傷痕
★★★
「ねぇ、アルベール。何で私がこんなことしなくちゃいけないの?」
レナは怒っていた。まぁ、無理もない。いきなりこんなところへ連れてこられたら誰だって怒る。
場所は王都を見渡せる小高い丘、ここにたどり着くためにまだ肌寒い明時に乙女の部屋に不法侵入をした挙句必要最低限の荷物を持たされここまでやってきた。
町から王都にかけての途上で用を問いた時にただの偵察だと聞かされた時は流石にレナもキレていた。
「……?相手を攻める前に偵察をするのは、至極当然だと思うが?」
「だから、なぜ私とあなたでしているのかと聞いているのよ!」
「まあ、そう怒るなよ。君だって、相手の戦力ぐらい知っておきたいだろ?」
半ギレ状態のレナを慰めるためか、最もらしい理由を並べて軽く慰める。レナは額に手を当ててこの男に流され付いてきてしまった自分に呆れたのか歎息をつき冷静さを取り戻す。
「こんなところから相手の戦力がわかるの?」
「正直そこをつかれると痛いが。まあ、ここにいてもしょうがない……入るか」
アルベールは唐突レナを抱きかかえると、
「ちょっとなにするの」
という一言とともにレナからジト目が飛んでくる。
「女性の大切な睡眠におけるゴールデンタイムを邪魔してしまったので、エスコートでもしようかと」
「結構よ。」
「まあ本音を言うと、君の歩幅に合わせてここまできてしまったせいでかなり時間のロスをしてしまったのでおとなしく運ばれてくれないか?」
「気を遣ったあの言い回しにも腹が立ったけれど、忖度なしに直線言われるのも腹立つわね。」
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