今日の終わりの癒しは遠く
書類仕事を終わらせたい
書類が目の前の机に、山積みになっている。
どうにか夜までに終わらせたい。
でも、難しいんだろうな。
机の横に置いてある眠気覚ましのコーヒーをのんで、ため息。
僕は、とある国の中心部にある、お城の中に務めている。
働いてるところでは、民たちの個人情報をとりまとめているのだが、これが終わらない。
数年前に恋愛小説が大流行した影響で、国中のカップルがハッスルしてしまったらしい。
ここ数年、びっくりのベビーブームがおきている。
国民の数が多くなるのは別にいい。
けど、それにかかる作業が多くなるのはよくない。
おかげでここ1年くらい忙しい日が続いている。
それに加えて、他にも忙しい理由はある。
僕は、眠気覚ましのガムとかいう最近できた、清涼感のある新しい食べ物をかみながら頭を抱える。
この国は色々あって、数年ごとに各地の環境ががらっと変化する。
地面の下に通ってるエネルギーの道が、活性化したりしなかったりが原因だ。
定期的に、魔力暴走災害が起きて、暴風が吹き荒れたり、火山が噴火したり、土地が揺れたりするのだ。
それにともなって民たちがよく、生活する場所を大移動するものだから、僕のような仕事をする人がいないと大変になる。
新しくやってきた人、出ていった人の数、家族構成、収入なんかも把握して、生活サービスの適用とか書類の配布とかの人に情報をまわす。
僕たちは縁の下の力持ちというわけだ。
そのため、仕事に誇りをもってはいる。
だが、多い。
疲れる。
終わらない。
眠気覚ましに音楽を奏でる観葉植物を使って、いい感じの音楽をかけた。
この植物は、事前に聞かせた音楽を記憶してくれるから、リフレッシュしたい時に助かってる。
そんな僕の気分転換は、夜にある。
仕事を終わらせた後、友達とともに甘味の店を巡る時間だ。
夜までやってるところは少ないけど、この国は割と他の国よりそういうのが多めだから助かる。
百年位前にグルメ小説がブームになって、その影響でこうなった。
ーー影響されやすい国だな。
国の将来が若干不安になったが、僕が考える事じゃないな。
ともかく、そういうわけですごく助かってる。
だから早く仕事を終わらせたいのだけど、書類全然減らないな。
しかもこういう時に限って「先輩、あっちでトラブルが!」と面倒が起きる。
勘弁してくれ。
そんなこんながあったけど、何とか仕事を終わらせることができた。
過労でぼうっとする頭を抱えて、仕事場から離れ、仕事仲間とともに夜の町へ繰り出した。
目当てのお店にたどり着いて、さあ食べるぞってなった時、魔法連絡機が鳴った。
遠くにいる人といつでも連絡が取れるというアイテムだ。
嫌な予感。
「先輩! 何投げようとしてるんですか。だめですよ!」
応答するのが嫌すぎて気が付いたら投げ捨てようとしていたらしい。
後輩に言われて我に返る。
過労って恐ろしいな。
ぼうっとした頭で応答ボタンを押した。
「仕事場のカギがかかっていなかったぞ! すぐに戻ってこい! その後は反省文だ!」
一瞬で後悔。
電話にでなければよかった。
上司が鬼のようなことを言ってきた。
いや、施錠は大事だし、重要性はわかるし、反省は必要だ。
でも、元はと言えば上司がしょっちゅう休むせいで、仕事にしわ寄せがきているのだから、ここは少しくらいは苛ついて、子供のような真似をしてもいいはずだ。
なんだよ有給100日ってバカじゃないの。
この忙しいときに、事前に相談もなくいきなり長期休むなよ。
電話、聞こえなかったことにしよう。
「仕事のしすぎて耳が遠くなったみたいだ。ストレスかな」
「先輩」
しかし、後輩が心配して、本気でかわいそうな目を向けてきたので、大人に戻ることにした。
冗談だといって、仕事場へ戻っていく。
今日はストレス発散できなさそうだな。
「僕一人でいってくる。みんないたってやること同じだし、最後に出たの僕だし」
ああ、貴重な癒しタイムが遠のいていく。
そんなわけで癒しのない一日が終わった。
なんでそんなときに上司かえってくるんだよ。
タイミングってもんがあるだろ。
しかも夜にくんなよ。
次の日の朝でいいだろ。
反省文30枚は、気が付いたら全部呪いの文字みたいになっていた。
でも、仕事仲間たちはいい奴だったみたいで、翌日お土産に甘いものを買ってきてくれた。
今日一日乗り越えられそうなのは、甘味のおかげもあるけど、人のやさしさがつかれた頭にしみてるせいだな。




