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Railroad Tutor  作者: 悠蓉
普通車掌編
2/30

出区準備

 ついに初めての一人での乗務。先日の車掌見習いを終えて、いよいよ今日から銀河系を飛び回ることになる。配属されたのはアルテミス車掌区。

 今日の乗務はアルテミスからアルカスまでの普通列車での往復である。これから一人で列車を支えるということに若干の感動と緊張を覚えながら乗務員室の扉を開けて……そこに小学生くらいの女の子が座っているのを目にした。


 これから車両基地を出て行く車両に人が乗っているわけがない。それで、思わず口にした言葉は

「ええと、お嬢ちゃん、迷子かな。お父さんかお母さんは一緒かい?」



 我ながら

「違うだろ!」

と言いたくなった。施錠された車掌室にいる可愛らしい女の子。しかも笑顔でいる。これだけでもうただの迷子な子供ではないのは間違いないのだ。


「もしかして君は……エ」

「エイリアンではありませんよ。まさかそんな馬鹿なことを思ってることはないでしょうけど」

 なんだ、人類が探し求めたがついに見つからなかった神秘の存在ついに見つけたかと思ったのに。

「私のことはアヤと呼んでください。あなたを担当することになりました。これからよろしく」


 そんな彼女を無視して電話機を手にする。

「異変があったらまず指令へ連絡」

「ちょ、ちょっと待ってください。そんなことしても無駄ですから!」


 通話が繋がり、事情を説明する。

「なにぃ? 車掌室に小さな女の子? 何を当たり前のことを言っている。連絡の前にちゃんと彼女の話を聞け。まったく、これだから新人は困る」


 あっという間に切られてしまった。通話時間を見るとわずか十二秒。なんだろう、自分が間違っているのだろうか。とりあえず目の前の女の子をもう一度よく見てみる。

 年は十歳くらいか、水色の着物姿で黒髪の長髪、ぱっと見の印象はただの可愛い小学生だ。しかし、これまでのやり取りでも、すでに彼女がただの人ではわずかないことはわかっている。


「では、君は一体何者ですか?」

「はい。訳があって鉄道に乗っていますが、私は座敷わらし。アヤと呼んでください。先ほども言った通り、今日からあなたの担当になりましたので一緒に乗務していくことになります。よろしくお願いします」


 座敷わらし? いったいそれはどういうものなんだろう。名前からしてお座敷列車と関係があるのだろうか。いや、うちの区所にお座敷列車は配置されていない。他区からの乗り入れがないわけではないが、そもそも普通車掌班の自分にお座敷列車の乗務が回ってくることはない。

  

 謎は深まっていくばかり。いろいろ聞こうとしたのだが、その前にアヤと名乗った少女が口を開いた。

「そろそろ出区時間ですよ。さあ準備して」

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