プロローグ
ねぇ…、いつになったら、君は僕の方を振り向いてくれる?
どうしたら君は、僕にもう一度笑いかけてくれる?
どうしたら…僕は君を救える…?
命をかけてでも、君を救いたかった。
だけど…、君は…、もう二度と僕のことを歩と呼んでくれないんだね…。
永遠に.....。
幼い頃のトラウマで、水辺が苦手な僕は、雨で増水した川の中、流される君を助けることが出来なかった。
恐怖にかられ、足がすくみ、手を差し延べることも、助けを呼びに行くことも出来なかった。
ただただ、君が流れていくのを、見ていることしか出来なかった。
どうして僕は、こんなにも無力なんだろう。
君は、僕がおぼれた時、助けてくれたのに、僕は君を助けることが出来なかった。
こんな情けない僕のことを、君は許してはくれないだろう…。
もう昔のように話しかけてはくれないだろう…。
もしかすると、僕のことを忘れてしまっているかもしれない…。
それでも、僕は、君が好きだ。
切ないくて、苦しくて、たまらない。
早く、この気持ちを伝えたい。
たとえ、君が僕のことを忘れてしまっても、僕は…。
小さな病院の個室で、今もなお、君は意識を失ったまま、目を覚まさない。
たとえ、意識が戻ったとしても、後遺症が残るかもしれない。
それでも、君が生きていることにも変わりはない。
君を想う、この気持ちにも変わりはない。
だから、僕は毎日、彼女の手を握り締めて祈る。
『今日こそ、彼女が目を覚ましますように…。』