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人類、滅亡させてみました  作者: No.0
一章

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55/66

決着3

一一二人の剣撃が激しくぶつかる中、無愛想な男が目を覚ます。かすれて見える二人の影を見て、剣へと手を伸ばす。


綺麗に横に並べられた二本の剣を取り、バリィッと砕けた謎の瓶を踏みつけながら立ち上がる。今にも倒れそうな鎧の男に比べ、致命傷すら負っていない己の脆弱さを呪いたくなる。


完璧とまでの敗北を背負わされてなお死ぬことはなく、屈辱的な敗北感もない。目の前で、今もたった一人であの化け物と対峙しているあの女が、互角に渡りあっていることにさらに腹が立つ。


自分が理想とする戦い方をしているのも、腹を立てている原因の一つなのだろう。


もし自分も魔法が使えたのなら、彼女のように互角に戦えたのではないか?考えないようにしていても湧き上がってくる負の感情を押し殺し、鎧の男にリベンジを仕掛ける。


洋剣を持ち、鎧の男の背後をとったままゆっくりと近づく。鎧の男が振り向くと、無愛想な男は振り向いた方向とは逆方向へと素早く斬り抜ける。


「グッ……!?」


「リベンジマッチだ」


 鎧の男は少し驚き、この男は自分とは違ったかたちの才能を持っていることを理解したようだった。


「いいだろう、認めてやる。それはスキルの類か?」


 彼はスキルを知らなそうだった。表情をピクリとも動かさずに顔だけを向ける。スキルとは、特定の条件で発動するものを指す。


彼が知らないということは、恐らく剣術も独学で身につけたのだろうと納得したようだった。


「すまない、忘れてくれ。敵の手の内を聞くのはご法度だったな」


 鎧の男の長い長い戦歴の中で、相手に興味を惹かれたのは初めてのことだった。


理由ハッキリしていた。だが口にしてはいけない。――したくない。もし自分が男じゃなかったら、こんな夢……簡単に捨てられたのに。


そして、恐らく自分と同じ道を辿るであろう彼を見ていると、寂寥感に苛まれる。そんな中でもネーゼの手は弛まない。


男達が身勝手に背よって、勝手に苦悩していることなど知る由もない。そこで――――彼女は切り札をきる。ネーゼは自身に火を纏わせて、自らの戦闘能力を極限まで引き上げる。


「ごめんなさいね。私だけじゃあなたに勝てないみたい。貴方、強いんだもの。だから、私達であなたに勝つわ。覚悟はいい?」


 ネーゼの剣が煌めかせると風が突き抜けるように走り、目まぐるしい速度で剣を交差させる。幾度も交差する中で鍔迫り合いになる。


攻守が凄まじい速度で入れ替わるなかでのしばしの静寂。そこに、無愛想な男は地を滑るように走り交差する剣戟向けて振り上げる。


二人の態勢が崩れ、無愛想な男はネーゼを超えるほどの剣技を見せつける。その凄まじい剣技に剣が悲鳴を上げ、大剣が砕け散る。


ネーゼはその隙を見逃すことなく、剣先から魔法を解き放つ。最初にかけた魔法も相まって、爆炎が辺り一帯を覆い被す。


その時確かに見た。魔法が放たれる瞬間、彼の満足そうな笑顔を。なんの笑みなのかはわからない。


それでも、爆炎に呑み込まれる瞬間に浮かべたあの笑みは、後悔も、憎しみも、喜びも、そのすべてを超えたところにあるものだと思い知らされた。


アルベールが鎧の男をとらえた時には、すでに地面に倒れ込んでいた。


喀血し見るに堪えない姿だった。身体中に刀傷を負い、魔法によってえぐられたような傷も所々見受けられた。


火傷はもっとひどく皮膚が焼けただれていた。レナは未だに信じられなかった。これほどの男がいたのかと。


これが、人類の頂点に立っていた男。彼の成し得てきた偉業を知らないレナでさえ、畏怖の念を抱かざる負えなかった。


「成ったな……」


「えぇ…」


 ネーゼは鎧の男を背に、剣を突上げ勝利宣言をすることなく静かに鞘へと剣を収めた。


「貴方が守り続けたこの国は、私が……私達の手で、紡ぎ押し返してみせるわ。だから、見守っていて。この国を。貴方が守り、私が示し、誰かが成し遂げるわ」


「そうか……そうだな。今日は……晴れているか?それとも……」


 左手を掲げて太陽に向って手を伸ばす。


「晴れてるさ。見えるだろ?そして聞こえるだろ。君のおかげで、ようやく春が来る。だから、あとは任せてくれ」


 アルベールが鎧の男の横に立ち、声を上げる住民達を見る。


「ああ……」


 小さく発したその言葉を最後に一一偉大な英雄は幕を閉じだ。

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