文化祭シーズン到来
こないだ体育祭があったと思いきや、季節の移ろいは早いもので、青宝学園に学園祭シーズンが到来した。
「今日のHRは、青宝祭についてだ」
加瀬が毎度のごとく、とっとと終わらすというので、早々に話し合いが始まった。
「先生! 例えば何をするんですか~?」
「別に中学の時と大して変わらねえと思うが、コレに目を通せ」
そう言って加瀬から配布されたのは、青宝祭の催しと注意点が載ったプリントに、2枚のアンケート用紙。
「このアンケート用紙は?」
「それは、毎年学祭でやるメインイベントとクラスの催しについてのアンケートだ。それぞれ何をやりたいかをデータ化して、支持率の高いものに決定する」
「マジか! 俺、ミスコンやりたい!」
「ありがちだな。どうせあるから被んないのにしろ」
「そんなー!?」
「はいはーい! あたしは、メイド&執事カフェ!」
「それも良く聞くな」
「う……っ」
「じゃ……っ、男女逆転、男装・女装喫茶は!?」
「……お前ら、漫画の読み過ぎ、あるいはドラマの見過ぎだ。クオリティーが低いものを出したところで、客より苦情が来るだけだろうが。何より俺が面倒、却下」
「「先生ヒド~!! あはははっ!!」」
「笑うのかよ……」
もっとまともな意見を聞かせろ、という加瀬の言葉に、生徒達は再び悩ましい表情で考え始める。
「文化祭かー……俺、やる気しねえわ~!」
配られたプリントを手で遊ばせ、気怠そうに呟いていた飛鳥に海が緩く釘をさす。
「飛鳥は運動専門だしね。けど、バッくれるのはなしだからね」
「ヘイヘイ……」
そんな2人の様子を横目にプリントを眺める空に、隣の席の望夢が声をかける。
「空はなにかしたいことあるか?」
「私? うーん……何をしたいとかは特に……。中学生の時も周りの案に合わせる感じだったから」
「そんな感じだな。ま、俺も似たようなものだけど。……あ、歌うたえば?」
「え!? 無理無理無理……っ」
「何で? お前歌上手し、自信持てよ」
そういえば、体育祭が終わったあと、一度だけ彼らと一緒にカラオケに行ったことを思い出す。歌声をほめてもらえるのは嬉しいことだが、空自身はいまいち自分の歌声に自信が持てなかった。
それになにより、ステージにたった1人で立っている光景を想像したら震えてきた。
「けど……っ、1人じゃ絶対に緊張するよ……!」
思い切り首を横に振る空を見て、望夢はあることを考える。
「そっかー……。じゃあ……いっそ、バンドでも組む?」
「え?」
「お前がヴォーカルで、俺らが演奏する。そうすれば、1人じゃねえだろ」
「良いねそれ」
当人の空が返事をするより前にそう言ったのは、2人の会話を聞いていた紫だった。
「ゆ、紫君まで」
「だって、俺も空ちゃんの歌声は人に聴かせる価値があると思うし」
「うっ、嘘だ~……。2人して止めてよ!」
「2人だけじゃないよ。俺達も賛成」
そう言ったのは、海。いつのまにかこっちを向いていたらしく、飛鳥も頷いている。
「じゃあ、4票獲得ってことで」
「え……っ、望夢君本気ですか?」
「本気だけど、不満か?」
「……不満と言うより、不安……かな」
そう言うと、4人が顔を見合わせ一様に向き直った。
「空ちゃん、俺らにとって、空ちゃんのいない文化祭は参加しても味気ないんだよ」
「どうせなら思い出になる何かをやってみるのもいいかもね」
「やるならとことん馬鹿になれって言うしな」
「大丈夫だ空。空がいれば俺らは無敵だし、空も無敵。そうだろう?」
紫・海・飛鳥・望夢の順で掛けられた言葉に背中を押され、空は思い直し決断した。
