あたしVSジョーカー(口で)
『はい。どうぞ。』
あいつはあたしを椅子に座らせてくれた。しゃくだ。
『このお店、フレンチトーストが美味しんだってよ。』
あいつは座りながら言った。
『ふれんちとーすと‼』
あたしは思わず言ってしまった。あいつは笑ってる。
『欲しいの?』
あいつはなぜか嬉しそうに言った。
『いらん。あたし今日は水だけにする。水はお金いらないんだって最近知ったんだ。』
あたしはそう言った。あいつに貸しなんて作らない。
『ふーん。ここのフレンチトースト美味しいんだってよ。ものすごく。柔らかくて甘いんだって。しかも君は城下町から出られないからもう、食べれるチャンスはないんじゃないかな~?』
こいつ‼憎たらしい‼しかも、となりの人がめちゃくちゃ美味しそうにふれんちとーすとを食べてんの!
あぁ、、、どうしよう、、、!
『ご注文はお決まりですか?』
女の人がやって来た。明らかにあいつをガン見してる。あいつは気がついてない。
『フレンチトーストください。』
あいつ、勝手に注文しやがって。
店員さん、騙されないで~!こいつ中身は悪魔だよ~!
『あっ、あなたは、、、?』
この店員さん、頭がぼーっとしてる。
『いや、俺はお腹空いてないから。』
あいつは普通に言った。
『あっ、、、かしこまりました、、、』
店員さん、戻ってコーイ。
『さて、、、』
頭がどっかいった店員さんが去ったあと、あいつが言った。
『この前の質問に答えてもらおうか。アレキサンダーって誰?』
来た。なんて答えよう?
『どうしてそんなにしつこく聞くの?』
逆に質問してみる。
『気になるから。』
あいつ、即答。
『別にあんたには関係ないよ。』
これでどうだっ?
『関係ないってことは知っても大した問題じゃないよね?』
むぅっ、、、言い訳が見つからん、、、
『、、、言わなきゃダメ?』
あたしは思わず言ってしまった。
『知りたいな、、、君のことなら。』
あいつは小声で言った。鳥肌が立つと同時にアリスの記憶を思い出した。あいつ、ストーカーみたいなもんだった。
『あんた、ストーカーみたいだね。』
言ってやった。どういう反応するかな?
あいつはふっと笑った。
『ああ、、、よく言われるし自覚はある。まあ事実だしね。君らのこともよくつけてるし。』
ん?ちょっと待って、、、君”ら”?
『君らって、、、』
『ああ、リンジーちゃんとかナターシャちゃんとかもつけてる。ブラットくんやショーンくんもつけてることはあるけど、2人はめったに外に出ないしね。』
こいつ最悪っ‼みんなに警告しなきゃっ‼アリスだけじゃなかったんだ‼
『パトリックは?』
あたしは聞いた。できる限り時間を稼ぐ。
『興味ない。』
あいつは急にぶすっとした。
『あとさ、君は時間を稼ぐつもりかもしれないけどそうはさせないよ。俺の質問に答えてもらおうか。』
あぁ、、、
『あんたはどう思うの?誰だと思うの?』
必殺質問返し‼
『そうだな、、、君のボーイフレンドとか?』
『は?バカじゃん。』
思わずつぶやいた。
『じゃあ、、、』
あいつが言いかけたとき、ふれんちとーすとがきた。
あたしは嬉しくて頬張ろうとした。でも、歯で噛み切る前に止めた。
あいつは憎たらしいことにニコニコしてる。
なんなんだこいつ。
『なんでさ、あたしたちを見ていつもニコニコしてんの?』
あたしは食べる前に言った。
『ん?面白いから。』
面白い、、、?意味わからん。こいつのツボが。
まあいっか。あたしは食べ始めた。
あいつはあたしを見ていた。あたしはできる限り無視した。
『まあ、いいや。アレキサンダーは誰なのか聞くのはやめるよ。』
あっぶねー‼良かった‼逆にあたしのほうがいろいろ知れたな。
この勝負あたしの勝ちだな!
あっそうだ、、、聞いてもいいのかな?
『あのさ、、、一つ聞きたいんだけど。』
あたしは水を飲んだ。
『何?』
あいつはあたしがこれから何を聞こうかさぐろうと言わんばかりにあたしを覗き込んだ。
『ヴァンパイアってさ、動物の血を飲める人と飲めない人がいるんでしょ?あんたは、、どっち?』
『ああ、なんだ。そんなこと?』
あいつは少しホッとしたような顔をした。何か聞かれたくないことでもあるのかな?
『俺はどっちも大丈夫。それがどうかした?』
そうなんだ、、、
『動物の血っておいしい?』
どうでもいいことだけど。あいつもふふって笑った。
『そうだな、、、美味しくはないよ。一応ある程度は満たされるけど。でも人間の血のほうが美味しい、、、』
あいつは言った。あたしの反応を楽しむようにあたしを見つめてる。あたしは普通を装った。
『若い人ほど新鮮で美味しいんだよね、、、』
あいつはあたしを怖がらせたいみたい。負けてたまるか!
