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別視点 アン

重め話ですよ

どうして私はここにいるのかな。


……うん、まぁ記憶喪失とかじゃないから本当はわかっているけれど。

ミオリ達と行動を共にすることを私が選んだからだ。

一緒にスライムを集めたりお酒を飲んだり、ミオリ達と過ごすのは結構楽しい。


ここにカミラとジルがいたらもっと楽しいのに。


わかっている。

2人が生きていたらミオリ達と出会うことはなかった。

わかっている。

2人は春先に死んだ。

2人の死と引き換えに生き残った私が死亡届をギルドに出したのだから。


でもふとした拍子に2人とまた会える気がして私はよく立ち止まってしまう。

姿を探して、カミラなら何て言うかな、ジルならどんな顔をするかな、と何度でも考えてしまうのだ。


カミラとジルは死んだのに、どうして私は生きているのだろう……。


2人はいずれ夫婦になったかも知れない。

まだ恋人でも無かったけど、ジルの冗談半分の口説き文句にカミラは照れたような満更でもない顔をしていたと思う。

カミラはいつも収入を家族に送金していた。

他界した父親の代わりに母親と妹を支えようと冒険者になったのだ。

自分の結婚は妹の幸せを見届けてからだと笑っていた。


助けられたことで纏まった金額をカミラの家族に送ることが出来たけど、やっぱり死ぬなら待つ人のいない私の方が良かったのにな……。



「……アン、今日は月がキレイだよ」


ミオリが私を窓際に呼ぶ。

ぼうっとしててミオリが私を呼ぶ声に気付けないことがよくある。ごめんね。

窓際に寄ってミオリが隣に置いた椅子に座った。

本当だね。今日は星も月もはっきり見えている。

青の月がもうすぐ満月みたいだ。


「私の故郷で昔ね、愛してるって外国の言葉を月がキレイですねって訳した人がいたんだよ」


ミオリとヤマトは渡り人らしいから、故郷は別の世界だと聞いている。


「えー、変なの。それじゃあさっきのミオリの台詞も愛の言葉になっちゃうわね」


「あなたと見る月は特別にキレイって意味らしいから、間違えてはないよ」


「私と見る月がキレイなの?」


「うん」


何でかな。優しい眼差しで微笑むミオリを見ていると泣きたくなる。


「………仲間の名前ね、カミラとジルって言うの」


少しミオリにカミラ達の話をしたくなった。

どんな顔をして話せばいいのかわからないから、月を見上げたまま話す。


「カミラは私より少し年上で、背が高くて包容力があって優しくてかっこいいの」


「うん」


ミオリは静かに相槌を打ちながら聞いてくれる。


「ジルは途中からカミラに付いて来た金魚の糞なの」


「……うん。その評価ジル泣いてないかな」


「文句があるなら受け付けるわ。夢にでも出てくればいいのよ」


カミラの夢は時々見るけど、ジルはまだ出て来たことが無いから。


「……夢でいいから話がしたいのよ。カミラは勿論だけど、ジルとも」


「そっか」


酷く胸が痛くて、上を向いているのに涙が溢れて止まらなくなった。

痛い。一体いつまでこんなに痛くて辛いんだろう。

心臓を引きちぎられたみたいな痛みが治らなくて苦しい。


ギルドのマスターが故人を思い出になったと話せるまでには何年もかかると言っていた。

いつか懐かしく話せる時が来るけど今は痛みに耐えるしかないのだと。


「私だったら良かったのに」


嗚咽と共に溢れた本音にミオリが痛そうな顔をする。


「……そしたらきっとカミラ達がアンみたいに泣いてたよ」


そうかな?ジルは泣くかな。でもカミラが泣くのはイヤだな。


「きっとアンに生きてて欲しいと思うよ」


ミオリの目が赤く潤んでいて、今にも泣いてしまいそうな顔をしている。

ミオリはカミラ達に会ったことがないのにどうして泣くのかな。

私が泣いてるからだとミオリが言った。

他人が泣いてるからって泣いてたらキリがないよと私が言うと、もう仲間だから他人じゃないとむすっとしていた。


ミオリはこういうところが可愛い。

心がとても真っ直ぐだ。

育ちのせいでちょっと捻くれてしまった私にはない可愛さを持っている。

カミラも会えばきっと好きになるはず。

ああ、会いたいな。

ミオリにも会って欲しいのになんでいないの。


その夜、久しぶりに声を上げて泣いた。

泣き続ける私をミオリはずっと抱き締めてくれていた。


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