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9.叫び

 こんにちは、葵枝燕です。

 近況報告としましては、そうですねぇ……大好きな動物写真家の(いわ)(ごう)(みつ)(あき)さんの写真展とギャラリートークに行ってきました! ええもう、ホクホクです。サインも無事いただけましたし! 動物苦手だけど、絵とか写真とか映像とかなら平気なんですよ、私。ただ一つ心残りなのは、「LINEスタンプ買いました! いつも使わせてもらってます!」と言えなかったことです。このチキン! でも、楽しかったです、写真展もギャラリートークも。

 さて、雑談はこのくらいにして。

 連載『(から)梅雨(つゆ)()く』、第九話です!

 こんな調子で、無事終わりを迎えられるのか――作者が一番不安です。完結予定日を延期した以上、これ以上止まってはいられません。

 それでは、そんなこんなで第九話、どうぞご覧ください!

「違います!」

 彼女が発したのは、そんな一つの叫びだった。そこには、さきほどまでのどこか頼りなかった少女はいない。きっぱりと明確な芯を持った一人の人間が、確かにそこにいるのだと、俺は感じていた。

「あ……」

 自ら叫んだのに、()(むら)さんはそう呟いて、頬を赤く染めて黙り込んだ。叫んでしまったことに驚いたのか、叫んでしまったことが恥ずかしかったのか、それとも、今いる場所が図書室であることに気付いたのか――。再び俯いてしまった紫村さんからは、細かな感情を読み取ることができなかった。

 沈黙がまた俺達の間に落ちる。俺は左頬を()きながら、紫村さんの言葉を待っていた。急かすよりも、彼女が自分の口から思いを言う方がいいような気がしたのだ。

 長く重いその時間が、ずっと続くのではないかと思われた頃。紫村さんがようやく顔を上げた。

「あの……あのとき逃げたのは、あなたの所為(せい)じゃないんです。私が、臆病で弱いから――だから、逃げてしまったんです。本当に、すみませんでした」

 そんな言葉とともに、紫村さんが頭を下げる。俺は、そんな彼女を見て慌てふためいていた。

「顔、上げてください。その……気にしてませんから、俺」

「でも……っ」

 紫村さんの気持ちはわかった。俺を不快にさせたのではないかと、気にしてくれていたこともわかった。それは素直に嬉しい。でも、頭を下げてまで謝られるのは何かが違う。そんなことをされたいわけではなかった。そもそも、明らかに自分より年下の女の子にされることではないはずだ。

「フーミーちゃーんー?」

 そんなことを考えていたときだ。後ろから、そんな声が聞こえた。地の底からわき上がるような、というのはよく聞く表現だが、まさにそのとおりの声だと思えた。恐る恐る振り向く。

 そこには、笑顔で腕を組んでいる伯母の姿があった。

「陽子……さん?」

 俺のそんな問いかけには答えることなく、伯母は笑顔のままだ。だが、俺にはわかる。伯母が笑っているのは口元だけで、その目は全く笑っていないことを。むしろ、怒りとか(けい)(べつ)だとかに満ちているような気がする。

「あたしが、言いたいこと、わかってるわよね?」

 言い聞かせるように、すり込むように、伯母はゆっくりとそう言った。相変わらず笑顔のままだが、その声は俺に反論や言い訳の余地など与えてくれそうにない。

 となれば、俺が言う言葉は限られたものになる。

「……ハイ」

「ならよろしい」

 満足したように笑う伯母を見て、俺はそっと胸をなで下ろす。しかしその(あん)()(つか)()のことで、視界の端に紫村さんが映ったことで、俺は今の状況を思い出した。そうだ、ここには俺と伯母以外にも人がいたのだった。

「あ、えと、すみません。とにかく、俺は気にしてませんから。だからもうこの話は、これっきりにしてくれるとその……助かります」

 それだけで納得するかどうかはわからなかったが、それだけしか言うことはなかった。これ以上紫村さんが謝ろうものなら、俺が伯母に怒られるのだ。もちろん、紫村さんは悪くない。俺が不甲斐ないというか、みっともないというか――そう、それだけの話なのだ。

 第九話のご高覧ありがとうございました!

 行間についての意見には応えられませんが、評価や感想などいただけると嬉しいです! 気になる点は、メンタル弱いので何とぞお手柔らかにお願いいたします。

 それでは、第十話で!

 葵枝燕でした。

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