王
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中央広場につくと、城のバルコニーから一人の男が偉そうに何やら語っていた。男の名は、ジル・ロード・プレリアス。この国の王にして、周辺国家に留まらず種族の垣根を越えて名君と名が通った男。
彼が執り行った数々の政策は、衰退した国力を回復させるだけに留まらずまさに今最盛期へと導いた男。まさに名君と呼ばれるべき男だ。その男を囲むような形で、住民達は静かに突っ立っていた。
「よくこのめでたい日に皆集まってくれた。王として感謝しよう。私が王となって二十年。王都は神々の祝福により今もなお平和を保っている。それは皆が、私の政策に従い続けてきたからに他ならない。そして、今日は君たちの命を持って数年の平和が訪れる。王として感謝しよう」
歳は意外と若く、30半ばぐらいだろう。指輪を人差し指とくすり指にはめ、左耳にピアスをつけていた。
顔立ちも整っていたが、嫌みのある言い方と鼻にかけたような態度にアルベールを含む多くの者に嫌気がさした。
「今日は非常にめでたい日だ。私からのプレゼントとして、何でも質問に答えてやるとし
う」
数秒の沈黙が続いた。考えてみれば当然だ。これから死ぬものが、一体何を知る必要がある。王もそれを承知で言ったのだろう。
「ふむ。質問がないならこれにて一一」
王は時計を確認し、こなれた様子でスムーズに進行する。
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