第四話 悪夢
ゴーン...ゴーン...
深夜二時、聞き慣れた時計が部屋に響いた。
僕は何度も寝返りをうっていた。
なんだか、胸騒ぎがする…。
異様な空気を感じる中…、突然、閉まっているはずの窓があき、カーテンが風邪に揺られてたなびいた。
そう、まるであの時と同じように…。
「よぉ、歩。」
聞き覚えのある声が窓の方から聞こえてきた。
悪魔…アイスだ。
「慣れなれしく、名前を呼ぶな。」
僕は冷たく言い放った。
だが、アイスは気にとめる様子もなく、たなびくカーテンを爪で引き裂くと、ニヤリと笑った。
「そんなこと、いっていいのかな?
折角、面白い話をしてやろうと思ったのに。」
「…もう帰ってくれ。…もう二度と僕の前に現れないでくれ。」
「…ほぅ。そうか。ならば、よい。
ただ、一つだけ言っておく。アンタのことだからどうせ聞いてなかったと思うし。
約束の期間は、一年だったが、三日間に変更だ。
俺様は、気が短いもんでね。」
そういうと、より一層ほくそ笑んだ。
三日…?じゃぁ…、あと三日で僕は死ぬのか…?
「あ、そうそう。
最後に一つ言っとくけど、アンタさ、たまにはニュース見た方がいいんじゃない?
まぁ、俺様には関係ないけど。」
そう言って、悪魔は消え去った。
今度こそ、僕が悪魔に会うのは、これが最後なんだろう…。
それから数時間が経った。
結局僕は、一睡もすることが出来なかった。
悪魔が言っていたことが、ずっと頭の中で渦を巻いていたのだ。
僕は、まるで操り人形のように、誰かに操られるようにテレビをつけた。
だが、次の瞬間、僕の目に飛び込んで来たのは、あまりにひどすぎる、飛行機の墜落事故の様子だった。
生存者は、…ゼロ。
昨日の夕方に、起きた事故だったようだ。
そう、ちょうど、僕が病院の屋上でのんきに寝ていたときだ…。
つまり…、惟の両親が海外に戻ったときだ…。
まさかとは、思いつつも、僕は胸騒ぎがより一層ひどくなっていた。
だが、次の瞬間、飛行機に乗っていた乗客の名前が流れた。
僕は、いてもたってもいられず、家を飛び出して、惟の入院している病院に向かって走り出した。
惟に、このことを知らせてはいけない。
惟は、このことを知っては…。
赤信号だろうが、車が来ていようが、構わない。
僕は、無我夢中で走り続けた。




