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小話 夏の夜

今日は暑くて寝苦しい。

毎年なのでもう慣れたけれど、やっぱり扇風機やエアコンが夏は恋しくなるわ。


「……暑い」


小さく呟いて起き上がると、隣のベッドでアンが同じように起き上がった。

今夜はヴァルドが一人部屋だ。


「暑いわよね……ちょっと私に良案があるんだけど、ミオリじゃないと出来ないことなの」


「どういうこと?」


……ふむ、なるほど。


アンが考えたアイデアに従って私は行動することにした。


人の部屋を訪ねるには少し遅い時間なのでちょっと躊躇うけれど、今晩の快適な睡眠がかかっている。やらなければ。


「ルッカ、起きてる?」


ルッカ達の部屋の前で私は遠慮がちに声を掛けた。

少しの間の後、ルッカが扉を開けてくれた。


「どうしたの?」


「あのね、ちょっとお願いがあって……」


ああ、やっぱりちょっと申し訳なくて言いにくいな。

頼み辛さから恥じらう私にルッカが微笑む。


「何かして欲しいことがあるなら遠慮なく言って。ミオリのお願いなら叶えるから」


わぁ優しい。


「じゃあ、ちょっと来て貰えるかな……遅くにごめんね」


ルッカの手をそっと取って私は自分の部屋へ向かう。


「ミオリの部屋はアンもいるでしょ?入っていいの?」


「そうなんだけど、部屋じゃないと言えないことなんだ」


部屋にルッカを招き入れるとアンは桶を抱えて待っていた。


「あのね、ルッカにお願いって言うのはこれに氷柱作って欲しくて……」


ああ、やっぱり冷凍庫扱いしたみたいで何か申し訳なく感じてしまうわ。


「………アンの発案?」


「そうなんだけどミオリも暑いって言ってるし、ここは一つ大きいやつをバキンとお願い!」


アンが頭に手刀を落とされた。


作ってくれたけど私も怒られた。


「ミオリに変なこと教えないように。あとミオリもアンの言うことそのまま聞かないように」


『すいませんでした』


2人でルッカにぺこりと頭を下げた。


氷柱で部屋が少し涼しくなった気がする。氷をパタパタと扇いで室温を下げようと試みる。

これで扇風機があればもっといいのになぁ。


「ちょっと削って果実酒飲んじゃう?」


「いいね、持ってるの?」


「あるよ。いやぁ氷属性っていいわね。いつでも氷使って飲めるじゃない」


「その発想無かったけどね。戦闘以外で初めて氷出して貰ったよ」


「便利なのに」


「怒られたからもう頼まないよ」


「えー」


アンと氷を入れたお酒を楽しんだ後、その夜は気持ち良く眠ることが出来た。



◇◇



「ミオリ何だったんだ?」


「……アンに誑かされてた」


「は?」


「あんなこと頼まれたの初めてだったんだけど……アンはミオリに悪影響な気がする……」


「子供じゃないんだからミオリの意思だろ。何頼んだのか知らねーけど


「……それだともっと嫌なんだけど」


男性部屋ではこんな会話がされていたらしい。


冷凍庫扱いしてごめんね。



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