大人にはなれない。
『キレイ、、、』
町は色とりどりの光に囲まれていた。彼は“あたし“を誘導してはくれるけど、“あたし“には決して触れてはくれなかった。
『じゃあ、いろいろ買ってくるね、、。』
『俺、あそこのベンチで待ってる。』
2人の中でなんだかモヤモヤする。
場面が変わった。
日用品をいろいろと買った。そろそろ戻らなきゃ。
『アレキサンダー、、、?』
いると言った場所に彼がいなかった。急に怖くなった。またひとりぼっちになった気がして、、、
『アリス。』
彼の声がした。
『アレキサンダー‼』
“あたし“は彼に抱きついた。彼は戸惑ったみたいだった。
『急に怖くなったの。ごめん。』
自分の行動に驚きながらゆっくりと彼から離れた。今度は彼が“あたし“に両腕を絡ませてきた。
『アレ、、』
『なにも言わないで。』
“あたし“も彼の腰に腕を回した。彼は“あたし“から少しだけ離れて、唇にキスをした。“あたし“はすごく幸せな気持ちだった、、、
あたしが目を覚ますと、透き通るように青い空が広がっていた。そよ風が吹くと涙の跡が冷たくなり、あたしは泣いたんだと教えてくれる。芝生の匂いが眠気を無くす。
『アリス、、、いくらなんでも、、、』
アリスがあたしを励ますためにわざとあの夢を見させてくれたのは分かっていた。でも、こんなことがあった直後にあの夢を見てもあとから気持ち悪さが襲ってくるだけだ。一瞬だけ元気にはなったけど。
誰かが寝てしまったあたしにコートをかけてくれた。温かい。誰なのかは言われなくても分かる。あたしはコートをたたみ、その場に置いた。ショーンはいない。
あたしは1人で歩き出した。
帰ったら、ブラット以外のみんながリンジーの部屋に集まってた。
『イリーナ、、、!』
リンジーとナターシャは抱きついてきた。ナターシャも事情を聞いたんだろう。
『あれからどうなったの、、?』
『城についてすぐにブラットは父さんを殴った。』
ジェイミーを、、、
『ブラットはアージュドールのメンバーで1番最初に会った奴を殴ったんだ。それがたまたま父さんだった。ブラットはあのことを知ってたか聞いたんだ。父さんは知ってたと認めたとき、ブラットは父さんを殴っても意味はないと悟ったらしい。今は部屋に閉じこもってる。』
ブラット、、、
『ブラット、かなりキツイと思う。』
あたしはそれしか言えなかった。
『ブラットのとこにいってくる。』
あたしは部屋を出る前にパトリックが扉に立ちふさがった。
『やめたほうがいい。今のブラットは、、、』
『入っていいか聞くだけ聞く。もしも殴ろうとしてきたって、あたしはあいつの攻撃方法を熟知してる。抑えられる。』
あたしは断言した。
『イリーナなら大丈夫だよ。兄貴が怒ったときにいつも止めるのはイリーナだったんだ。』
ショーンの目は真っ赤に腫れてる。パトリックは迷ってるみたいだった。
『今、、同じ状況に置かれてるのはあたしだけよ。』
パトリックは退いた。
『ありがとう、、、』
パトリックはすごく心配そうな顔をした。
『ブラット、入っていい?』
返事が無い。
『入っちゃダメならなんか合図出して。』
なにも無かった。
あたしは入った。散らかった部屋には誰もいなかった。お風呂につながる扉が開いていた。
『ブラット、、、?』
ブラットの荒い息遣いがお風呂場から聞こえた。ゴシゴシと何かをこする音がした。まさかと思ってあたしはお風呂の入口を開けた。
『はぁっ、はぁっ、はぁっ、はぁっ、、、』
ブラットはたわしで背中を力一杯こすっていた。背中からはダラダラと血が流れている。ブラットは気がついてないみたいだ。
『ブラット、、』
ブラットはあたしの存在も気がつかない。
『ブラットっ‼』
ブラットの動きが止まった。
『イリーナ、、おめぇ、泣いたのか?』
あたしの目ってそんなに腫れてるかな、、
『おめーが泣くなんてな。らしくねーな。』
なんか違和感があった。まるであたしのほうが傷ついてるみたいだ。こいつのほうがよっぽど、、、
『ショーンは多分、、、』
『ああ。なるな。大人に。』
これは確信があった。ショーンがあそこに来たのはかなり最近だから。
『お前には、、、あったのか、、、?』
なにを聞かれてるかは分かった。
『まだ見てない、、、怖くて。』
『、、どう思うんだ?おめーはあると思うのか?』
『今は無いと思う。』
ブラットは黙ってる。
『だって、、よく話してたじゃん。あんたはあたしがあそこに来たときを覚えてたんでしょ?あたしは全く覚えてないから、あんたのほうが絶対年上だよねって。でも、、近いうちに出る。』
ブラットの背中のあざは血で見えなくなってた。
『そうだな、、、俺たちだけだな。』
ブラットはしゃくりあげた。
『なんでなんだ、、、?おれ、、なんかしたか、、、?なにかした、、、なら、、すぐに、、はんせい、、するから、、、よ、、おどなにだけはさぜてぐれよぉっ‼‼』
ブラットは頭を抱えて叫んだ。あたしはたわしを拾いその場を黙って去った。
あたしは絶対に背中を見ないようにシャワーを浴びた。早々とシャワーを終え着替えようとした。あたしは目を閉じて深呼吸をする。やっぱり現実を受け入れなきゃな。あたしは唱えるようにつぶやく。背中を鏡に向けぐるっと後ろを振り返り、目を開ける。
何も無い。しいて言うなら、ケンカのキズがいくつかあるくらいだ。
ホッとする。同時にあたしはこれから”天使の羽”に追われ続けるのかとも思った。
ショーンは泣きながら1人で帰りました。
後ろからこっそりジョーカーはついて来てましたが。




