4-15.新しい仲間
私達と一緒に行こうよ、と少し緊張しながら言った台詞は
「いいわよ。どこ行くの?」
というなんとも緊張感のない笑顔と共に快諾されたのだった。
◇◇
「そっちどう?」
「大体集め終わったわよー。残ってないか確認する必要はあるけど」
言いながらこちらへやって来たアンはぱんぱんに膨らんだ米俵サイズの麻袋を担いでいる。しかも両肩に。
一俵の米俵って確か60kgくらいあったと思うから、あれ100kg越えてないかな……力持ちだね。
アンを仲間に誘った翌日、ギルドで受けた依頼で農村に大量発生したスライムの片付け作業に私達は参加していた。
一匹一匹は饅頭みたいなサイズのスライムなのだけど、最近の気候がスライム発生に適していたとかで村はスライムで浸水したようになっていた。
ずっと持っていると酸を吐くので拾ったら即座に袋に入れる。
そんな作業を村人や他の冒険者と早朝から昼過ぎまでひたすら繰り返し、ようやく終わりが見えて来た頃だった。
「いやぁ凄い量だったわね。何かこういう作業的な依頼久しぶりにしたわ」
まぁこういう危険度が低くて報酬も低い依頼ってBランクの人まずいないからね。
ルッカAだけど…他の参加者が知ったら驚くだろうな。
アンは職種で言うと格闘士らしい。
魔力はあるものの体外に出せない体質とかで、身体強化をして戦うことを得意とする。
手足自体が武器なのだそうだ。
「ゴブリンの頭くらいなら蹴りで弾き跳ばせるよ」
笑顔で言った台詞が軽くホラー。可愛いのに怖い。
普段も普通の人よりは怪力らしく、スライムの片付け作業では別に強化魔法は使用してないらしい。
粗方スライムを集め終わり、残っていないかをみんなで見て回る。
集められた大量のスライムは火炎系の呪文が使える人によって処分される。ちょっと可哀想な気もするけど放置も出来ないので仕方がないのだ。
「アンに一度ルッカと腕相撲してみて欲しい」
「強化使われたら負けると思うよ」
「人相手に強化は使わないけどね。折ってしまうもの」
「折ったことあるの?」
目を逸らしたな。やったことあるなこれ。
「若気の至りよね」
「若気の至りがひどいな」
ヤマトの突っ込みにアンが不満げな表情をする。
ちなみにアンは今年で18歳らしい。若気の至りがまだ通用するね。
「みんな若気の至り的な失敗って何かあるでしょ?」
「人の腕折ったことはないな」
「ミオリは?」
アンが救いを求めるような目でこちらを見るので仕方なく笑って失敗談を披露する。
「宿の食堂にいた十数名の冒険者全員にビンタしたことはあるけど」
「何があってそんな事態になったんだよ……」
「バイト中にセクハラゲームが開催されてね。尻触られそうになる度にビンタしてた」
「それは正当防衛だな」
「ミオリがバイトやめなかったら俺が腕折りに行ってたけどね」
「……それは過剰過ぎるだろ」
ヤマトが突っ込みに忙しそうだ。私も年上としてそろそろボケ派ではなく突っ込み派に転身しないといけないね。
「私には当たりが強いのにミオリには優しいわね」
「いやそういうつもりは……」
「ヤマトは可愛い子に当たり強いんだよ」
「あら、そうなの?」
「いやフォローのつもりかも知れないけどそれだと俺頭おかしい奴じゃない?」
そんな会話をしていると、スライム処理班の1人が「おーい」と手を振りながらこちらにやって来た。
「火炎系の呪文使える奴いないか?量が多くて火力が足りないんだ」
「火炎系はこの中には……」
言ってから上を見上げる。
ヴァルドが民家の屋根の上でゆったり過ごしている。
他所の冒険者達にはどこぞのお嬢様が野次馬にやって来たと少々非難の目で見られていたところだ。
活躍して貰えるだろうか。
「ヴァルドー!ちょっと火力足りないらしいからスライム焼いてくれる?」
「うむ。やってやろう」
ひらりと高所から一瞬で降りて来たヴァルドに処理班の人が驚いていたし、残っていたスライムを全て跡形もなく焼き払った魔法にも驚いていた。
「じゃあそろそろ街に行こうか」
全ての作業が終了して、村の人達からお礼を言われて冒険者達が解散し始めた。
「……アン、行こう」
ぼんやりと宙を見つめていたアンに声を掛ける。
明るく振舞っているアンは時間があると何かに呼ばれるように心がすぐにどこかへ行ってしまう。
大切な仲間を失ったばかりで仕方のないことだけど、アンがいつでも崖の淵に立っているような気がして私は時々呼び戻す。
私だけではなく他のみんなも呼んでいるので同じように感じているのかも知れない。
後ろはいくらでも振り返っていいけど、落ちてしまわないように何度でも呼び掛けたいと思う。
こっちだよ、一緒に行こう。




