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12.フミちゃん

 こんにちは、葵枝燕です。

 まずは、恒例の近況報告を。十日間の博物館実習も無事終わり、この作品の完結期間を二〇十七年九月中に延期し、そして今日から三日間の旧盆に入りました。旧暦で動くことの多い沖縄県では、全国より約一ヶ月遅れてお盆をするんです。それに旧暦なので、毎年日付が変わるんですよ。こういう沖縄の年中行事においては女手が必要というか重要なので、手伝うことを考えると憂鬱になりますけど、私も年齢的にはオトナなんだし、ワガママ言ってられないです。あ、あと最近ステレオポニーさんの「ヒトヒラのハナビラ」にハマってます。

 それはさておき。

 連載『(から)梅雨(つゆ)()く』、第十二話です!

 今回は、そうですね……フミちゃんがその呼び名についての思いを考える、感じの話になっているのかなと。要は、進展してないともいえるかもしれないです。

 それでは、そんなこんなで第十二話、どうぞご覧ください!

「本当に、大丈夫ですか?」

 ()(むら)さんの心配そうな声が、俺の鼓膜を揺さぶる。正直、“大丈夫”とはとてもいえない状態だった。けれど、これは俺自身の問題で、紫村さんにどうこうできる類いのものではないのだ。

「だ、大丈夫っす……アハハ」

 乾いた笑いが、全てだと思う。きっと、よけいに心配させてしまうだけなのだと、わかってはいるのだ。けれど、そうする以外に俺はどうしていいかわからなかった。

「私、何か変なことを言いましたか……?」

 さっきとは立場が逆だな——と、そんなことを考える。今の紫村さんは、数分前の俺のように混乱しているのだろう。

「いや、あの、気にしないでください。“フミちゃん”っていうのが聞かれてたことに、動揺しただけなんで」

 だから俺も、あのときの彼女がそうしたように、正直に思いを白状した。何となく、紫村さんは、些細な嘘さえも見抜いてしまうような、そんな気がしたのだ。隠しきれるとは、どうしても思えなかった。

「いやなんですか? その……“フミちゃん”って呼ばれるのが」

 どこか不安そうに、紫村さんが言う。そんな言葉に俺は、

「まさか」

と、返した。

 “いや”というほど、俺はその呼び名を(いと)うているわけではない。伯母がおそらく愛着を持っているように、俺だってそれなりに“フミちゃん”という呼び名に愛着を持っている——はずだ、多分。

「いやだったら、もっとマジで怒るというか、やめさせると思うんで。まぁ……」

 チラリと背後に視線を向ける。そこには、俺と紫村さんの様子を見ている伯母がいた。微笑ましそうに、といえば聞こえはいいだろう。だが、俺にはこの状況を面白がっているだけにしか見えなかった。

「俺が言ったとこで、あの人はやめないと思うんすけどね」

 それだけはわかる。伯母は絶対に、仮に俺が真剣に言ったところで、“フミちゃん”と呼ぶのをやめないだろうと。独身で子のいない伯母なりに、甥である俺を愛しているが故の、そんな呼び名だとは俺も何となく感じている。ただの癖のようなものかもしれないけれど、俺は“フミちゃん”と呼ばれる度に、心のどこかがあたたかくなるような気がしている。

 だから、「“フミちゃん”という呼ばれ方がいやなのか?」と問われれば、俺は即座に「違う」と言える。その自信だけは、確かに俺の中に存在している。

 第十二話のご高覧ありがとうございました!

 行間についての意見には応えられませんが、評価や感想などいただけると嬉しいです! 気になる点は、メンタル弱いので何とぞお手柔らかにお願いいたします。

 再延期した期限がきてしまったので、もうこれ以上延期しないように、頑張っていこうと思います!

 それでは、第十三話で!

 葵枝燕でした。

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