Happy Sweets Festival 4
男性陣による『スイーツ探し』が終わり、結果が発表された。
その結果にその場にいた参加者も観客も、誰しもが驚かざるを得なかった。
『さあ、皆様楽しめましたでしょうか?今年で214回目のこの『スイーツ探し選手権』はこれでおしまい!また、来年、皆様にお会いできることを楽しみしております』
道化の司会者はそう陽気に言う。
興奮冷めやまぬ観客たちから歓声が沸く。舞台袖で見ていた最後のチームの面々は、その盛り上がりに感心してしまった。
「すごい盛り上がりだな」
「ええ、全くね」
赤毛の青年と茶髪の女性は、ともにすれ違った世界を思い出しつつ、そういった。
「人混みが激しいのはいただけないけれど、でも、あのころよりも楽しかったわね」
「そっか」
純粋に楽しむことは、この先ももうわずかにしかないだろう。そう分かっていた二人は、これが最後の機会だと思って参加したのだ。
「二人も楽しめたみたいだし、ベアトも楽しめたみたいね」
「そういうクリス様は楽しんだのですか?」
金髪の女性は黒髪の青年に尋ねる。青年は目を細めて、
「ああ。もちろんさ。ベアトのスイーツを選ぶのには迷ったけど、それも楽しんで選べたからね」
と言った。
「なら、よかったです」
「気分転換にはなったかい?」
茶髪の青年が金髪の女性に尋ねる。
「ええ。久しぶりにこんなことをしました」
女性は自身の過去に思いをはせながら答えた。決して、彼と出会わなければこんなことには参加しなかっただろう。
「そうか」
「それに、お二方も楽しめたみたいですし」
「確かに」
「やっぱりロザを選んで正解だったよ」
「ふふ。マックス様は相変わらずですわ」
赤毛の女性は黒髪の青年に抱きしめられながらそう言う。青年は彼女の薔薇色の髪を優しく掬った。
「これからも、迷惑かけることがあるかもしれないけれど、よろしくね」
「あら。それは何に対してかしら?」
「リアは意外だったね」
「そうですか?」
茶髪の女性は長髪の男性と向き合っていた。彼女は小さい頃は『紺色の髪の少年』に恋をしていた。だが、今は違う。
「きっとあなたならわかってくださると思っていましたよ」
「そう?」
「エルも楽しめたみたいだね」
「はい。最初は驚きましたけれど、皆さんともお話できてよかったです」
銀髪の男性は蜂蜜色の髪の女性に声を掛けた。女性は目の前で楽しそうにしゃべっているほかの参加者たちと待っている間に話すことができたのだ。
「そっか」
「はい。また、どこかでお会いできると嬉しいです」
「そうだな」
こうして、鴻国王室が主催した祭典は毎年恒例の盛り上がりを見せて幕を閉じた。
しかし、この祭典はのちに、『214回の奇跡の祭典』と呼ばれることになる。
なぜならば、この祭典に合わせて行われた『第214回スイーツ探し選手権』において、最後のチームになるまで、さんざん時間をかけて迷った挙句、一回たりともパーフェクトでの正解がなかったものの、最後のチームだけは迷うことなく全員が選び、そして、正解したのだ。
さらに、不思議なことに、そのパーフェクトを成し遂げたチームに参加していたカップルの顔は観衆の心に刻まれてもおかしくないはずなのに、誰一人して思い出すことができなかった。それは、紙にもおよんでおり、参加票を書いて提出したはずなのにもかかわらず、その参加票の記入箇所はすべてぼやかされて、読むことができなくなってしまっていた。
そして、そんな不思議な現象を巻き起こしたメンバーたちは、今日もいつもと変わらない生活を送っていた。
Fin.