第七話 ベストフレンド
病院は大通りに面していて、夕方のせいか交通量は増していた。
僕の足は病院を出ると、意思に反して道路に向かって行く。
―ああ、僕の人生はこういう終わり方をするのか…。
別に怖いという感情はなかった。
最後に、彼女の笑顔がみれてよかった。
道路に足を踏み出した途端、後ろで彼女の声がした気がした。
「歩…!行かないで!あたしを…、一人にしないで!!」
やだなぁ…幻聴かな…。
僕は苦笑を浮かべ、足を進める。
大型のトラックがスピードを緩めることなく目の前にせまってきていた。
「歩ー!!」
…ドンッ
1…2…3…数秒がたっただろうか。
来るべき痛みはまったく来なかった。
恐る恐る目を開くと、目の前には、横でうずくまる唯と悪魔…アイスだった。
目の前にはやはりトラックがあった。
だが、ギリギリのところで止まっていて、時間が止まっているかのように、何もかも静止していた。
「なんで…?」
わけが分からない僕はつぶやく。
「俺が説明する。
俺は、今時間を止めた。
本当なら規則違反なんだがな。」
そういって、アイスはニッと笑った。
「俺は、昔人間だった時、親友に恋人を奪われた。
だから、愛や友情なんてガラスのように壊れやすいものだと思っていた。
アンタが川で逃げた時だって、やっぱり人間なんてそんなもんだと思っていた。
だけど、病室で毎日、毎日祈るアンタをみて、もう一度人間を信じてみたくなった。
そして今日まで見ていた。」
そこでいったん口を閉じると、アイスはニヤリと笑った。
「短い間だったけど、楽しかったぜ。
俺は、良いものみれて嬉しかった。
今度こそ、もうニ度と会うことはないさ。
幸せにな…。」
そういって、アイスは消えた。
僕の命を取らずに…。
ありがとう…アイス。君は悪魔でもなんでもない。僕の大切な友達…。