リンジーの行方
『この火は白魔法使いが使う防衛呪文だ。』
パトリックがふとんについた青い火を見ながら言った。
『じゃあリンジーが襲われたときに?』
ナターシャもその火に近づく。
『ああ、おそらくな。』
パトリックが立ち上がった。
『ぼーえーじゅもん。』
ショーンがつぶやいた。
『自分を守るために使う呪文。』
ナターシャがショーンに言った。
ショーンは納得したような顔をした。
『リンジー、さらわれたのかな?』
ナターシャは壁の血を見つめる。
『この血がリンジーのものとは限らないよ。』
あたしが言った。
『ごめん。僕は鼻がいいけど血は嗅ぎ分けられないから。そこはヴァンパイア専門だ。』
パトリックは申し訳なさそうだ。
『あんたが謝ることじゃないよ。今あんたが敵の匂いをかいだからこそあたしたちは安心してここにこれだんだもん。』
あたしはパトリックに笑いかけた。
『でも、俺が思うにリンジーがさらわれた可能性は低い。』
ブラットも血を見る。
『まずさらわれたわりには少ない。俺の経験上、自分を守れるくらいの余裕があったならさらわれるときにもっと抵抗するはずだ。そのときにもっと殴られたりするだろうし、そうじゃなくても暴れたときに怪我したところから血が飛び散るだろう。でもこの量なら敵の血の可能性が高い。』
さすがブラット。そこだけ頼れる。
ナターシャはブラットの例えに唖然としてたけど。
『なあ!ここになんか書いてある!』
ショーンが指差して言った。
ショーンの指差す先はリンジーのべっとの柱だった。
『私はシェルターにいる?』
あたしより先にナターシャが読んだ。
『シェルター?』
ナターシャはパトリックを振り向いた。
『ああ、大型の魔法生物が来たときに集団で避難する場所だ。まあ今は大型生物なんか襲ってきてないから誰もいないだろうな。だからそこを選んだのかもしれない。』
コンコンとわずかに窓を叩く音がした。あたしは窓の近くにいたから分かった。
窓の外には小さいひかりの固まりが浮かんでた。
『さっきの妖精だ!』
あたしは叫んだ。
『ブラット、明かりを消して。妖精には強すぎるんだ。』
ブラットはパトリックに言われて明かりを消した。妖精は三人いて、窓の割れたところから入ってきた。
『妖精さんこんばんは。ごめんね。悪いんだけど今はあたしたち友達を迎えにシェルターに行かなきゃいけないんだ。だからあなたたちに会えて嬉しいんだけど、、、』
妖精たちはあたしの手の上に浮きながら首を振った。
『でも友達が、、、』
また妖精は首を振った。
『まさか、シェルターに行ってはいけないってこと?』
ナターシャが近づいた。妖精たちはうなずく。妖精の1人が何かを思い出したような顔をして他の妖精に指示したあとべっとの下にもぐりこんだ。
出てきた妖精たちは重そうに何かを運んだ。
あたしは受け取ったけどそれが何を意味するか分からなかった。
『ノート?』
あたしはパラパラとめくった。あたしが見たことがないような字だ。
『魔法語だ。呪文用の言葉。』
パトリックが覗き込んだ。
一つだけ読める字を見つけた。
『ひじょう、、よう、、、』
その字のすぐ下に読めない字が書いてあって、その字はぐるぐるとペンで囲んである。
『これが必要なの?』
あたしは妖精に聞いた。妖精たちはうなずいた。
『どーでもいいけどよ、シェルターに行くのがあぶねえなら早くリンジー助けねぇと!』
ブラットが階段へと向かった。
妖精たちはものすごいスピードであたしたちの間を駆け抜けブラットの前に立ちはだかり
体全部で"止まれ"のポーズをした。
『なんだよ?早くリンジー助けねぇと行けねえんだよ!邪魔すんな!』
ブラットは妖精たちに噛み付いた。
妖精たちはどかない。
『なんで?助けなきゃ!』
あたしも妖精たちに言った。
『まさかリンジーは違う場所にいるのか?』
パトリックが聞いた。妖精たちはうなずいた。
『リンジーの場所知ってるの?』
ナターシャが言った。
妖精たちは激しくうなずいた。でもまだとうせんぼしてる。
『案内してくれるんだよね、、、?』
あたしは聞いた。また激しくうなずく。
『でもそこをどかないと、あたしたち行けないよ!』
あたしが言った。妖精たちは反対方向に飛んで行って窓を指差した。
『ああ、なんだ。そういうことかよ?まあそっちの方が早いけどよ。』
ブラットは窓を開けた。
『えっ屋根の上歩くの?』
ナターシャはびっくりしてる。
『ああ、お前苦手なのか?屋根の上歩くの?』
『苦手とかその前に歩いたことすらないわ!』
ナターシャが言った。
あたしとブラットとショーンは顔を見合わせた。
『えー!お前人生つまんないな!』
ブラット、どストレートすぎ。
『普通ないでしょ⁈パトリックだってないはずよ‼』
ナターシャはあわててる。
『いや、残念ながら僕はあるんだ。回数は少ないけど。』
パトリックはニヤッと笑った。
『狼の血が騒いで。』
パトリック、、、
『もうっ!パトリックふざけないでよ!私なにがなんだか分からないわ!そもそもなんでここが襲われたのかもわからないし、パトリックは本当の狼みたいに鼻がいいしね!』
パトリックは苦笑いした。
そうか。ナターシャはアージュドールのこともバラリオのことも知らないんだ。パトリックが半分狼人間っていうことも知らない。
『あとで教える、、、』
あたしはもじもじしながら窓をまたいだ。




