エピローグ
「唯…大丈夫か?」
アイスが消えると同時に、止まっていた時間が動き出した。
僕は、隣りでうずくまっている唯を揺すった。
「う…ん、なんとか…。
…って、歩!!
どこもなんともない?
生きてる?!」
とたんに唯はガバッと起き上がると、僕の顔をみて問う。
「…生きてるよ。
いいから、まず落ち着け。」
「ごめん、なんか…パニクっちゃって…。
歩があのままどこかに行っちゃう気がして…。点滴引きちぎってきちゃった。あはははは…。」
「あははじゃないだろ…。
普通点滴引きちぎってくるやつがどこにいる。」
…でも、唯がいなかったら、アイスも現れなかったかもしれない。
そしたら、僕は今こうやって唯と話す事は出来なかっただろう。
「…って、唯…記憶…僕のこと分かる…の?」
「うん、さっきね…。
好きだったって言われた時に、全部思い出したの。
…ありがとう。
あたしも…歩のこと大好きだからね!」
彼女は微笑みながら、さらりと言った。
「う…ん。
…って、お前左腕平気なの?」
僕は照れくさくて、話をそらした。
「うん。痛くはないけど、もう動かないって。しょうがないよ。自業自得だもん。」
にっこりと笑うと、彼女は僕の手をとり言う。
「ずっと…そばにいてね…。」
僕は何度もうなずき、彼女をひきよせた。
アイス…ありがとう…。
君に会えてよかった…。
僕は、たくさんのものを君からもらった。
本当にありがとう…。
失われた記憶は、取り戻された。もう欠けることは二度とないだろう。永遠に…。