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Railroad Tutor  作者: 悠蓉
新米専務車掌編
25/30

再び国外へ

 そして特急に乗務する機会は意外と早くに巡ってきた。予備の二日間に臨時のクローバー号51号アルテミス発ヤシロ行き、折り返しクローバー52号ヤシロ発アルテミス行きに乗り組むことになったのだ。


 臨時列車ということで普段は車庫で眠っている旧式の予備車両を使っている。運転士は廃止直前ということで乗務しない。車掌も人数も足りないので一人乗務である。もちろん座敷わらしがいるから新人でも問題ないということだろう。


 あちこち古さが否めない旧式車両だけど、優れているところとしてどの席に乗客が乗務員室にいながらわかる装置がある。マニュアルを読んで知ってから使ってみたかった装置だから少し楽しみだ。

 そういうわけで駅を発車して早速使ってみたのだが、いきなりアヤに止められてしまった。


「だめですよ。それに頼っちゃ」

「どうしてさ? 便利だと思うけど」


 せっかく便利なものがあるのに使うなとはどういうことだろう。文明の利器を活用しないで自らの体を使うことこそが真の車掌だとか精神論でも振りかざすのかと思いながら聞き返してみると、アヤが説明してくれた。


「実はこれ座席に置かれた荷物に反応したり、逆に子供くらいの体重じゃあ反応しなかったりと判定が安定しないのですよ。そういうわけで結局車掌が回る必要があるということになってしまったのですよ」


 なるほど、それなら便利だと思ったけれど仕方がない。あとで調べたところによると、もともとはこの装置の開発で車掌の人数を減らしたりする予定だったらしいが、開発費が足りずに性能も足りない、それに巡回による防犯効果などが言われたのに加えて、軍関係の輸送に予算がとられてしまったのがとどめとなってあっけなくなくなってしまったのだとか。実際、軍の輸送は割安料金なので赤字らしく、そのために他部門にはしわ寄せが行ってしまうことがしばしばあるらしい。


 そして、車内を見ていると分かることもあるのだとアヤは言う。特にこの列車は財閥側との直通列車である。あまり関係がよくないとはいえ、もともと同じ国だったこともあって人や物の行き来は多い。

 財閥は資源が多く取れそのまま輸出したり、製品にしてから輸出したりする。貨物列車の乗務はないが、特急の乗務をしていると景気の具合や両国間の関係が乗車率や車内販売の売り上げに現れるらしい。


「ちなみに今日はどうなの?」

「乗車率は高いですし、年代から見て仕事の人が多そうですね。ただ、連邦から財閥に行く人の方が多いのと軍隊の人がいるのが気になりますね」


 最近輸入がうまくいっていなくてその対応に追われているとニュースであったのを思い出す。それと政府間の交渉も難航してるともあった。連邦は財閥側に依存している資源も多いから関係悪化は死活問題になる。

 そんなことを解説してくれたのはアヤである。なんでも知っているねと尊敬も込めていつも言っている。

 

「私は半分神の領域にいるような存在ですから」


 そんなときはアヤは照れくさそうにいつもそう言うだけだった。いろいろな能力を披露してくれていたこともあるしその一つかなと思ったこともあったが、きっと経験によるものなのだろう。


 そんな具合でいるうちに列車は無事に終点ヤシロに定時で到着、自分も車両も、明日の折り返しまで一休みだ。

 ところでこのヤシロ駅は一部を連邦の鉄道公社が借りていて、特に改札内では治外法権の認められており、領事館に相当する施設もあって駅の職員とともに政府の役人も何人かここに滞在してる。今日はその建物に入っていく人が多くいた。


「もうしかしてあの人たちが?」


 さっき言っていた軍人なのだろうか。アヤに尋ねると、アヤは黙って頷いた。そして、口元に指を当ててから一言。


「ここでは誰が聞いているか分かりません。あとで話しましょう」

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