「……みんな。……分った! 私、挑戦してみようかな!」
思い返せば体育祭の時は、平均以下の能力しかない自分に出る幕は無く、ただ4人の活躍を遠くから見守る事しか出来なかった。今度こそ、一緒に何かをやり遂げる大きなチャンスかもしれない。
「それで、学祭でバンドするのか?」
「うん」
放課後、暁の店にて。全員分の飲み物を持ってきてくれた暁にお礼を言って、空は大きく頷いた。
「……なーんか、本当に青春だよね。荒みきった大人には眩し過ぎて目が当てられない」
彼らの直ぐ側のソファー席に背中を預け、額に手を当てながらぐったりする素振りの苑に、暁が堪らず横を通りがてら苦笑した。
けれど、空が苑に駆け寄りあるお願いをした途端、その態度は一変する。
「そこで……、ちょっと苑ちゃんにお願いがあるのですが……」
「ん? 俺……?」
「……あのね、当日のヘアメイクを、出来れば協力して頂けないかと。美容院とかにお願いすると時間も拘束されちゃうし、予算もオーバーで‥…。あと……苑ちゃんさえよければ、集客用のチラシに載せるビジュアルを撮って欲しくて」
「そんな大事な役目、俺なんかでいいの?」
「苑さんにお願いしたいんです!」
「苑さんのスペックは確かだし、俺達も信頼できる人だと安心だし、学校の許可も取れるし。なにより、こうやって集まれるので準備がスムーズにいけますし。――あ……仕事との兼ね合いで、ご迷惑をかけることにはなるんですけど……っ」
「そっか。そこまで言われちゃー、動かないわけにはいかないなー」
さっきまでの態度が嘘のように、身体を起き上がらせると苑は笑った。
「単純だなお前」
「ちょっと暁、言っとくけど、お前も道連れだからな。俺の補佐役」
「おい、何勝手にっ……ま、空の為か」
苑の言葉に作業の手が止まった暁だったが、ふと楽しそうな空達の姿を目にしたら頷くほかなかった。
「暁君、苑ちゃん、ありがとう!」
「よし、これで大丈夫」
「でもお前らギターとかあるのか?」
念のために暁が確認すると、自信にあふれた笑顔の望夢からしっかりとした返事が返ってきた。
「そこは抜かりなく。紫の兄貴と軽音部に交渉済みです」
「そっか、それなら心配事はなさそうだ。空、当日が楽しみだな」
「うん!」
この先に待っているものが明るい未来と信じる空は、満面の笑みで暁に頷く。――しかし、実際には暗い影が、足音を忍ばせ直ぐ側まで近づいていた。
・・・・・・
「聞いた? 高羽君達文化祭でバンド組むんだって!!」
「中学のときとか文化祭参加してなかったみたいだし、楽しみだよねえ!!」
「けど、ヴォーカルって誰がするの?」
「もしかして高羽君!?」
「同じクラスの子の話じゃ、例の彼女がヴォーカルだって」
「え、マジで? あの子歌えるの?」
「高羽君達が上手いって絶賛しているの聞いたらしい」
「へぇ? じゃあ当日が楽しみだねえ」
文化祭準備期間が始めって以来、校内では空達のバンド演奏の噂が各方々で広まりつつあった。
「いい具合に広まってるな」
周囲の反応に望夢が満足そうに笑みを浮かべる。
「俺らがするってだけで話題性あるだろうしね」
紫も笑顔で頷くと、飛鳥がぼそっと呟く。
「こりゃ、下手な真似できねーな」
すると、もうパターン化した海からの返事がコレだった。
「そうだよ。だから、飛鳥は歌わなくていいからね」
「言われなくてもっ……死んでも歌う気ねーわ!!」
「「「あはははっ!!」」」
真っ赤な飛鳥の言葉にその場に大爆笑が起こる。
不安もどこへやら、4人と一緒だと、空は悩んでいる暇もなかった。
