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7.彼女が目の前に

 こんにちは、葵枝燕です。

 全国的に梅雨入りしてきた今日この頃ですね。私の住む沖縄県は、一応梅雨明けしました。でも、昨日とかすごい雷雨で……「梅雨明けたんだよね!?」って感じです。

 さて、連載『(から)梅雨(つゆ)()く』、第七話です!

 ようやくフミちゃんと晶ちゃんが……って感じになりました。でも、何かほんとに迷走中なんですよね……。中身もですが、今回はサブタイトルでかなり迷走しました。あまり気に入っていないというか、しっくりきていないので、変えるかもしれないですね。

 それでは、どうぞご覧ください!

 あの少女――()(むら)さんの名前を知ってから三日が経った。昼休みから戻ってきた俺は、ついいつものように、その場所に視線を向ける。この図書室で最も日当たりのよい窓際の席――紫村さんの指定席だ。

「紫村さんなら、まだ来てないわよー」

 あれからすっかり伯母は、俺が紫村さんに恋愛感情を抱いていると思い込んでいる。何度も「違う」と言っているのに、伯母は俺が恥ずかしがって否定しているのだと決め込んでいるようなのだ。俺としては、紫村さんに対するこの気持ちは恋愛ではないと思っているのだが、それを伯母に説明できる自信はない。説明できたとしても、完璧には理解してもらえないのがオチな気がする。それならいっそ、このまま勘違いしていてくれた方がいいと、半ば諦めている俺がいた。

「そんなに紫村さんを待っているような素振りするくせに、恋じゃないなんてねぇ」

 伯母が(あき)れたようにそう呟くのを聞き流し、俺は(はい)()作業をすることにする。とはいっても、排架する本が大量にあるわけではないのが現実だ。

 返却処理の終わった本が置かれたブックトラック――本を運ぶためのワゴン、といえばいいだろうか――には、歴史を扱う二類が一冊と、技術や工学を扱う五類が一冊、絵本が三冊。本日午後一番の仕事は、その計五冊をあるべき場所に戻すことだ。俺はその五冊の本を両腕に抱えて、伯母から半ば逃げるようにして排架作業に向かったのだった。


 全ての本を戻し終わり、カウンターに戻ってくると、伯母がニヤニヤと笑いながら俺を迎えた。

「何だよ、その顔。気持ち悪いんだけど」

「仕事熱心なフミちゃんに教えてあげようと思ってねー」

 そう言いながら伯母が指さす先には、紫村さんがいた。場所は、いつもの窓際の席だ。今日も本を読んでいる。その光景はやはり、美しい一枚の絵画のようだと感じた。

「あら。フミちゃんてば、嬉しそう。うふふ……恋っていいわねぇ」

「だから、そんなんじゃないってーの」

 なおもニヤニヤと笑う伯母から視線を逸らし、紫村さんを見る。俺の中で絶対的ともいえる存在感と美しさを放っているのに、それでいて触れると壊れてしまいそうな危うさとか儚さもあって――やっぱり俺は彼女に惹かれているのだなと、何度目かの確認をしてしまう。

 そのときだった。不意に紫村さんが、俺に目を向けたのだ。思わず、呼吸が止まってしまうような感覚に(おちい)った。それでもすぐに落ち着けたのは、彼女が俺と関わることなんてありはしないと思っていたからだろう。なにしろ、三日前のあの日、俺は彼女をこわがらせてしまっているのだ。

 だからこそ俺は、紫村さんのその後の行動に(どう)(もく)することになる。

 紫村さんがゆっくりと立ち上がり、俺を真っ直ぐに見つめて、俺のいるカウンターに向かって歩みを進めてきたのだ。彼女の指定席と俺のいるカウンターに、それほどの距離はない。それでも、こちらにむかってくる紫村さんの動きは、やけにゆっくりとした緩慢なものに思えた。それでいて、俺の心臓は激しく鳴っていた。

 そして、紫村さんが俺の前にやってきた。近くで見るのは、これで二回目だ。やはり美しいなと感じて、何だか変なことを考えているような気分になって、内心ひとり狼狽(うろた)えていた。落ち着け、落ち着け――と、脳内で言葉がぐるぐる回っている。

 そんな俺の前に立って、紫村さんは静かに口を開いたのだった。

 第七話のご高覧ありがとうございました!

 さて、行間についての意見には応えられませんが、評価や感想などいただけると嬉しいです! 気になる点は、メンタル弱いので何とぞお手柔らかにお願いいたします。

 それでは、第七話で! 七月も間近に迫って参りました。その上旬までの完結を目標に掲げた以上、それに向けてがんばります! 

 葵枝燕でした。

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