4-12.告白
ルッカとヴァルドが早朝に出掛けて行ったので、今日はヤマトと2人だ。
朝食を食べる為に宿の食堂に行くとヤマトが既に席にいた。
「おはよう。もう何か頼んだ?」
「おはよ。いやまだ」
朝食用のメニュー表を見ながら悩む。
「チキンサンドも気になるけど卵サンドも捨て難いな……」
「じゃ半分ずつにすればいいだろ。頼むぞ」
ヤマトが店員さんに声を掛けて注文をする。
「え、いいの?ヤマト食べたいのなかったの?」
「俺は何でもいいからミオリが食べたいのでいいよ」
そう言って頬杖をつきながら微笑む。
雰囲気がいつもより柔らかい感じがするのは気のせいかな。
………なんか居心地が悪いわ!
妙に気恥ずかしくなるからやめて欲しい。
「私は明日テッポさんに贈るお酒買いに行くつもりなんだけどヤマトは何か予定ある?」
「いや、特にないからそれ付き合うよ」
別行動でもいいかと思ってたんだけど付き合ってくれるらしい。
「ついでに観光でもするか?酒買うのなんか一瞬だろ」
「なんか面白いものあるかな?」
街の規模があまり大きくないからそんなに期待は出来ないかも知れない。
「まぁ無くても半日くらいは暇潰せるだろ」
「じゃあ食べてちょっとしたら出掛けようか」
運ばれて来たサンドイッチを半分交換して食べた後、街に繰り出した。
宿で聞いたお勧めの見所は街の中心部にある大きな教会らしい。
荷物になる買い物は最後に回して、まずは教会を目指すことにした。
街の風景に目をやりながらのんびり歩く。
あんまり早く着いてまだ開いてませんとかだと困るからね。
「昼飯何食いたい?」
「朝ご飯食べてすぐに聞かれてもなぁ。あ、屋台で食べ歩きもいいかもね」
「そうだな。やっぱ街って選択肢多くていいよなぁ」
「それは宿と食堂が一個ずつしかないラスタナ村の批判かな?」
何なら他の店も一個ずつだ。
「いや違っ……村は村でいいとこあるし」
「例えば?」
「………く、空気と水が美味いとか」
無理矢理絞り出した答えに吹き出した。
「あと顔見知りばっかだから噂が駆け抜けるの凄い速いとかな」
「それ絶対いいとこって思ってないじゃない」
笑いながら突っ込むとヤマトも笑う。
「美形ばっかだから誰も容姿を鼻に掛けてないよな」
「それわかる。ルッカも含めて森の人って容姿の美醜あんまり気にして無さそうだよね」
綺麗な見た目が当たり前という種族だからか、みんな容姿に関して何も思って無さそうなのだ。
「まだ会ったことないけどエルフもそうなのかな。美人で当たり前とか凄いよね」
「ドワーフは髭もじゃが当然かもな」
「ドワーフの女性も見てみたいよね。明日会えないかな」
「俺も見たい。髭あるかな」
「さすがに無いと思うけどなぁ」
街で見かけた店や亜人種のこと、冒険者レベルの話や魔法のことなど様々な話題で話が弾む。
そこそこ距離があったはずの教会にあっという間に到着していた。
教会には大輪の花のような極彩色の見事なステンドグラスが高い位置に嵌め込まれていた。
ステンドグラスを透過した朝の光が床に色とりどりの影を落としてとても綺麗だ。
「綺麗だね」
ルッカとヴァルドにも見せたいな。
「そうだな」
ヤマトはステンドグラスを見上げたまま返事をした。
素敵な物が見られたし来て良かったな。
静かに教会を見学した後、中央広場に足を運んだ。
市場を見て回り、楽器を奏でて歌う詩人の歌に耳を傾けた。
「塩焼きとタレ焼き半々にする?」
「揚げ物も味違うやつ半々にしよう」
屋台であれこれと食べ歩き、お腹が膨れると魔道具屋や雑貨屋にも入った。
気付くと午後もだいぶ時間が過ぎていたので酒屋に寄り、ドワーフが好むという火酒を購入した。
店を出ると空がほんのり赤くなり始めていた。
