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尋問美男子《セイバー》  作者: 中條利昭
前編 クラスメイト
5/13

5、新種のSMプレイ?

 

 月曜日、学校に来るとクラス中がざわざわしているのが教室の壁から伝わってきた。

 なんだろう、と不思議に思いながらも私は教室に入った。何かあったのなら奈美や薫に聞けばいいし。


「おはよ~」


 いつも通り教室に入ってあいさつをすると教室の温度が3度くらい下がった。全員がこちらを見ている。


 あれ? 私何かしたっけ。


 そう思っていると奈美と薫が走ってきて、クラス一同の気持ちを背負ったみたいに大きな声で叫んだ。


「理子って五十嵐くんと付き合ってたの!?」


 クラス中の熱い視線と薫からの冷たい目線がチクチクと刺さる。


「……え?」意味が分からなかった。


「だーかーらー! 理子って五十嵐くんと付き合ってたの?」


「……え?」


「何回言ったら分かるの?」


「理子って――」


「いやいや、ちょっと待って。なんでそんなデマが広がってるの?」


 デマ? なんだ、デマかよ。いや、言い逃れかもしれないぜ。

 またクラスの空気がざわざわと盛り上がり始めた。


 薫は「私の五十嵐くんを、私の五十嵐くんを……、」と鼻息を荒くしている。

 いや、まだ五十嵐くんは薫のものになってないでしょ。


「金曜日に理子と五十嵐くんが仲よさそうに歩いてるのが目撃されてるのよ」


「え? ああ、うん。……そうだね」


「まさかおなかが痛いってのも仮病? 極悪非道ね」


「違うって! 五十嵐くんと会ったのは偶然だって! 付き合ってないし!」


「ホントに!?」鼻息の荒い薫が私の方を掴んで前後に揺さぶってきた。


「ホントだって! ちょっと揺らさないでよ薫!」


「あ、ごめんごめん」薫は興奮が冷めたのか手を離し、恥ずかしそうに頬を赤らめた。

 あ、今の薫の顔、五十嵐くんみたい。と私はほぼ無意識に呟いていた。


 すると「何?」と薫が睨んできた。「五十嵐くんの恥ずかしがってる顔なんか私見たことないぞ! 見たい! 切実に見たい! ブルーレイで永久保存したい!」


「なんかごめん」


 薄々気づいてたけどあいつ、五十嵐のこと好きなの?


 クラスが(主に男子)がまたざわつき始めた。

 その声を聞いてまた薫は顔を赤らめ、汗を流し始めた。


 かわいい。


「さっきから気になってたんだけど」私は今にも顔から煙が出そうな薫ではなく、そんな薫を見て笑ってる奈美に訊いた。「私と五十嵐くんが偶然歩いていたのって目撃したの誰なの?」


「中野くんよ」


「中野くん?」野球部でもないのに坊主頭の?


「駅前のコンビニの中から外を見たら偶然見かけたんだって」


「コンビニ! ああ~! パシリ!」


「パシリ? 私が?」


「ごめん違う」


「じゃあ中野くん? いつからそんな関係に」


「違うって。こっちの話」


 あの三人組がいたコンビニの中に中野くんがいたんだ。すっごい偶然。あのパシリの人の漫画みたいな下っ端感に気を取られていて全然気が付かなかった。


「こっちの話って、やっぱりラブラブなんじゃないの?」奈美の攻撃。私に20のダメージ。


「ラブラブなのか!」薫が現れた。


「だから違うって」私は軽くあしらった。


「パシリって何かのプレイ?」奈美の追撃。私に更に20のダメージ。


「何言ってんの」私は『逃げる』を選択。


「新種のSMプレイ?」奈美は回り込み、私に攻撃。30のダメージ。


「バカじゃないの」私は『攻撃』を選択。


「理子、赤くなってるよ、かわいいわ~」奈美は私の攻撃をかわし、カウンターを与える。


 私に40のダメージ。「かわいくないよ」


「照れ隠し」


 奈美の一言がグサッと刺さり、50のダメージ。「浮気者~」


 西園寺道長と五十嵐くんの顔が同時に脳裏に浮かぶ。私は西園寺道長を選択し、体力が30回復。


「浮気じゃないって。五十嵐くんタイプじゃないし」


 背後で誰かが歩いてたのが止まった。

 振り返ると五十嵐くんがいた。ものすごい複雑そうな感じだった。


 ……。


「え―……おはよう」


「あ、おはよう」


 五十嵐くんは足早に去って行った。


 奈美と薫の方に視線を戻すと、二人とも頑張って笑いをこらえていた。

 私、100のダメージで死亡。


「笑うなー」私は顔から火を出しながら小声で叫んだ。


「だって、タイミングが、……わはは」


「五十嵐くん、ショーック!」


「別にショックじゃないでしょ。クラスメイトにタイプじゃないって言われても」


「いや、ショックだと思うよ。別に好きじゃない子に言われたとしても」


「んー……そうなのかな?」






 この後、五十嵐くんは河野くんに謝っていた。

 でも、


「いいよ、別に」


 河野くんは苦笑いだった。


 そこにはまだ厚い壁があるみたい。


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