今は先日からスタートさせたバンド練習兼、文化祭の準備中だ。因みに、協議の末空達のクラスは、トリックアートを駆使した迷路空間【迷路の国のアリス】に決定した。当日はクラスメート全員で、雰囲気づくりのため不思議の国のアリスコスをする。
「――あれ? 加瀬先生は?」
「知らなーい。職員室じゃないの?」
クラスメートの会話を聞きつけ、丁度加瀬に用があった空は呼んでくる役をかってでた。
「私職員室行ってみるね!」
「本当に? 空ちゃんありがとう」
「うん!」
教室を出ると、どのクラスも準備を始め賑やかだった。つい周りに目を奪われていた空はうっかり誰かとぶつかってしまった。
「ごめんなさい……っ」
ぶつかるという事態に、一瞬前の事を思い起こし不安が過るも、今度の相手はぶつかったとわかるなり優しい言葉をかけてくれた。
「こっちこそごめん。大丈夫だった?」
「あ、はい。私は、大丈夫です」
相手の顔を確認すると、背中までの巻き髪に睫毛の長い美少女だった。可愛いうえに優しくて、素敵な人だなと思ったのも束の間、美少女は空の顔を見た途端に表情を険しくした。
「あなた……」
「え?」
「おーい梨々香~! 何してんの~?」
何かを言いたそうにしていたが、遠くから友人が呼ぶ声に気付くと、美少女は瞬時に元の笑顔に転じた。
「あ、今行くー!」
この変わり様に、自分は何か不快にさせたのだろうかと考えていると、美少女の足元にパスケースが落ちているのを見付けた。
「あの、落とし物ですよ」
良かれと思ってパスケースを拾い上げたが、それがいけなかった。
「え? ――あ……っ、それは駄目!!」
「へ? ……え?」
美少女が慌てて手を伸ばそうとする直前、二つ折りのバスが開いて内側が目に入ってしまい、反射的に空の動きが止まった。
中には、ある人物の写真が収まっていた。
2人の間に気まずい沈黙が訪れる。
「「…………」」
「……本当に、ごめんなさい。……見るつもりはなかったんですけど……っ!」
「見たこと……っ、誰かに言ったら許さないから!!」
真っ赤な顔で憤慨しながら、美少女はパスケースを空の手から奪い取る。空は驚きと衝撃で微動だに出来ないまま、暫くの間、走り去る少女を見送っていた。
・・・・・・
「……1年2組の小鳥遊です。失礼します。加瀬先生は居ますか?」
その後、気持ちを落ち着かせ職員室へ入ったはいいが、空に気が付いた職員室にいる教師たちが一斉にこちらへ注目した。理由が解らず不安に思っていると、漸く加瀬が姿を現した。
「小鳥遊、どうかしたか?」
「あの、モニター班のメンバーが先生に用があるみたいで……」
「そっか、ありがとうな。すぐ行く」
「お願いします。……あの、先生」
「ん?」
「どうして私は、周りの先生たちに見られているのでしょうか……っ?」
勇気を出し訊いてみれば、チラっと後ろを確認してから加瀬が躊躇いがちに答えた。
「あー……多分、お前が高羽と付き合っているからだろ」
「え?」
「お前はウチの学校では希少価値の高い、絵に描いた、品行方正な生徒だからな。大人サイドが勝手に心配してんだよ。気にしなくていいぞ」
「心配とは何ですか?」
「……お前が、あいつと一緒になって髪の毛染めたり、ピアスしたり……色々、変わってしまうんじゃないかっていう心配だ」
「そんな……っ、私はそんなことは……っ」
そんな風に周囲から見られていたことにショックを受ける空を見て、加瀬はそっと肩に手を置きながら優しく言い諭す。
「大丈夫だ。お前達がそんな脆い関係じゃないってことは、俺と暁さんや苑さん、それになにより、あいつら自身が解っている」
「先生……」
