シュレディンガーの猫
シュレディンガーの猫。
それは恋と同じ。
「茅野。」
「恋とは、シュレディンガーの猫だ。」
「は、はぁ。」
「突然何ですか?嘉木方先輩。急に部室に呼び出して。」
「まぁ量子力学のように難しく考えなくていい…ただシュレディンガーの猫と恋は同じ、ということ言いたいだけだ。」
「いや、僕の話を聞いてくださいよ…。」
「たしかシュレディンガーの猫って、50%の確率で死んでしまう装置がついた箱に、猫を入れて____
「一定時間経った後に、箱の中には生きた猫と死んだ猫、どちらがいるのか?という話だ。」
「生きた猫と死んだ猫、そのどちらかが重なり合って観測されることは出来ない。理論上間違っている。」
「結局、物事は聞いたり、見たりしないと結果は分からないんだ。」
「人だって、口に出さなければ想いは伝わらない。」
「そっか、だから恋と同じなんですね。」
「そうだ。」
「そして、私は猫だ。」
「箱の中の猫だ。シュレディンガー茅野。」
「……。」
「……。」
「……はい?」
「先輩は人間でしょう、ホモ・サピエンスでしょう。」
「え?あ、その…だな。」
「猫って…まさか先輩そういった趣味!?」
「ちょっと引きました…。」
「な!ちがっ…。」
「あ、あぅ……も、もういい!このトンチンカン!!」
「馬鹿!」
「アホ!」
「ハゲ!」
「ふふっ……ははははっ!」
「先輩。」
「なんだ!私は怒ってるのに!」
「好きです。」
「な…。」
「…。」
「……うん。」
「機嫌治りました?」
「やっと言ってくれたからな、この馬鹿者め。」
「私が何度もチャンスをやっていたのに、33回目でやっとだ。」
「数えてたんですか…。」
「当たり前だ!」
「まぁ全部気づいてましたけど。」
「な!分かっていたのか!?」
「私の誘いは完璧だったはずなのに!」
「いや、まぁ科学理論はオシャレなんですけど…。」
「先輩、猫を騙るときは、透明な箱に入っててはいけませんよ。」
「バレバレです。」
「それにしても、なんで言わせたかったんですか?」
「僕達、既に恋人同士なのに。」
「もう、心は繋がってますよ。」
「だって…。」
「最近、好きって言ってくれてないから…寂しかった。」
「…そっか…ごめんね。」
「好き。」
「い、今言えばいいってことじゃない!」
「日頃から伝えてくれないと…その、不安になっちゃうから…。」
「好き、好き、大好き。」
「こ、こら!だからそういう意味jんんぅ!?」
「……。」
「………。」
「…はんそく…ん…。」
「……ん!?んん〜!…ぷはっ!」
「し、舌入れるのは無し!!」
「ダメ?」
「ダメに決まってるだろう!その…。」
「そういう気分に…なっちゃうから…。」
「僕は全然構わないですよ。」
「私はダメなんだ!ここは学校だ!」
「あぁ、それなら。」
ガチャッ
「鍵閉めて灯消しちゃえば…ほら。」
「僕達は、箱の中の猫です。」
「そして鍵は僕が持ってる。」
「意味は…分かりますよね?」
「……外からは観測出来ない、中でどうなっているかなんて、他者には判断出来ない。」
「正解です、先輩。」
「さすがは秀才。」
「…全然褒めてない。」
「いえいえ、そんなことは。」
「さぁ、続き、しちゃいましょうか?」
「………エロシュレディンガー…。」
短編集2話目です。
ご覧賞ありがとうございました!