小話 コスプレ
とある南国の街に訪れた時のこと。
そこは道を歩く女性の衣装がとても素敵な所だった。
「ジャ◯ミンがいっぱい!可愛い!」
「誰よそれ」
思わず声を上げた私にアンが変な顔をした。
色鮮やかな光沢のある衣装は上半身は露出が多く、腕とお腹が出ている為に体型がもろにわかる。下半身はゆったりとしたパンツだ。
空飛ぶ絨毯に乗ってデート行きそう。
流石に年配の女性はお腹は出していないけれど、若い女性はまさしくジャ◯ミン。
とても可愛い。
「確かに可愛いわよね。着てみる?」
可愛いと騒ぐ私にアンが言う。
「えっでも買うのは勿体なくない?」
「あれ見て。貸してるっぽいわよ」
言われて見た先には沢山の衣装を置いた店がある。
「お腹出すのはどうかと思うけど……」
「固いこと言わないでよ。ミオリの可愛い姿見たくない?」
やや反対そうなルッカをアンが説き伏せにかかる。
「…あれ着たいの?」
「ちょっと。似合わないかな?」
初めてのコスプレ。ちょっとやってみたい。
可愛いんだよあの衣装。
「似合わないことはないと思うけど……」
「じゃあ行こ!ヴァルドも行くよ!」
まだ何か言おうとしていたルッカを無視してアンが私とヴァルドの手を引いて歩き出した。
振り向くとルッカとヤマトが何とも言えない表情で立っていた。
「後で怒られないかな?」
「ミオリはルッカに気を使い過ぎよ。好きな服着ればいいのよ」
「そもそも似合うかなぁ」
「似合うわよ。可愛いんだから」
「そんなこと言ってくれるのアンとルッカくらいだよ」
「ヤマトは言わない?普段あんな態度なのにおかしいわね……。ミオリは自分のこと低く見過ぎよ。磨けば光るんだから」
店に入ると色とりどりの衣装があって目移りしてしまう。
「いらっしゃいませ、可愛いお嬢さん方。当店では衣装の貸し出しに合わせて髪結いも化粧もやらせて頂きますよ。別料金ですが」
ふっくらとした店員のマダムが笑顔で言う。
「どうせなら全部やろ。ミオリはこれがいいと思うわ。ヴァルドはこっちかな」
「私は必要ないのだが」
「3人でやろうよー。その方が楽しいし」
アンに勧められるままに衣装を着ることにした。
いざ着てみるとちょっと恥ずかしくなって来た……私だけ変じゃないかな?
「うわぁ!可愛いねぇ!」
ジャ◯ミンな衣装を着たアンとヴァルドが物凄く可愛い。
ヴァルドは長い金髪を赤いリボンと一緒に編み込んで纏めて貰っている。衣装は赤がベースで金糸の模様が入ったものだ。
アンは緋色の髪をハーフアップにして金の髪留めを付け、目の色と同じ緑の衣装には金糸の模様が描かれている。
2人とも素材が良いので本当に南国の姫君みたいだ。
「ミオリも可愛いわよ。ミオリはこれからもっと綺麗になるタイプだと思うわ」
「そうかな?」
鏡を見ると確かに青に銀糸模様の衣装を着た自分は思っていたより様になっていた。
サイドでアップにした髪もアイラインを強めに引いたメイクもわりと似合っている。
少なくとも似合わなくてヤバいという仕上がりではない。良かった。
「夕方までですからね、お楽しみ下さいませ」
見送られて店を出ると、外で待っていたルッカとヤマトが驚いた顔をした。
「……どうかな?」
ちょっと照れながら尋ねると、
「似合ってると思う。3人とも」
「無難な答えねー。もっと個人を褒めてもいいのよ」
あっさり言ったヤマトに引き換え、ルッカはなんだか複雑そうだ。
「……可愛いよ。だけど隠したくなる」
「やっぱり肌の露出が気になる?」
「それもだけど、その衣装じゃなくても今のミオリは他の奴に見せたくない」
「なんか変?」
「変じゃない……綺麗だよ」
だから心配なんだと言われてキュンとしてしまった。
そのまま夕方になるまで街を歩いて回り、コスプレを堪能した1日だった。
ちなみに空飛ぶ絨毯は存在しないらしい。
今後の魔道具の進化に期待したいと思う。