「だから、お前はそのままで、堂々としていればいい」
「先生……ありがとうございます。私、先生のこと大好きです!」
「そりゃ役得だな。でも、高羽には秘密にしとけよ」
「ふふっ。はい」
冗談めかして言う加瀬のおかげで空に再び笑顔が戻る。
「あ、そうだった。あともう1つ、暁君と苑ちゃんから伝言があって。家庭訪問の時の話、飲みに行きませんか? って」
「ああ。そう言えばそうだったな。悪い、バタバタして抜けてたわ。――勿論。スケジュール確認して返答します。って、伝えてくれるか?」
「はい!」
空と加瀬が教室へ戻ると短時間の間にも準備は着々と進んでおり、文化祭のビジョンが明確になっていくようで心が躍った。そんな中で、空の頭にはさっきの美少女のことが浮かぶ。
「……さっきのって」
「――空、どうかしたか?」
「わあっ! 飛鳥君……っ!?」
意識が完全に別の方へ行っていた空は、いつの間にか隣に飛鳥がいたことに気付て驚いた。思わず声を上げる空を、飛鳥が怪訝そうに見つめる。
「びびった……何だよ?」
「いや……っ。今ちょっと考え事を……っ」
「ちょっと飛鳥、何空ちゃん脅かしてんの」
「俺は何もしてねえ!」
海に言い返す飛鳥の隣で、空も誤解を解くため何度も頷いてみせるが、望夢は敢えて見えていないふりをする。
「顔が狂気の奴がなに言ってやがる」
「あ!? 望夢てめえ……、あんまり調子乗ってんじゃねえぞ?」
これも毎度のことにはなるが、飛鳥が望夢に詰め寄っていこうとした時だった。飛鳥の顔がいきなりウサギに変化した。
正確には、文化祭で使うウサギの【被り物】を海に被せられたのだ。
「………」
「これ超良くない? 俺の力作」
思わず大人しくなる飛鳥とドヤ顔の海。この対比を前に、しばしの沈黙の後どっと笑いが起こった。
「海すげえ!!」
「クオリティー高すぎてウケるんだけど」
「ほ、本当に、海くんが作ったの!?」
望夢・紫・空の3人が海驚きの表情で見ると、海は笑顔を浮かべながら言った。
「うん。俺、昔からこういうの得意でね」
「凄いっ! 器用なんだね!」
「ありがとう空ちゃん」
「うぉい!! 俺をガン無視すんじゃねえ!! コレ除けろ邪魔くせぇ!!」
「ええ~いいじゃん。案外似合って」
「ないわボケ!!」
「ったく、しょうがないな」
仕方なさそうに海が外すも、直後に暑いわ!!と飛鳥が喚くので、再び今度は望夢が被せてドカンという笑いの一幕があった。
「でも、鳴瀬君すごーい。……鳴瀬君が衣装班に加わってくれれば100人力なんだけどな!」
「あ、俺で良ければ」
「本当に!? やった!!」
「うそ? 鳴瀬君が手伝ってくれるの? 嬉しい!!」
「その前に、俺のコレどうにかしやがれ海!!」
「はいはい。お陰で頭の型がとれたよ」
「その為だったんかよ……っ!?」
「「「「あははははは」」」」
空は少し離れた所から笑い声の中心で吠えている人物を見ていた。
あの時、『梨々香』と呼ばれていた美少女のバスケースに入っていたのは、目が覚めるような金髪に今より幼い印象があるものの、会った人に強い印象を残す切れ長の目をした少年の写真。
「飛鳥君……」
そう、確かに映っていたのは、あの飛鳥だったのだ。
「だーッ!! やっと解放されたぜ!!」
暫くして、看板のペンキ塗りをしていた空の元へ飛鳥がやって来た。
「お疲れ。飛鳥君人気者だったね」
「は? そんなんじゃねーよ。海の良いように使われて騒がれただけだ」
そう言って、さりげなく腰を下ろし空のペンキ塗りを手伝い始める姿に笑みが零れる。