「やばいな……凄い楽しかったわ」
帰りの道中でヤマトが呟いた。
「私も楽しかったよ。たまにはがっつり観光もいいね」
いっぱい喋って笑ったし楽しかったな。
「どうかした?」
隣を歩いていたヤマトが立ち止まった。
「俺はもっと特別な意味で今日凄い楽しかったんだ」
「……そっか」
真剣な目をして言うので私も目を逸らさずに返事をする。
「知ってるかも知れないし、困らせるだろうけど一回だけ言わせて欲しい」
「……うん」
少しだけ間を置いてからヤマトが言った。
「俺……ミオリが好きだよ。友達としてじゃなくて、特別な女性として好きなんだ」
「………」
……なんて返せばいいのかな。
「知ってた?」
「……うん」
「そっか。いつから?」
「ヤマトが熱出した時かな」
「結構最近だな。ミオリ鈍いな。もっと前から好きだったし」
「いつ頃から?」
「退院祝いしてくれた時から」
「半年は経ってるね」
「うん。いい加減吹っ切らないとなって思うから言ったけど困らせてごめんな」
謝るヤマトに首を横に振った。
ヤマトが謝るのも私が謝るのも何か違う気がする。
「ごめんねは何か言いたくないのよね」
「俺も言われたくないな」
「でも好きになってくれてありがとう♡って言うのも何か違う気がして」
「アイドルがファンに言う台詞みたいだもんな」
私の台詞にヤマトが笑った。
「もっと可愛い子を……いや違うな。次はちゃんとヤマトを好きになってくれる子を特別にしなよ」
「俺もそうしたいと思ってるよ」
ヤマトが少し痛そうな顔で笑う。
「ちゃんと吹っ切るから。時間は必要だけど」
「うん」
「もうしないから今だけごめん」
うん?
ヤマトが急に接近したと思ったら抱き締められていた。
「ちょっ?!それはやめようか!」
焦って押し返そうとしてもぎゅうっと抱え込んで離そうとしない。
友達の線越えてしまってるぞこれは。
「ヤマトくん、離しましょうね」
「ちょっとだけ」
更に腕に力が入って少し苦しい。
「もういい?ねえ離して」
「ミオリが好きだよ」
「……うん」
「なんでもう結婚してるんだよ」
「そんなこと言われましても」
「ミオリの特別になりたかった」
「同郷の特別な友達だよ」
「……わかった上でそれ言われると男として腹立つんだけど」
「我が儘か。わかったから離しなさい」
ぐっと押して少し離れることに成功したかと思ったら再び胸の中にかき抱くように閉じ込められた。
「こら!いい加減にしないと怒るよ!」
「好きだよ」
声が少しだけ震えている。
「……うん。わかったから」
ぽんぽんと背中を叩く。
「今度は好きになる相手間違えないようにね」
「間違えたわけじゃないんだけど……」
「間違えてるよ。次はフリーの女性に行こうね」
「……そうだな」
そう呟くとようやく腕を解いてくれた。
ヤマトの目が少し赤くなっている。
「うん。言いたいこと言えたわ」
「じゃあ帰ろうか」
「……あっさりしてて腹立つな」
「仕方ないでしょう。行くよ」
そのまま歩き出すとヤマトが横に並んだ。
早めに吹っ切って想い合える相手が見つかるといいな。
あちこち移動する旅がいけないのかな?出会いがないよね。
「ヤマトだけ村に帰るか、どっか街で仕事する?」
「……言いたいことはわかるけどまだ俺も旅させてくれよ。心配してくれなくてもいいから」
「じゃあ誰か一緒に来てくれる女の子いないかなぁ……」
「前向きに考えてくれてるとこ悪いけどまだだから。今終わったとこだからもうちょっと時間ください」
「善は急げって言うし。いっそギルドに依頼して女子の旅仲間募る?」
「前向き過ぎて付いて行けないんだけど……それやるならお見合いの方がだいぶマシだからな」
いつものような会話をしながら私とヤマトは帰路についた。




