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Railroad Tutor  作者: 悠蓉
新米専務車掌編
26/30

妖怪はいたるところに

「実はですね、あなたは気づいていないでしょうけど列車には私以外にも神や妖怪がたくさん乗っているのですよ」


 車掌区に入るとすぐにアヤは衝撃の事実を語りだした。今まで何も知らずに乗っていたのに実はそんなところだったなんてショックだ。後からよく考えたら座敷わらしがいるのだから他にも何かいてもおかしくないのだが、アヤから教えられるまでは考えたこともなかった。


「乗るときには普通の人間に化けていますが、神や妖怪は列車や宇宙船に乗って移動もするのですよ。本来私たちは普通の人には見えないのですが、代々そういう力を引き継いでいる一族、車掌のように選ばれた人たち、それから稀ですがなぜか見える人がいるのであえて化けたうえで姿を見せているのですよ」

「そうだったんだ……」


 全く気がつかなかかった。さっきのお客さんの中にもそういう存在が結構いたのだろうか。


「車掌のように仕事のために力が与えられている人はあくまで限定された力ですから、化けているのを見破るにはちょっと訓練がいります。例えば、さっきレストランでお寿司を食べていたお客さんを覚えていますか? あの方の正体は河童ですよ」


 河童といえば川や沼に住んでいる妖怪だったはず。人に化けることができるという話もあるらしいからそれは本当だったということのようだ。


「あなたもだいぶ詳しくなりましたね。妖怪だってそれぐらいできないと世の中を渡り歩いていけませんから」


 アヤによれば人間の産業の発展とともに妖怪にとってはそれまでと同じようにしては暮らしていけない世の中になったそうだ。アヤだってそうして元の居場所を追い出されてきた一人だ。そう考えると彼らもかなり苦労して生き続けているのだろう。


「それでさっきの話ですが、さっきの河童はわかりませんけど中には軍に入ったり、実業界でそこそこの成功をしたものもいるのですよ。やっぱり長く生きているとたくさんの経験もしますし知識もつくので結構成功していくようなんですね」


 それからアヤに語られたことによると人間社会の中に入り込んだ神や妖怪たちはもともとお互い仲間というわけでもないのでスパイ行為や工作活動も当たり前のようにあり、特に普通の人に姿が見えないという力を活かしてスパイとして活躍する妖怪組織が存在するとも言われているそうだ。案外適応しているどころか、結構恐ろしいことまでしているなんて妖怪のイメージがだんだん崩壊していく。


「昔だって盗賊団みたいなのもいましたから、今に始まったことではないとも言えますけどね。さっきの駅にもたくさんの神や妖怪がいましたから、あまりあのような話をしないほうがよかったのです。車掌区の建物内は安全ですけどね。私たち座敷わらしがいるので勝手な真似はさせませんから安心してください。流石に酒吞童子とかが配下を引き連れて攻めてきたら無理ですがその辺の神や妖怪くらいなら勝手に入ることすらできません」


 酒吞童子はもう千何百年も前になるのだが、多くの配下を従えて当時の首都を攻めようとした鬼の集団の頭領だったそうだ。人間に退治されてしまったが、人類社会が混乱していたどさくさに紛れて同じように退治された他の鬼や妖怪とともに再び解き放たれてしまったらしい。


「退治した時に完全にこの世から消し去っていなかったことが原因でしょうね。ただし、かつてほどの力はありませんからそこまで恐れなくて大丈夫でしょう。他の神や妖怪が酒吞童子を好きにさせませんから」


 それからアヤはいつもの調子に戻って言った。


「さて、次の乗務に備えて寝ましょうか。今恐れないといけないのは神でも鬼でも妖怪でもなく、『事故』ですよ。神をも恐れぬ車掌で結構、そういうことは私たち座敷わらしがしっかりと守りますからね」

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