終.貴腐人ローザはけっして萌えを諦めない(4)
少年にのみ懐くバイコーンの性質を利用して、魔獣を狩り、恐ろしい毒を非人道的に製造していた東二十一番教会は、ローザ・フォン・ラングハイムの提案によって、孤児院に転身することとなった。
巻き込まれた少年たちは、被害に遭った記憶自体が曖昧だったことも手伝い、その孤児院を忌避することはなく、それどころか、自らが悪しき目的のために殺めてしまった魔獣のことを悼んだという。
二度と貧しい少年たちが、無知に付け込まれ、罪に手を染めることがないようにと、新生孤児院は広く子どもたちを受け入れるとともに、教育機能を備え、王城に仕えるローザ自身もたびたび教鞭を取った。
行き場のなかった子どもたちは、ここで大いに教養を身に付け、中には、建物に沁み込んだバイコーンの血が影響してか、魔力を開花させる者も現れたという。
その中で最も有名なのは、フェイ・ローゼルという人物だろう。
彼は、騎士として身を立てるとともに、孤児院での芸術教育を活かし、従軍画家として名を上げた。
フェイの代名詞である「万画」手法で描かれた、臨場感ある戦闘シーンは、ベルク帝国が義軍であるとの世論醸成に大いに貢献したし、「戦う男たち」と題された騎士の肖像は、身分の貴賤を問わず女性たちから深く愛され、瞬く間に絵画史に加わった。
その功績を認められ、後にローゼルの家名と騎士爵位を下賜されたほどである。
このように、王立学院を上回るとも噂された高度な教育は、優秀な学者や作家を次々と輩出。
院生たちは創始者ローザ、そして協力者アントンの意思を継ぎ、積極的な発信を行った。
ちなみにこの孤児院は、事件時に屋根が崩落した結果、逆三角形が柱に向かって突き刺さるような、特徴的な形をしている。
修繕せよとの声もあったが、事件を風化させないというローザの意思で、まるで二本の角を得たような建物は、そのままの形で維持されたのだそうだ。
その孤児院の名を、「二つ角の土地」。
バイコーンを短くし、「ビック・サイト」と呼ぶこともあったようだ。
フェイをはじめとする卒院生たちは、独自のコミュニティを立ち上げ、夏と冬にはビック・サイトで小説や万画の頒布会を行い、ベルク文化隆盛の役割を担ったという――。
すみません、このオチが書きたかったがためにバイコーンを登場させた作者は私です。
以上をもちまして完結となります!
連日投稿にお付き合いくださり、本当にありがとうございました。
皆さまからの感想、レビュー、評価、ブクマが、本当に励みでした。
そして、連載が終わってしまって寂しいよ、と言ってくださる方へ。
矢継ぎ早に、新作の中華ファンタジーを始めました!
リンクを下部に貼りましたので、よければ読んでいってみてくださいませ。
そうそう、下部にスクロールしていくときにたぶん、評価コーナーを通るじゃないですか。
ついでとばかり、ローザに評価をしていってくださってもよいのよ(ゲス顔)。