プロローグ
初投稿。生暖かい目で見てもらえれば幸いです。
『愛してるわ』
僕は、母のこの言葉が嫌いだ。
僕の方を見ようともせず、なんの感情もなく、ただ事務的に文字を読み上げたかのようなこの言葉が。
文武両道で、人当たりも良く、顔もそれなりにいい。それが僕、下野慧の周りからの印象だろう。何をやっても人並み以上にできるし、女子からもそれなりにモテる。欠点が見当たらないと言っていいだろう。
が、慧には一つ、かけているものがあった。『愛』である。親から本当の愛を感じたことはないし、付き合っていた女子も、ただ『下野慧』のステータス目当てだった。
そして、今回も。
「ごめん」
「・・そっ、か」
僕がその言葉を告げると、彼女は先ほどまで浮かべていた緊張の表情を一瞬で消して顔を伏せ、泣き出しそうなフリをしながら、
「私のことは、そういう目で見てないんだね」
「・・うん」
「分かった。時間取っちゃってごめんね。また、明日」
そう言って彼女は教室から出て、廊下で待っていたらしい友達と昇降口に向かっていった。そして、わざとらしく少し大きめな声で、
「サイアク。コロッといけると思ったのになー」
「ドンマイ。これでまーちゃんの『貢がせよう計画』は失敗だね」
「いやいや、まだまだこれからでしょーー」
そんなことを言いながら、遠ざかって行く。
はぁ、と深いため息を吐いて。
「寂しいな」
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「椿ちゃんってなんでもすぐできるよねー」
わたしは、『なんでも』とか『すぐ』とかの言葉が好きじゃない。
人の成功は才能がすべてだと思い込んでる人たちからの、この言葉が。
容姿端麗で、男女関係なく気さくに接し、みんなから頼られている存在。それがわたし、伊織椿の周りからの印象だろう。
なにをやっても人並みにできるし、男女問わず人気がある。欠点が見当たらないと言っていい。
が、椿には一つ、欠けているものがあった。『才能』である。どんなに努力しても『人並みより少し上』が限界なのだ。なんでもできるように見えるのは、何日も前から予習、練習してるからだ。
毎日6時間以上勉強しても、40位前後の順位しか取れない。
そして、今回も。
「42位。。。」
私は、返されたテスト結果を見ながら、教室の隅で小さく呟いて落胆する。
今回のテストは、それなりに自信があった。一学期期末考査。志望校に向けて成績を上げていかなければ、と思い夏休み中から勉強していた。
が、結果は42位と、普段とさほど変わらない順位だった。
なぜ、いつもこうなのだろうか。勉強法を変えたりとにかく暗記してみたりもしたが、どれも目立った成果はでず。
要領が悪いのだろうか?それとも、単純に記憶力の問題?いやいや、1日数時間勉強してるんだから、さすがにそれはーー
何度も繰り返してきた自問自答。結局、「次こそ」となるだけで、解決法は見つからない。
はぁ、と深いため息を吐いて。
「悔しいな」




