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第一回 ~まず、ライトノベルを書く前に何をすればいいのだろう?~

 ここは某県某市、夢と希望あふれるヤングボーイ・ヤングガールの通う公立裸野辺高校。

 今まさにその学舎に向かって、一人の少女が登校している真っ最中であった。



「むむむ、むむむ……」



 彼女は歩きながら、手にした小説をのめり込むようにして読んでいた。

 淡く茶色に脱色した髪(校則違反)を左右に分け、やや広いおでこを露出させている。今、そこにいっぱいにしわを寄せていた。



「ほほう、これはなかなか……ここでこの展開が……邪炎流気慟哭波ァァ―――――ッ!」



 突如、少女は掌を正面に向けて絶叫した!

 他の登校中の少年少女がギョッとした顔を彼女に向ける。

 しかし彼らの気味悪そうな視線に構うことなく、少女は再び本の世界に入り込んで行った。

 ひとしきり読み終えると、学校についた。

 本をぱたんと閉じ、彼女はアツい物語を読み終えたあとにありがちな高揚感と満足感に身をゆだねつつ、にこにこしてつぶやいた。



「へええ、ライトノベルって面白いんだなー。字ばっかりの本なんか堅苦しくって敬遠してたけど、こんな漫画みたいに面白い本があったんだにゃー!」

「フフフ……後輩、君もやっとそれに気付いてくれたかね?」



 不意に誰かが彼女の肩に手をかけた。

 振り返ると、同じ読書部の先輩がうれしそうに目を細めて笑っている。

 眼鏡をかけた背の高い男で、一見して文学少年という感じだ。



「誇張されまくったキャラクター、激流のようなストーリー、そして節操のないメディアミックス!

 豊かなHENTAI文化が根付く国・JAPANでしか生まれ得なかった究極のエンターテイメント小説、それがライトノベルなのだよ」

「ほへー。後輩もびっくりですよ、まさかこんな世界があったんだって。それで先輩……わたしにも、こんなスゴまったストーリーが書けるでしょうか?」

「うむ、それは君次第だな。放課後、図書室で会おう!」

「ところであの、先輩、鞄を持っておられないようですが」



 彼は胸を張って手にした包みを見せつけた。



「教科書なんぞ全部学校に置いときゃあいいんだよ! 学校に持ってくものは弁当オンリー、それがマイライフ」

「やだ……先輩、カッコイイ……」



 後輩は思わずドキがムネムネしてしまった。



 放課後。

 後輩は読書研究会の部室として使われている、学校の図書館へやってきた。

 すでにそろった部員はそれぞれ最近読んだ本についてのアツい評論をぶつけあっている。

 その中に先輩の姿があった。



「ちわっす」

「お、来たな」



 彼はホワイトボードを引っ張ってくると、ペンのキャップを抜いた。



「では早速第一回、ライトノベルの書き方について講義しようではないか!」

「いえーい! ブォーブォーブォー」

「図書館でブブゼラはやめたまえ」



なれない講座 第一回

~まず、ライトノベルを書く前に何をすればいいのだろう?~



「では後輩、君はこれについてどう思うかね?」

「うーんと……あたしが持ってる『ライトノベルの書き方』みたいな本には、とにかくまず書いてみよう」って……」


 先輩は彼女から教本を奪い取るや否や、図書館で飼っているヤギに食わせた。


「そんな本はこうだ―――――!(ムッシャムッシャ)」

「あたしの本が―――――! 千六百円もしたあたしの本が―――――!」

「ライトノベル作家を目指す者が第一にやらねばならんのは、こんなクソ教本を読むことではない。いや、小説を書くことですらない!」

「えええええ? だって、書かなきゃ作家にはなれないと思うんですけど」



 先輩はフウヤレヤレ! という態度も露に首を振り、そして断固たる口調で宣言した。



「いいかね、君がまずやらねばならんことはだな、『大ヒットした自分のデビュー作に実写映画化の話が来た時に一番カッコ良く断る方法』を考えることだ」

「えっ? ……あの……ええええええ?!」

「何だね?」

「あの先輩、それって捕らぬ狸の皮算用とかそういう……そもそもあたし、デビューしてないし……」

「まあ、想像してみたまえよ。はい目を閉じて」

「え、ええ……閉じました」

「ここは記者会見の会場だ。君のデビュー作『僕は友達が白菜』の実写映画化決定を知らせるポスターとか垂れ幕とかかかっている」

「と、友達を鍋で煮たり浅漬けにしたりするのはちょっと……」

「壇上の席から君は、詰めかけた記者を見下ろしているのだ……現役女子高生作家、なんてテロップが出たりして」



 後輩はうっとりしてその様子を想像した。



「き、希代の才能を持つ美少女女子高生作家ですって?!」

「そこまで言ってないけどまあいい。「アニメ化について何か一言!」飛び交う質問に、君は意を決して言うのだ。〝小説はあまり読まないんですがこの作品は大好きです〟とのたまう、お前本はあまり読まないというより字が読めないレベルだろというような頭の悪そうな、聞いたこともないアイドルが学芸会レベルのヨタヨタの演技をする、作る前から駄作とわかっているような映画、というか売り出したいアイドルのプロモーションビデオが作りたいだけなんだろ実際、たぶん監督も制作者も出演者も含めてここに俺の作品のファンは一人もいない、言われたからやってるだけ、に自分の作品を使われることはお断りします。と!

 いくらお金を積まれても作品を売り渡すことはできない、と高らかに宣言する君!」

「あ! なんかカッコイイかも知んないです先輩!」

「そうだろうそうだろう。ちょっとやってみたまえよ」



 後輩はテーブルの上によじ登ると、腰に手をやりもう片方の手でばっさりと相手の要求を切り捨てるかのごとく振って言った。



「映画化の話はお断りします!」

「カッコイイ! カッコイイぞ後輩―――――!! あんた作家の鑑やー!」

「えへへ……そ、そうですかね?」

「そうだとも、これで君も作家への第一歩を踏み出したな、喜ばしいことだ」

「ありがとうございます! あたし……あたし、これからもずっと先輩についてきます!」

「ラノベ作家への道は険しいぞ」

「覚悟の上でっす!」

「よし、では次の段階に進もうではないか!」

「ところで先輩、何であたしが立っているテーブルの下に仰向けに寝そべってこっちを見上げているんですか?」

「気にしたら負けだ」



 彼が携帯でムービー撮影を始めたので、後輩はとりあえず花瓶をその顔面に投げ落とした。



・第一回のまとめ

実写化だけは絶対に許さない! 絶対にだ!



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