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人類、滅亡させてみました  作者: No.0
一章
35/66

別れ2

「ハハハハハハハハハハハハ、これは手厳しい。私にもありますとも、飛びきりの作戦が。まずは二人でここを抜け出して先程の見つけた湖を見に行きましょう。それから二人でディナーをしてから、美しい美少女エルフが寝ていたかもしれないベットで二人で愛を誓うというのはいかがですか?」


「お断りよ。だいたい、ディナーは誰が用意してくれるのよ」


「それは知りません。そんなことより早く行きましょう。そして、私を抱きしめてあれやこれやでいい夢を見ましょう。個人的には責められる方が好きですが、レナさんはどっちが好きですか!」


「だからお断りよ、あなたとなんて」


「いいですねー。その罵声が私を新たな境地へと誘う。もっとなじって縛って苦しめてー一一一一ッ!!」


「はぁ。貴方といると本当に疲れるわ、もう寝ましょう」


 もはや恒例にもなってきたアルベールとレナの言い争い、初期と比べれば良くなった関係性。何より、レナの顔つきが柔らかになってきていた。


「おっと。それはできない相談のようだ」


 微かではあるが、外から気配を感じた。それも一人ではなく、数十人からとただ事ではない人数の気配。


「何人?」


 レナはアルベールの表情が数段階引き締まった事を確認し、ベッドから立ち上がる。


「さあ、何人でしょう。少なくとも美少女エルフがいることは確かなようだが、さすがの私も手に余る」


 歴戦の戦士でも戦闘となれば口数が減るものだが、いつもと変わらず愚者のままでいることに不思議と安心させられる。


しかしレナとアルベールの短い旅の中で、今が一番の難所であることは変わりなかった。相手は知性のある敵。


レナとアルベールが過去に遭遇したモンスターとは明らかに違う。数人連れで出発した旅も、ここに着くときにはレナとアルベールの二人だけになっていた。おまけに、ここには退路がない。


「どうするつもり?」


「さて、どうしたものか。少々挑発しすぎたようだが」


 一切困った素振りを見せることなく、ポケットから小包を取り出した。


「何それ?」


「弱い私には必需品のアイテムさ」


 アルベールが言葉を言い切る寸前で、ぞろぞろとエルフ達が部屋に突入する。そして、弓矢を構えるエルフ達の真ん中から姿を現した長老が。


「どうでしたかな、久々の布団の寝心地は。我々エルフは人間とは違い、布団で眠る習慣がありませんのでよくわかりませんが」


 と、この場においてアルベールとのしばしの対話を求めた。おそらく、先程の舌戦に思うところあったのだろう。


アルベールの中で長老の評価ががっつり低下しながら、長老が求めたであろう絶望の表情を浮かべることなく極めて愉しそうに会話を続けた。


「そうだな。なかなか悪くなかったが、こうむさい男がぞろぞろと来られると居心地は悪いな」


「ハッハッ!それはすまない事をしましたな。では、寝床を少々変えさせていただきますかな。地中の中にでも」


「クソジジイ。出会ったときから顔にそう書いてあったぞ」


「ならば引くべきでしたな。のこのここんなところに来た自分を恨んで死んでいきなさい!」


 長老の後ろで弓を番えた者達が一斉に放った瞬間、アルベールは小包を地面に叩きつけ煙ですべての視界を奪う。


「小賢しい!入口さえ塞いでおれば奴らは逃げられない。皆の者、動くなよ」


 視界を奪われた長老が指示を出し待機している中、アルベールは真っ先にある場所に向かった。


「ひゃっ!」


「なんだ、奴は何をしている!」


 数センチ先すら見えない煙幕の中で動き回るアルベールと、そこから聞こえたレナの悲鳴。


下手に腕が立つ人間よりも、小賢しくあれやこれやで生き延びている人間の方が相手取ると面倒くさいことを理解していたエルフはレナの悲鳴により先に気配を研ぎ澄ます。


「ちょっ!ちょっと!どこ触っているのよ!」


 そんな中で聞こえてきたレナの声。アルベールは視界が悪い中、一切迷うことなくレナへと詰め寄り嫌らしい手付きでレナの臀部と胸部をひととおり弄り抱き上げる。


「気にすることはない!私はこれぐらいのサイズがちょうどいい!」


「誰が感想を言えと言ったッ!!」


 悪びれもせず、誤魔化す素振りもないこの男。それに憐れとでも感じたかのようにフォローするこの男は、未だに片手で乳を揉みしだく。


「んーん。それにしてもなんだろう、この気持ちは。どこまでも柔らかく、しかしハリがあるこの感覚は。いつまで浸っていたい。もしかすると、おっぱいは人類を救える可能性を秘めていたと言うのか!?ムブッ!」


 お姫様抱っこされているレナから痛烈な一撃をもらう。


「次触ったら殺すわ」


「はっ、はい!すみませんでした!ちょっと調子乗りすぎました!ごめんなさい!」


「くそッ!視界がッ!奴らはどこだッ!」


 アルベールがレナの魅力をまた一つ学習している間に、エルフはそこまで来ていた。


「あっ!こんなことをしている場合ではなかった!じゃっ!これにて失礼」


 煙はますます濃くなり、それに乗じてアルベールも姿を眩ます。


「逃げられるぞ!入り口を固めろ!」


「し、しかし、視界が悪くて」


「煙玉の効果はそんなに長くない!入り口さえ固めていればよい!」


 入り口にさらなる増援がまし、ガッツリと固め虫一匹入れない鉄壁の守りを固めるエルフ達。


そんな中、煙の中から異臭と光が見えた。発光植物とは違った。赤く、メラメラとした光。うねるようであり、焦げるような異臭。


「ん?なんだこのにおいは」


「ま、まさか!あの男!」


 赤くうねる光は次第に大きくなり、熱を感じさせた。エルフの中で最も嫌な想像が駆け巡った。


そして、忌々しい記憶がフラッシュバックさせ、エルフ達の怒りを煽る。


「正気かアイツ!自分達も死ぬかもしれんのにッ!」


 遁逃するエルフ。自然を重んずる彼らにたいする侮辱ともおもえる行動。一人でも多く道連れにする。


なんて考えもあったのかもしれない。しかし、炎によって時より覗かされる爛々としたアルベールの目は、卑屈さよりも別のところからきているようだった。


「いやー、よく燃えてますねー。キャンプファイヤーでもしますか」


 そう嘯くアルベールは再び、あのおぞましい笑みを披露する。長老との会話で見せたあの笑みを。


「家畜がぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああ!」


 長老の咆哮すら嘲笑いながら、満足気な表情を浮かべるアルベール。


「あなた本当にイカれてるわ!」


 全く以ってそのとおりである。火を放ったからといって状況が好転したわけではない。むしろ悪化していた。


この場にいるすべての者が、人間が抱く最上級の感情に侵されていた。


「そんなことないですよ、ほら」


 アルベールが指した方向には、木を切り抜いてできた脱出路があった。


「さすが私、完璧な作戦。あれ?」


 アルベールが抱きかかえていたはずのレナはいつの間にかおらず、胸を揉みしだいていた手は名残惜しそうに今だに宙を撫で回す。


「あれ?私の愛する人は何処に!?」


 アルベールが脱出路を見ると、誰よりも早くレナが脱出をしていた。


「レナさん!?それはさすがにひどいのでは?」


「あなたも逃げなさい!」


「は、はい!」

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