4-13.告白その後と剣
日が落ちて暗くなった頃、ルッカが帰って来た。
部屋で外を眺めて待っていたので姿を確認すると入り口まで行って出迎えた。
「おかえり!剣うまく直った?ヴァルドは?」
「ただいま。うん、直ったよ。ついでに一狩りして来るって言うから街の外で別れて来た」
ルッカが私の顔を見て微笑む。
「待ってたの?」
「うん。夕方までは出掛けてたけどね。どうだった?」
「大変だったよ。朝行くって言ってたのに起きてなかったし、夜飲み過ぎたのか二日酔いで動けないって言うし」
「それは大変だったね」
「ヴァルドが叩き起こして俺が酔い覚ましのスープ作るところから始まって、炉の火起こしから手伝ったよ」
「手がかかる人だなぁ」
「俺達が行かなかったら絶対に修理作業やってなかったと思う。ヴァルドも言ってたけど自分で決めた納期を全然守らないことで有名らしいよ」
「……明日無駄足にならなくて済むのはルッカ達のおかげなんだね」
自分で決めた納期守らないってどういうことなの。
明後日って言うからえらく仕事早いなぁとは思ったけどさ。
「明日やっとく!で季節が変わるくらい待たされた人もいるらしいよ」
「……何で明日って言っちゃうんだろうね」
面白いなドワーフ。
いや特別変わってるってヴァルドが言ってたからドワーフで一括りにするのは良くないか。
「作業工程はすごく勉強になったけどね。ミオリは今日何してたの?ヤマトは?」
「街の中をあちこち観光したよ。ヤマトはちょっと出掛けてくるから夕食いらないって」
失恋記念に飲んで来ると言っていた。
それ私に言うのはどうなんだと突っ込んでから送り出した。
「……なんかあった?」
「まぁ、少しね」
ルッカが心配そうな顔をする。
私は今どんな顔をしてるのかな。
「ミオリが気に病むことじゃないと思うけど、気にするなっていうのも無理な話かな」
何で顔見ただけで大体察してくれるんだろう。
ルッカの胸に軽い力で抱き付いた。
「……何かちょっと痛くて」
好意を断る側も心が痛むって初めて知った。
私は今回が人生初なんだけど常時モテる人は大変だな。あんまモテなくて良かったよ。
……いやほんとに。
それとも常時モテてると日常茶飯事だから平気になるのかな?
「元気出して」
慰めるようにぎゅっと抱き締め返してくれる。
腕の中で安心出来るのはやっぱりルッカだけだ。
「今日はワインおかわりしていいよ」
「……よし、呑む!」
「ほどほどにね」
その後私はワインを数杯飲んで子供のように泣き、酔って道でへたり込んでいたヤマトはヴァルドに拾われて帰って来た。
「今日は手が掛かる奴の相手ばかりだな」
「そうだね」
ヴァルドとルッカが苦笑しながらそんな会話をしていたことを酔って寝落ちした二人は知らなかった。
◇◇
鞘から剣を抜くと、傷も欠けも無くなった刀身が輝いた。
「どうじゃ!強度も前より上げておるからお前さんが少々下手くそに扱っても欠けはせんはずじゃ!」
「ありがとうございます!」
直して貰った上に強化魔法をもっと強くしてくれたらしい。
「これ、お礼の品です」
酒屋で買った火酒の大瓶を手渡すとテッポさんの目が輝いた。
「わかっておるな!また何かあれば持って来い!」
嬉しそうにいそいそと扉の外の看板を中に入れる。
……店閉める気か。今から飲む気なのか。
そして修理代は安かった。
安い鉄の剣程度の金額で魔法付与付きの剣がパワーアップして返って来たのだ。素晴らしいわ。
「こんにちはぁ。テッポさん、頼んでたツルハシ直った?」
可愛らしい声がして、店の入り口から小柄な女の子が現れた。
ドワーフ特有の小さくてずんぐりした体型の可愛い子だ。髭はない。
そして年齢が全然わからない不思議な見た目をしている。
「まだじゃ!と言いたいところじゃが出来ておる!」
「頼んだの先週なんだから出来ててくれないと困るよ」
テッポさんが奥から持ってきたツルハシを渡していた。
私達はそのまま店を出た。
「見た?ヤマト。やっぱり髭はなかったね」
「見た。思ったより可愛い感じだった」
目が合うとヤマトは少し困ったような笑顔になった。
私も同じような表情になっているかも知れない。
けれどいつものように話せるのが嬉しい。
「いい職人さん紹介してくれてありがとうね」
「腕はいいんだがな」
お礼を言うとヴァルドは笑って言った。
おかえり、愛剣。
今後もよろしくね、という気持ちで腰のベルトに剣を通した。