あたしの表情を散々楽しんでから、あいつは立ち上がった。
『さあ、行こうか。君と話せて楽しかったよ。』
『楽しかったってあたし、別に大した話なんて、、、』
そう言いかけたけどあいつは微笑むだけで何も言わなかった。
嫌なのはあたし自身そこまであいつを嫌ってないことだった。むしろ、あいつが神崎さんだったころの名残りで少し安心してしまう。
本当自分が嫌になる。あいつはあたしの親を殺したのに、、、
眠い。あたしはあくびをした。またあいつに笑われた。
『君を城下町に送るまで、寝てていいよ。』
『うん、、、』
あたしは目をかいた。悔しいけどそうしよう。あいつはあたしを抱き上げた。あたしはあいつの体にもたれかかった。あいつはあたしが寝やすいように体を動かしてくれた気がした、、、
『何してるの⁈どうして、、、?』
”あたし”の部屋に窓から彼が入ってきた。
『なんか、君に会いたくなって。ダメだった?』
彼は声に不安をにじませてる。
『今日は父がいるの、、、!』
”あたし”の声は震えてた。
『おいっ!だれかいるのかぁっ⁈』
部屋の外からあの人の声がした。
『いって‼早くっ‼』
”あたし”は小声で叫んだ。
彼は窓を出た瞬間、消えた。
『アリス、、、』
あの人は勝手に”あたし”の部屋に入ってきた。お酒を飲んだのね、、、
『誰かいたのか?男か?ん?』
”あたし”は黙ってた。何を言っても変わらない。あの人が”あたし”に近づき、頬を殴った。
『っ、、!』
いつものことだ。”あたし”は自分に言い聞かせた。
あの人は”あたし”をベットに押し倒した。抵抗したら容赦なく殴られる。抵抗しなくても殴られるけど。あの人は笑いながら、”あたし”にのしかかった。今日はいつもに増して酔ってるから少し長いかもと思った。あの人は”あたし”の服のボタンを一つずつ外していく。ここからは自分との戦いだった。様々な気持ちが私を襲ってくる。あの人に対する嫌悪、自分の劣等感、誰も助けてはくれないという無力感。そして今はアレキサンダーに対しての申し訳ない気持ち。いつも同じなのに、アレキサンダーにに対する気持ちが芽生えて自分にされてることがもっと辛くなった。
涙が”あたし”の頬をつたった。あの人は気づきもせず、いやらしく笑ってる。
『さてと、、、』
あの人がそう言った時だった。
あの人が吹っ飛ばされた。”あたし”は何が起こったか分からなかった。そしたら誰かが”あたし”にコートをかけてくれた。”あたし”はコートと一緒に彼の匂いに包まれた、、、、
『はっ‼』
あたしは起きた。”あの人”って言うのは、アリスの父親だった。怖くて震えが止まらない。抵抗ができないなんて。それにアリスの気持ちが分かるからなおさら辛くて、自分の価値がないように思えて、、、
『、、、イリーナ?』
あたしのすぐ隣には、”アレキサンダー”がいた。
『、、、』
何も言えなかった。
『君を連れて走ってたとき、君が夢にうなされ始めて。それがどんどんひどくなったから一回公園に来て、君をベンチに寝かせたんだ。』
”彼”はそれだけ説明してくれた。
あたしは自分の震えを止めようとしたけどできなかった。寒いわけじゃないのに。
”彼”はあたしにコートをかけてくれた。いつもの黒のコートじゃなかった。灰色だった。
”彼”のコートは妙に安心した。夢の中でもアリスは最後、コートと”彼”の匂いで安心したからかもしれない。次第に落ち着いた。
あたしはこいつにコートを返した。
『いいよ。あげる。』
こいつはそう言った。
『、、、ありがとう。』
小さい声であたしはつぶやいた。
『そんなにひどい夢だったのか?』
あいつは言葉を慎重に選んだみたいだ。
『うん、、、まあね。』
あたしは言った。
『、、、泣くほど?』
あいつは言った。あたしが頬を触ると涙が流れた痕があった。
あいつはどんな夢か知りたそうな顔をしてた。言うつもりはないけど。
『あたしは平気。、、、ありがとう。ここはじょうかまち?』
『少し離れてる。女王の城の入り口までなら送れる。』
あいつは短く言った。
『そう、、、分かった。そこまで送って。』
あたしは言った。
あいつはあたしを抱き上げた。あたしはコートを着てるけど、あいつの身長が高いのもあってぶかぶかだった。
あいつは走り出した。風を切り、まるで周りのものがあたしに襲ってくるかのようだった。