それに、ふて腐れながらも、実はそんな怒っていないと知っている。一緒に時間を過ごすなかで次第に分る様になった彼の本質。
「……でもさ、勿論私もだけど、みんな前よりクラスのみんなと仲良くなってきているよね」
「俺は兎も角、あいつらはな。元から愛想良い奴らだし。特に紫とか海な」
「それでも、最初は私含めてクラスのみんな、飛鳥君達のオーラに圧倒されてなかなか近付けなくって、遠巻きに見ているって感じだったのを思うと……、今は溶け込みつつあるっていうか」
空がそう言うと、飛鳥は考えるような顔つきをしながら、作業は続けたままで語る。
「ふーん。……まあ、何だかんだで体育祭とか色々、全員でやってきた実績? みてーなもんが、多少なりともあるしな。でも、それって空の存在があってこそだろう。俺らだけだったら、中学と大して変わらないノリで、こんな行事なんて傍観してたと思うぜ。望夢の野郎だって、中学の時は体育祭であんな盛り上げるような奴じゃなかったし」
「飛鳥君……」
「本当は、俺は……お前だけ居れば十分だけど、お前がそれで嬉しいなら、俺はそっちでもいい」
「飛鳥君って……本当、カッコいいよね」
「は……っ? 何だよいきなり!?」
「何て言うか、男気が溢れているっていうか……ふふ、モテるの分かるなー」
「は? モテねーし。モテたところで俺、女は嫌いだ」
「……けど、飛鳥君のこと好きだって子はいると思うよ?」
美少女のことを思い出し、それとなく口にしてみるも飛鳥の顔は険しい。
「モテたところで……好きな女に想われなきゃ、何の意味もねぇよ」
「え……っ? 飛鳥君好きな子いるの……っ?」
今世紀最大のスクープを知ってしまった気分だった。驚きの表情で自分を見る空に対して、飛鳥は口を尖らせながらそっぽを向いて零す。
「……いたら悪いかよ」
「だって……っ」
そこまで言った時、徐に飛鳥が立ち上った。
「……ちょっと便所」
「う、うん」
教室を出て行く飛鳥を空は困惑の表情で見送る。すると、突然背後から声がした。
「女の子相手に便所って言うなよな」
「か、海君……っ!?」
いつからそこに居たのか分からなくて驚くが、海は柔らかい笑みを浮かべながら、先ほどまで飛鳥がいた場所に座った。
「代わりに手伝うよ」
「ふふ、流石親友だね」
「え? はは。なんかあいつのせいで、俺の立ち位置がいつもピンチヒッター」
「海君が、飛鳥君のことをいつも良く気にかけているからじゃないかな? じゃなきゃ、丁度のタイミングで登場できないでしょ? いいね、男の子の友情!」
そう言うと、海の笑顔が変わった気がした。
「友情か……」
「海君?」
「あ……空ちゃんはさ、俺と飛鳥の関係性ってどう思う?」
「関係性? そうだなー……えっと、時折海君が、飛鳥君のお父さんやお兄ちゃんのようにも見えるけど……、きっと、根っこは上下とか無くって、お互いに支え合っているっていうか、対等な関係に思うかな」
「対等……?」
何故か意外そうな顔をする海に、空の方が驚いてしまう。
「海君?」
「あ……っ、何でも無い。ありがとう。……やっぱり、空ちゃんは凄いな。飛鳥が変わるわけだよね」
「え……?」
何の話か全然ついていけない空がそれについて尋ねようとした時、今度は海も立ち上った。
「ゴメン空ちゃん。飛鳥、多分トイレじゃないから、俺ちょっと様子見て来るね」
「え? そうなの……っ? それって、大丈夫なのかな!?」
「あーうん。全然大丈夫。じゃあ、行ってくるね。ごめんね」
「うーうん! 行ってらっしゃい」
すっかり疑いもしなかった空は、海の洞察力に驚きを通り越し感嘆しながら、飛鳥の時と同じく再び見送るのだった。