「お姉様、それ頂戴」と私から物を奪っていく義妹に婚約者も奪われました。義妹の欲しがる物を全て与えた結果
『欲しがる義妹』を書いてみました。
よろしくお願いします。
私はソンヌ子爵家が娘アルジェナ。
病弱だったお母様が亡くなって、喪も明けない内にお父様は恋人と、私と同い年の娘を連れて来て『今日からこの家に住む。仲良くしろ』と。
お父様はお母様と結婚する前から付き合っていた恋人がいたが、政略結婚の為に別れさせられて、お母様に恨みはあるが愛情は無かったのだと。
でも結局、恋人とは別れられず結婚後も付き合って子供も作ったらしい。
まったく、クズな父親である。
ソンヌ子爵家はお父様の散財のせいで財政は逼迫していた。お母様が頑張って子爵家を支えていたから何とかなっていたが、お父様が実権を握ったらどうなるか。
そして、その娘は私より生まれ月が後なので義妹なのだが、私の物をやたらと欲しがる。
「お義姉様、それ頂戴」
「これは私のお母様の形見のネックレスなの。だからあげられないわ」
「え〜、お義姉様は沢山持ってるんだから、一つくらい良いじゃない」
「そうだぞ、カンナは今まで辛い思いをしてきたんだ。それくらいあげなさい」
そうして無理矢理、お父様に取りあげられた。
「お義姉様、それ頂戴」
「これは私の婚約者からの贈り物なの。あげられないわ」
「良いじゃない。お義姉様には似合ってないわ。だから頂戴」
これもまた取り上げられた。
ある時はドレスを。ある時はアクセサリーを。
「お義姉様、それ頂戴」
義妹はその一言で私から奪っていく。
そうして、いつの間にか婚約者も義妹の側にいる事が多くなった。彼はデュラン・ドルナー、伯爵家の三男で、学院卒業後はソンヌ子爵家に婿入りする予定なのに。
「デュラン様、貴方は私の婚約者です。些か義妹と距離が近すぎませんか?」
「僕は君の妹だから仲良くしているんだ。変な勘ぐりは止めてくれ」
一度忠告をしたが聞き入れて貰えなかった。
そして学院の卒業パーティーでの事。デュラン様は私ではなくカンナを伴ってパーティーに参加していた。カンナにはドレスを贈ったらしいが私には届かなかった。
「アルジェナ・ソンヌ!僕は真実の愛を見つけた。君との婚約を破棄し、義妹のカンナと婚約を結ぶ」
「デュラン様、本当によろしいんですの?」
「見苦しいぞ。僕は君の様な冷たい女よりカンナの様な優しい女性と生涯を共にしたい!」
「左様ですか。婚約破棄、確かに承りました」
「安心しろ。ソンヌ子爵家はカンナと結婚して僕が継いでやる」
「ドルナー伯爵令息様は何か勘違いしていらっしゃる」
「何だと!」
「貴族家の相続は直系のみ。入婿であるお父様の娘のカンナには相続権はありませんわ。カンナと結婚したら平民ですわね」
「そんな馬鹿な…」
「それにカンナ貴女、デュラン様と結婚するおつもり?」
「え〜ヤダよ。こんな中身の無い男。それに私、学院卒業したらエドガーと結婚するんだもん」
「カンナ、エドガーって誰だ!僕は君の恋人じゃないのか!」
「う〜んとね、デュラン様は財布?」
「カンナ、言葉使いが乱れてましてよ」
カンナはドルナー伯爵令息の側から離れ私の元にやってくる。
「えへへ、もう良いじゃない平民に戻るんだし」
「もうカンナったら」
「どう言う事だ?君たちは仲が悪いんじゃないのか?」
「お義姉様、そうなの?」
「そんな話聞いた事ないわね」
「カンナ、君は僕を騙していたのか?」
「騙すなんて人聞きの悪い。デュラン様が勝手に勘違いしただけでしょ?」
「アルジェナ!婚約破棄は無しにしよう。僕は君と結婚するよ」
「それは無理ですわ。私は先程、子爵家当主として婚約破棄を了承しましたから」
「当主?」
「ええ、学院卒業と同時に私は正式に子爵を継承いたしました。私はアルジェナ・ソンヌ子爵ですわ」
ドルナー伯爵令息は力無く地に膝を着いた。
「お義姉様、そろそろ帰りましょうか?」
「そうね。ではドルナー伯爵令息様、ご機嫌よう」
ドルナー伯爵令息がこの後どうなるかなんて、どうでもいい。
カンナと二人で会場を後にした。
私達の仲が悪いなんて誰が言ったのかしら?
カンナの『お義姉様、それ頂戴』は私にとって要らない物ばかりだった。
お母様の形見のネックレスを欲しがった時も、あれはお父様がお母様に贈った物で、安物で殆ど価値の無い物。お母様も宝石箱入れたまま使いもしなかった。
それをカンナはリメイクして『貴族には安物でも平民には高級品なの。宝石そのままにデザインを新しくして裕福な平民に売るわ』ですって。
デュラン様からの贈り物のイヤリングも『これ、お義姉様に全然似合ってない!それに何このダサいデザイン。お義姉様を馬鹿にしてるわ!』って憤っていたわね。
これもカンナは同じ様にリメイクして裕福な平民に売っていた。この頃にはデュラン様はカンナとばかり出掛けていたから、私がこのイヤリングを着けていなくても気付きもしなかったわね。
ドレスも小さくて着られなくなった物やデザインが型遅れで着られない物をカンナは欲しがり、仕立て直したりレースは別に利用したり。端切れはハンカチや中にポプリを詰めてサシェにしたり。
あの子ったら器用なんだから。
私にも『よく眠れる様にラベンダーを入れてあるから休んでね。お義姉様、働き過ぎなんだもの』と言ってサシェを一つくれたわ。
これまで売った物でお金を得たカンナは『お義姉様、頂いた物を売ったお金で小さな商会を立ち上げたの。ソンヌ子爵家が後援に付いて下されば貴族とも取引が出来るわ。そうしたらソンヌ家にも利益を還元できるわね』って嬉しそうに話してくれた。
お陰で、ソンヌ子爵家も持ち直しつつある。
私が当主になってからお父様は離れに押し込めた。『ワシが子爵家当主だ!』とか何とか騒いでいたけど、貴族典範を説明したら黙った。お父様は知らなかったらしい。カンナのお母様は離れについて行った。彼女は彼女なりにお父様に愛情を持っていたみたいだ。
カンナは商会を立ち上げる時に助けてくれた人と親しくなり、学院を卒業後に平民に戻り結婚した。
私も新たな婚約者を探さなくてはと思っていたら『お義姉様、取り引き先の息子さんなんだけど、優秀で真面目な人がいるの。貴族の三男だからお婿にどう?』と紹介された。
この方はカンナが勧めるだけあって優秀な方だった。
『今は貴女に愛情は持っていないが、貴女を愛する努力はする』
中々、誠実な方のようで私も気に入っている。
義妹の欲しがる物を全て与えた結果、幸せを手に入れる事が出来ました。
Fin
最後まで読んで頂きありがとうございます。




