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人類、滅亡させてみました  作者: No.0
一章
50/66

王国VS国民

☆☆☆

一一王国の門

 王国はこの国の唯一つの入り口に大軍を配置していた。横に大きく広がった陣形を取っていた王国に対抗して、住民たちも横に陣形を取っていた。


できることならば、アルベールは王国とは正面切って戦いたくなかった。いくら住民達が戦闘訓練をしようと、正面衝突で勝てるほど王国兵は落ちぶれてはいない。


他国ならともかく、あの王が守り抜き、強国まで押し上げたこの国の兵達もまた、猛将に勝るとも劣らない実力者達である。


それ故、 王国側には余裕が見た。自分たちが負けるはずがない。装備、経験、戦闘技術、何一つとしてこれほどまでに優位に戦えることがなかったからだ。それ故に確信した。


『勝てる』と、いや一一負けるはずがないと。まさしくモンスターと人間の関係。必敗から必勝。今までの歴史から見ても『必然的勝利』。


それは、我々人類が数百年に渡り証明してきた負の歴史。目の前の確信した勝利を胸に、陣形も戦略も捨て、ただ貪欲に手柄を追い求めて突撃を開始を始める。


一方アルベール率いる元住民側は、人間らしい戦いかたをしていた。数を活かした戦術に、連携を取った戦い方。王国側がやっていた、人間らしい戦い方をしていた。


「ああーっ! うっとうしい!!」


「戦いづらい!正々堂々と戦わんか!」


 彼らは改めて実感する。 自分達がなぜ、今まで格上の存在と戦えたのかを。


「ええーい!貴様ら、何を勝手に陣形を崩している!一人ずつやられては意味がない!立て直せ!」


 前衛職の者が突っ込んでしまったため、後ろの後衛職は迂闊に援護もできない。まあ、それも仕方がない。


手数が多い後衛に比べ、前衛は一太刀に一人というのだから気持ちはわからないでもない。


しかし、そのせいで前衛の兵達は一度に複数の相手と戦闘が余儀なくされていた。そして、後衛へ突撃をするのは


「アハハハッ!させないよー!」


 変わり種のエルフだ。敵陣地に単身乗り込み、魔法と体術を駆使して大暴れする。


デタラメな魔法に、異常な身体能力。ほんと、よくあの森から逃げきれたのか疑問でしかない。


「クッソー!この女が邪魔で思うように動けない。お前ら早く戻ってこい!」


 一旦陣形を立て直そうと指示をする指揮官。相手は人間、知識なき魔物ではない。囲まれる中でも、武術の心得などない住民達から逃れるのは容易な事だ。


兵は囲まれる中で、一人に的を絞って連続攻撃を仕掛ける。所詮は素人、アルベールのドーピングなしでは死を忘れることはできない。


「ひっ、ひぃぃ!」


その攻撃に怯んで尻餅をつくと、すかさずトドメを刺しにくる。経験の差だ。


人を殺す訓練を受けている彼らと、多少腕に自身がある人間との差。戦場の中ではその差が死に直結する。


だが、アルベール側にも彼らと同等。それ以上に死と向き合ってきた孤高の剣士が、鋭敏かつ迅速に状況を読み取った。


無愛想な男は、洋剣を巧みに扱い相手の剣を受け流しそのまま斬り伏せる。


「た、助かりました」


「礼はいい。死なないことだけ考えろ、数がいるだけで相手は注意がそれる」


無愛想な男は戦闘に不馴れな仲間のフォローをしながら、敵に陣形を組ませないように上手く立ち回っていた。


戦況はかなり有利に進んでいた。仲間の士気が上がるなかで、レナの脳裏にはあの化け物染みた男の存在がどうにも離れない。


 レナは迷っていた。これでいいのか?こんなことをして意味があるのか?仲間に黙っていていいのか?


「どんどんいくよー!」


エルフが戦場を駆け、鎧に覆われた男に蹴りを叩き込む。だがしかし、男は微動だにすることなく冷たい目を向け地面に突き立てていた大剣でノーモーションで一閃する。


エルフはその生物が常軌を逸してると攻撃をした瞬間に悟り瞬時に撤退をしたのにも関わらず、危機一髪で躱すのがやっとだった。


近距離戦はまずいと理解し、距離を取りながら魔法を詠唱するが一瞬で距離を詰められ腹部へ重い一撃が入る。


そのまま倒れ込み、大剣は首もとへと振り下ろされる。無愛想な男はエルフの前へとすかさず入り、大剣を受け流す。


そのまま無愛想な男は、もう一本のレイピアを抜き出し斬りかかる。


「軽いな……」


「!?」


今さっき弾いたはずの大剣で、レイピアから繰り出された神速を弾く。


レイピアを弾かれた反動で仰け反り、エルフと同様に腹部に一撃をもらい、そのまま城壁へとエルフもまとめて吹き飛ばす。


吹き飛ばされた二人が生きているかもわからないほど血まみれになっていた。 確かに感じた一一敗北の匂い。


そして聞こえた一一敗北の足音が。王国兵は鎧の男の勝利を見届けると、騎士長らしき男がチャンスを見逃すことなく指示を出す。


「我々の勝利は確定した。より多くの者を討ち取った者は、王から褒美が貰えるだろう。一つでも多く功績を上げろ!」


無愛想な男が消えたことによって、急激に状況は変化した。王国側は完全に陣形を組み直していた。


一一丘の上。


「素晴らしい。この国を影で支えているのは、きっと彼なのだろう」


アルベールは素直に騎士長を称賛した。 しかしアルベールは気づいていた、彼に指揮官としての素養がないことに。


それでも、最低限の仕事をしたことは確かだ。それと同時に考える。もしこのまま敗北をしたら、王都に住む人たちはどう思うだろうか。


アルベールが言ったように、自分達でもこの国を変えられると考えるだろうか?愚かな者達が、できもしない幻想にみいられ滑稽に死んだ。


そんな歴史の一ページにすら残らない、よくあるつまらないものとして人々の記憶から消えていくだろう。


もし意味があったと伝えるならば、ここで死んではならない。だが、ここで撤退をしてしまったらそれこそ何も残らない。


何か一つ一一何か一つでいいから、意味があったと証明が欲しい。


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