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〜IF〜完璧なお嬢様と執事の話

作者: 梛木湯斗

IFルート、ハッピーエンド。

────今日はお嬢様の父君が経営する会社の子会社である建築会社に視察に来ておりました。本来であればこう言った事はお嬢様がしなくても良いのですがお嬢様はお優しい方なので会社の為に頑張ってくれている人たちの仕事を是非ともみたいと父君に無理を言ってこうしてきている。何故私がいるのかと言われたらお嬢様のお世話はもちろんいざという時の為にでもある。お嬢様は容姿端麗な為か昔から変な注目を浴びやすい、そして変や輩を呼びやすいのだ、襲われそうになったことも何回かありその度に私がどうにか守って────なんて力は私には無くてお嬢様は平然と返り討ちにしていた。


────そうお嬢様はいつも平然としていられた…なのに何故だろうか何故こんなにもお嬢様の哀しそうなお顔が目に浮かぶのだ。分からない分からないが何か良くないことが起きそうな予感がする。私は役立たずと言われてきた、例えそれがお嬢様と共にあることに対するヤッカミや僻みであっても私はお嬢様と共にあることが何よりの忠誠の証となると思っているからだ。お嬢様を守るそれは私の使命であり願いでもある。



お嬢様は大変魅力的なお方だ、だってほら今だって会社の男性職員ほぼ全員の視線を釘付けにしている。何故だろう胸のあたりが締め付けられる様に苦しいのは何故だろう今すぐこの男共を締め上げたくなるこの気持ちはどこから来てるのだろう。





社内説明も終わり実際に建設現場を見学することになり現在建設しているというビルの現場に向かった。さすがに危ない気がしたので一言お嬢様に注意する様に伝える。社長は問題無いですようちは安全が売りなんでね。だそうだ。念のためですと言うとお嬢様も納得してくれたようで何やら頬を両手で抑えながらクネクネとしていらっしゃる。何故だろうか少し真剣に訴えたのが何か不味かったのだろうか?




お嬢様は建設現場の重機に興味を持たれたのか説明している社長から少し離れたところにいる。私はというと何かあってからでは遅いので全力で走ればすぐさまお嬢様を助けることができる位置にいる。社長は説明に夢中になっているのかお嬢様が離れていることに気が付かない。お嬢様もお嬢様で注意をしたのが聞いたのか少し恐る恐ると言った感じで警戒しながら見学をしている。これなら何かあってもすぐさまお嬢様の元へと向かえるから少し安心だ。




何となく上を見上げるとビルの上の方にあった鉄骨が今にも落ちて来そうになっているのに気がついた。鉄骨が落ちてくるまで後数秒あるかないかだろう、このままではお嬢様が危ない。そう思ったら体は自然とお嬢様目掛けて走り出し自然とお嬢様!危ない!と声を上げ助けようと一心不乱にかける。

お嬢様は私が駆けてくるのに驚いたのかキョトンとしておられる。それと同じくして鉄骨が落下を始めた、よかった…もし後少し気づくのが遅かったら間に合わなかったかもしれない。




お嬢様を咄嗟に抱き抱え鉄骨の落下するであろう場所から離れる。その時地面を転がることになってしまったのでお嬢様が怪我をしないようにしっかりと抱きしめて避ける。鉄骨が地面に落下し大きな金属音をたてるのにそう時間はかからなかった。その音に気づき社長も大慌てでこちらに駆け寄ってくる。その表情は正しく顔面蒼白…まるでこの世の終わりが来たような顔をしている。最も社長の顔のことなんてどうでもいい。抱きしめていたお嬢様から離れ怪我が無いかを確認する。特に目立った外傷はないようでよかった、ただ顔を真っ赤にされて俯いていたのでどこかうってそれを我慢してるのではないかと心配になり顔を近づけ確認をする。




