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人類、滅亡させてみました  作者: No.0
ニ章
62/66

レナとエルフ

 ――商業大通り


 王城から大通りにかけて、ここら一体は汚泥と化していた。

 際限なく現れた異形なモンスター達を斬り伏せ、その中をさらに剣を振り回す反動で撹拌した地獄絵図が広がる。

 しかし腐肉なことに、住民達を守りながら戦うこの戦場において、エルフが得意とする魔法が使えない中活躍したのは敵方に寝返ったフェリックスの剣技であった。

 


 「ふぅ~。いっちょ上がり」


 彼女がモンスターを一掃し、四肢をようやく休めた時始めてに聞こえた声は住民達からのものだった。

 それは歓喜と祝福とは到底言えない罵声に近しいものだった、アルベールから借りたローブが激しい戦闘の際にフードが脱げてしまったためだ。

 彼女が紛れもなく助けたその命に罵声を浴びせられた時、彼女は理解した。

 エルフがなぜ森から出なかったのか、そしてそれと同時に理解したのは、フェリックスが剣を振るうあの作業の意味をここに来て理解した。

 


 「さすがね、あなた。あれだけのモンスターを一掃するなんて」


 それを気遣う様にレナはエルフへと近寄り、労いの言葉を囁く。

 こうなることを知っていたためか、彼女はあえてここに残り彼女にそう告げたようにも見える。

 

 「あなた、まだ戦うことはできるかしら?」


 「なんで?」


 「逃げ遅れた人達を助けに行くからよ」


 「うん、当然だね。で、どこに行くの?誰がどこで逃げ遅れているかなんてわからないけど?」


 レナはアルベールが抱えていたこちら側の戦力が、どこにどうやって逃げたのかあらかた方向から予測していた。

 そして、ほっとけば本陣へと突っ込んでいきそうなエルフの手綱を握るためここで待っていたのだ。

 

 「そうね。でも、こんなモンスターが徘徊する街中に留まっている人間はいないわ。まずは、戦力を蓄えましょう」 


 そう言って彼女が向かうのは酒場だった。

 そしてそこへと向かう道中、アルベールとはじめて出会ったこの場所での一連の会話が脳裏に再生された。

 腕で体を包みこむように抱き、スッと落ちる涙を気が付かれないように前を歩く。

 

 ――酒場


 「ほらほら、みんな食べて食べて。食べた人から周辺の警戒してね」


 レナとエルフが酒場へとたどり着くと、ネーゼが中心となって食事の配給をしていた。

 正直、アルベールを失った住民達をどうやって先導するかレナは頭を悩ませていたが、アルベールとほぼ同等に導くネーゼを見て一安心した。

 周囲を警戒している住民達にも多少の覇気がある。 希望とまではいかないが、絶望の一歩手前、いや、絶望から引きずり上げたといった感じだと理解した。

 そして、その周囲を警戒する住民達には戦闘の形跡がない。

 おそらく、先程のモンスターとの戦闘であらかたエルフが片付けてしまったのだろう。

 意図的にではないが、各々の行動によって多少状況は好転してきていた。

  


 

 

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