キャビテ
お城のべっとはふかふかだった。
女王様からはお城内なら好きに歩いていいと言われた。
あたしは目が覚めてぼーっとしてるところ。
まだ朝の光はぼんやりと出てる程度だった。
あたしは少し散歩しようかなと思い、起き上がった。
部屋を出るとすぐ庭につながっていた。花がたくさんあってきれいだった。
あたしはしばらくしゃがんで花を見つめていた。
鈴の音が聞こえた。
あたしは振り向くと、妖精たちがいた。
『あなたたちのおかげだわ。今あたしが安心してここにいられるのは。ありがとう!』
妖精たちはまた笑って、嬉しそうにあたしの周りを飛び回った。
『おはよう、イリーナ。』
後ろからパトリックが来た。
『あっおはよう。よく眠れた?』
『ああ、とりあえずね。あのさ、、、』
パトリックは何かを言いたげな顔をする。
『なに?』
『君が答えたくなければいいんだけど、、、君はあの夜ジョーカーと何かがあったんだね。』
やっぱり見透かされてた。
『なにがあったの?』
下を向いたあたしの顔をパトリックは覗きこむ。
『、、、別に大したことじゃないんだ。ただ、衝撃が大きくて、、、』
あたしは慌てて言った。妖精たちがその様子を不安そうに見ている。
『なに?』
答えなくてもいいってさっき言ってたのに、なんか答えなきゃいけない雰囲気だ。パトリックはどんどん近づいてきた。
『答えなきゃダメなの?』
『、、、僕は知りたい。』
『知ったところで大した問題じゃないよ。』
『知りたいんだ。』
パトリックはなんでそこまで知りたいの?
そう聞きたかった。
パトリックはそれを察したみたい。
『ごめん。答えなくていいって言ったのにね。』
パトリックは少し離れた。
『いいよ。気にしないで。』
あたしは戸惑った。パトリックがこんなにしつこく聞いてくるなんて。
そもそもあの行為でなんで自分がこんなに動揺してるのかもわからなかった。あたしは動揺しすぎなのかな?
『もう一回寝て来るよ。』
『分かった。おやすみ。』
あたしは言った。
パトリックがいなくなったあと妖精たちがあたしのところに近づいてきた。
『、、、急に人に口づけされたら、みんなショック受ける?』
あたしは妖精たちに聞いた。
妖精は少し首をかしげたあと頷いた。
『おはよう。皆さん、よく眠れた?』
朝ごはんを食べたあと女王様がやってきた。
『ここのべっとはふっかふかだな~‼料理もうめぇし!』
ブラットさ、なんで朝からそんな声でかいわけ?
女王様は微笑んだ。
『それは良かった。、、、もし皆さんがよろしければ今からあなた方の質問に答えようと思います。、、、アージュドールについてです。』
みんなはシーンとなった。
『みんなは無事ですか⁈』
リンジーが即座に質問した。
『サーシャさんは無事だと連絡が入りました。なんでも彼女を甘くみて、彼女の見張りが一人しかいなかったそうです。』
リンジーはほっとした顔をした。
『サーシャって誰?』
あたしが聞いた。
『ママよ‼』
みんな肩の力を抜き、頬の筋肉もゆるんだ。
『ですが、、、それ以外の人は、、、捕まったと思われます。』
全員固まった。
『、、、ジョーカーはアージュドールの奴らを殺したりはしないって言ってたそうです。
あいつらの目的はなんですか?』
ナターシャが立ち上がる。
『まだ現段階では確定できませんが、キャビテを作ろうとしてるのではと、、、』
きゃびて、、、
『キャビテというのは、最初に古い黒魔術で相手の"自我"を封じ込めます。そうして相手を抜け殻のようにしたところで、また違う黒魔術で相手の体の中に指令を入れます。そうすることでその人の体のパワーのまま、指令を淡々とこなす"ロボット"のような存在が出来るんです。』
話が一割も分からない。
『その手順で敵を殺せというふうに指令を入れられることでできた兵士をキャビテと言います。』
女王様は言葉を切った。
『じゃあ、そのキャビテにされるんですか?
、、、彼らは。』
パトリックが言った。
『ええ、、、おそらく。しかも本当に強い人のみ厳選されるでしょう。』
女王様は答えた。
『ですが、救う方法もあります。キャビテに思い入れのある言葉を繰り返すんです。例えば、家族の名前や友達の名前などです。そうすると魔術で封じ込まれた"自我"が反応して解放されたとき、侵入してきた"指令"もはじき出されます。』
『殺されはしねぇってことか?』
ブラットが言う。多分ブラットも分かってない。
『ええ。殺してしまうと筋肉などの働きが停止してしまうので意味がないんです。持ち主を生かしておくことで成立するんです。』
沈黙が流れた。
あたしは正直まだわからなかった。でもみんなが殺されることはないのね。それだけでもほっとした。
『女王様。お話はお済みに?』
低い声が響いた。ブラットを怒ったあの声だ。
その姿をみてちょっとびっくりした。上半身はただの人間なんだけど、下半身が馬がみたいだった。弓矢を背負っていて毛はあたしの髪と似たような色だった。
『ダンスト。ええ、とりあえず終わったわ。』
女王様が答えた。
『そろそろお仕事が、、、』
『ええ、そうね。、、、何かあれば、この人に言ってください。それではごきげんよう。』
女王様は軽く会釈をしてどこかへ行った。
『えっ~と、あたしたちってこれからどうすれば、、、?』
あたしはダンストという人に聞いた。
『君たちが入る問題ではない。アージュドールのメンバーは我々が救う。』
その言い方にムッときた。まるであたしたちが全く関係ないみたいじゃん。
『ダンストだ。何か困ったことがあれば、聞いてくれ。』
『、、、武器庫に行ける?』
あたしは聞いた。ダンストは少し不快な顔をした。
『ごめんなさい。あたし環境的な問題でけいごが使えないの。悪気はないんだけど。ブラットやショーンもそうよ。』
あたしは一応説明した。ダンストは少し納得したような顔をした。
『そうなのか。分かった。敬語じゃなくてもいいだろう。』
ダンストが言った。なんじゃ、上から?
『武器庫も、、、いいだろう。私が案内しよう。ただし別にそんなに面白いところでもない。』
やった。