「お嬢様、大丈夫でしたか?どこかうってはいませんか?」




『だ、だ、大丈夫よ。大丈夫、そう大丈夫よどこも怪我なんかしていないわ。あなたのおかげでね』




「左様ですか、それならばよかった、では少々お待ちください。重要な用事ができたので」




そう言い残しこちらへと来た社長を連れお嬢様には聞こえない位に離れ話をする。



「社長…あなたは先程なんと言っていましたかな?」




『え、ええ…我社は安全が売りと…』




「ほう、ここでの安全とは空から鉄骨が降ってくることを指すのですかな?」




『あ、いや、それは、────』




「今回、私が事前に気がつきお嬢様にも危害がなかったからよかったもののこの件はお嬢様の父君にご報告させて頂きますよ」



『そ、それだけは!』




「それだけは?あなたは何を仰っているのですか?お嬢様に危険でありながら慢心をし安全管理を怠ったあなたが何を仰っているのですかな?ハッキリ申し上げさせて頂きます。よくもお嬢様を危険な目に合わせたな例えお嬢様の父君…当主様がお許しになっても────俺は決して許さんぞ!」




『ひぃぃぃ!!』




「失礼…少し興奮していた様です。この件に関しては追って沙汰が下るでしょう、今日はもう帰らせて頂きます。」





社長はこの世の終わりの様な表情を更に青ざめさせ崩れ落ちたがそんなことは知ったことではない…。どうやら私は随分と怒っているようだ。私はこんなに感情的な人間だっただろうか…。

お嬢様の元に戻りすぐさま屋敷へと戻った。屋敷に戻る間お嬢様はずっと俯いたままで静かだった。




────────────────────────────────────────────────────────────────────




屋敷に戻り当主様に今回の件を伝え、お嬢様と朝方に約束したハンバーグを作りに調理場に向かう。料理長からはあまりいい顔はされない何せ自分の仕事を取られた様なものだからだそれでも理解のある人物なのであまり表に出さない方なので使用人達からの人望も高い。ハンバーグを作り終えお嬢様の部屋に向かう中ふと初めてお嬢様にハンバーグを作って持っていった記憶を思い出す。常に凛として平然としていたお嬢様がとても弱々しく見えた時だ、その時の私はお嬢様が元気づくようにと奥方様が一度だけ作られたというハンバーグを再現しようとして作ってみたのだ。

以来私はたまにお嬢様に頼まれてハンバーグを作ることがある。今では昔よりも形も綺麗に味も美味しく出来るというのに未だに初めて作った時の味付けがいいと無理を仰られるので少し困っている。




「お嬢様…夕食をお持ちしました。よろしいでしょうか?」




『────入って…』




────失礼致します。そう言って電気も付けられていない、窓から入る月光だけが明かりになっているお嬢様の部屋に入る。お嬢様はベッドの上で蹲っていた(うずくま)。格好も乱れ普段から着ている上着が乱雑に置かれている。



「お嬢様、せめて何か羽織ってください…風邪を引いてしまいますよ?」




『────』




「お嬢様、お嬢様の大好きなハンバーグですよ?早く食べないと冷めてしまいます。」




『────』





────全く…。何も反応の無いお嬢様をそのままにしておく理由にも行かずクローゼットの中から手頃な上着も取り出して未だに蹲ったままのお嬢様の元へと向かう。お嬢様の肩に上着を羽織らせると同時にお嬢様に掴まれる。その手は微かに震えておりいつもの毅然とした雰囲気は感じられない。




「お嬢様、────」




『怖かった────。もしあの時執事が早く気がついてなかったら早くにわたしのところまでこれてなかったら、わたしの代わりに執事が鉄骨に潰されるんじゃないかって…怖かった────。』




「────お嬢様…」




『執事のことだから何がなんでもわたしのことを助けようとして若しかしたらあの時執事が死んじゃってたかも知れないって考えたら怖かった────。』




『わたしには執事がわたしの隣に居ない世界なんて考えられない、そんなの【普通】じゃない。執事…もう何処にも行かないで…お願い…』




「お嬢様、私はお嬢様に拾われて今まで生きてこれました。私が貴方様の執事をしているのは決して仕方なしなどではありません。私はお嬢様の執事です、お嬢様の許可なく何処に行こうというのです。────大丈夫、私が必ず貴方を守ります、何を言われようとも必ず必ず貴方をお守り致します。」



そう言ってお嬢様を強く強く抱きしめた。お嬢様の震えが収まるように、お嬢様の感じた恐怖を少しでも無くせるように。


────────────────────────────────────



『執事…知ってる?なんでなんでわたしがお父様からの見合い話を全部断っているのか』



「?、どういうことですか?」




『ふふ、それはね、────────────だからだよ。』








執事とお嬢様がその後どうなったかはご想像におまかせします。ここまでお読み頂きありがとうございました。

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