フリーズドライドウルフ
きみの怜悧な前歯が甘く僕の指の腹を刺す
そんな仕草を振り払えずに僅かに傷み痛む
口先ばかりはまるで銀世界の狼だ
特効薬に狼の干物の粉末があったら
僕はきみを丸呑みしてしまうだろう
そして石ころを五臓六腑に詰め込んで
永遠の湖底へと沈んでいってしまうだろう
きみとともに
僕は犬歯を失って
きみは検死を断って
沈黙の羊水のなかで
ふたりの愛は邪魔されずに
狼の肝煎りエスプレッソが
僕を貪婪に惑溺にする
野性の微粒子に僕はつつまれて
理性の素粒子をきみに託す