。



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