その他の登場人物紹介
・夢之島黒蝶
世界の理を逸脱した現象を引き起こすことができる特殊能力――異理の力を持つ理外者の一人。
艶やかな黒髪と白い肌というコントラストが印象的な少女で、セーラー服のような衣装の上から羽織を羽織り、肩に小さな黒いリボンを留めている。
《一片のてふてふの夢》という異理の力を持つ。その効果は、黒い蝶々を顕現し、夢の世界に対象を誘う、無数の黒い蝶々に自らの姿を変化させるという黒い蝶々系、失われるものや既に失われたもの、記憶となったものを顕在化する記憶系、想像した夢の世界を創造する夢世界系の大きく三つに分かれる。
前世は難病で寝たきりになって幼い頃から病院に入院し続けているという少女、蛭間鳳蝶だった。窓の外の風景と病室だけが自分の世界だった少女は外の世界や友人に憧れ、兄が気分を紛らわせて欲しいと病室に持ち込んだ安西冬衛や三好達治の詩に出てきた蝶のような自由さに憧れていた。
十六歳の時に病状が悪化して死去。その後、見知らぬ世界のスラムで二度目の生を受ける。今度こそ自由に、普通に生きたいと願うが、「スラムを一緒に抜け出して、成り上がって幸せになろう!」と誓い合った愛する人を貴族にゴミのように殺され、大切な人を目の前で失う。
そこで、少女の中に潜在していた異理の力の力が開花し、少女が顕現した虚像達と貴族とその配下達が戦い、両者痛み分けという決着をつけることになる。
少女はその後、自らの力で夢の世界に閉じこもる。最初はお尋ね者になっている自分が、元の世界では平和に生きられないからということであったが、次第につまらなくなった少女は蝶を夢の世界から数多ある異世界に飛ばし、夢の世界を冒険させるということを思いつく。
前世の自分は決して手に入れられなかった五体満足で未知なる世界を歩く幸せな姿を楽しみながら、そんな彼らが過去の己や記憶と対峙して苦しみ、命を落とす姿を目にして愉悦に浸る。それだけが自分の幸せを二度踏みにじられた少女自身の無聊を慰めること繋がると考えていたのだが……。
少女の本当の願いは、「過去の記憶を克服して前に進む勇気を得る」こと。二度の不幸を味わい、諦めることに慣れてしまった、もう傷つきたくないと思うようになってしまった自分から変わるために、無意識に少女は冒険者達の勝利を求めていた。夢の世界で死んだ者も完全攻略者が出た瞬間にご大満足で元の世界に戻ることができると設定している時点で本気で殺す気は無かったのであろう。
だからこそ、少女は喪服のような黒い服(将来失われることが確定している黒の衣装)を纏わず、どこまでも飛んでいける「てふてふが一匹 韃靼海峡を渡って行った」を象徴する蝶を肩に留めているのである。
夢之島黒蝶は名もなきスラムの少女が夢世界カルテットの王となった時に自らに与えた名前。
・能因草子
前作『文学少年召喚』の主人公格。詳細はそちらの設定集を参照。
数多くの影響を本作にも及ぼしており、彼が地球転生以前に書いた『転生に於ける肉体の束縛を離れた魂の時間的立ち位置から導き出される過去転生に関する一仮説』という論文は本作における過去転生の裏付けになっている。ちなみに、本作の百合薗圓は能因草子の存在を知っている。
ヴァパリア黎明結社を倒して地球に転生した筈だが……。
・右近衛鬱金
能因草子の地球転生後、全ての天使と悪魔を統率する二代目元帥(ちなみに初代は勿論、能因草子)になった。つまり、ホワリエルとヴィーネットの最上級の上司に位置する存在。
雷神にして武神。関西弁を話す浅黒い肌の剣士。令嬢方が卒倒しそうなナイスミドル(但し、口を開かなければ)とも描写されている。某西の高校生探偵を彷彿とさせるが、推理はできない。
天雷霆劔と呼ばれる神界最強の神器を持つ。神気を《神雷》に変換させて戦うスタイルで、某雷切を彷彿とさせる戦い方をする。
非常に好戦的な性格で、好敵手を求めて地上に降りることもしばしばある。青天の霹靂という言葉通り、突然現れ突然去っていく人物。
かつての能因草子の姿を百合薗圓に重ねて見ている節がある。




