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15.続 シルドと一緒に荒稼ぎ!


目の前20m以上に広がっていた光景には、無数の斬撃の跡とマンウィズバッド本体のドロップ品があった。


巻き上がった土煙の所為で、魔物が灰になるところが見えなかったのだろう。


「な………」


エルは疲労も相まって言葉が出ず、無数にある斬撃の跡を眺めることしかできなかった。


「これが俺の感覚だ。いずれ使えるようになるものだろうし、覚えておいて損は無いだろう」


(そんなこと言われても…)


今のシルドは絶対に一度しか振っていなかったはず。斬撃は目で追えなかったが、腕に伝わってきた感覚では一振りだけだった。


速すぎるあまりか、私の腕に伝わったのは剣が強く地面に当たる感覚だけだったが、絶対に一振りだけ。


でも、それだと無数に広がっている斬撃の跡と数が合わなくなってくる。


斬撃の跡が生成されているのは、ここから20mくらい先の場所。剣のリーチもおかしいし、一振りの感覚に対して斬撃の数もおかしい。


噂に聞いていた世界最強クラスの技を間近で見て、私が思ったことはただ一つ。


「何も分からなかったわよ…」


それを聞いた当人は”今はまだ分からないだけだ。”と言うが、私はどれだけ理論的に教えられても理解できる気がしない。


この世界におけるスキルとは、一般的に魔法より効果が低く、精神力を消費するかどうかで判断されることが多い。


熟練度にもよるが、剣のスキルは剣を使っていれば手に入り、弓のスキルは弓を使っていれば手に入る。


しかし、私にはどうしてもこのラッシュ・アウトがスキルの範疇に収まっているものだとは思えない。


目で追えないほどの無数の斬撃を一振りで生み出す。これを聞いただけで、既に魔法の奇跡と同等か超えていると言う人がほとんどのはずだ。


もしラッシュ・アウトが魔法だったとすると、むしろここまでの規模でなければ誰にも使われないだろう。


言葉を唱えれば魔法は簡単に発現するが、スキルは違う。実際に体を動かすのがスキルだ。攻撃系のものであるなら尚更。


私のラッシュ・アウトの2連撃は、人の肉体として常識の範囲内の効果を持っているだろう。しかし何度も言うことになるが、シルドのものはどうだ?


地面が掘り返されるほどの斬撃を、目視でざっと見ただけでも数十回は行っている。一振りの内にだ。


そして、そのシルドが戦っていた魔王や魔物というのは、どれだけ常識外れだったのだろうかと思いふけってしまう。


シルドと一緒にドロップ品を集めながら、私はそう思い悩んでいた。


「俺の方はこれで終わりだ。そっちはどうだ?」


「私の方も、これで終わりよ」


「ふむ…これだけあれば、流石に銀貨10枚は貰えるかもしれない」


「ね、ねえシルド?」


私は可笑しな質問をいていると分かっていながら、シルドにある質問を問い掛けた。


シルドも不思議な顔をしながら私の言葉に耳を傾けてくれている。


「失礼になっちゃうのは重々承知だけど……正直に教えて」


「ラッシュ・アウトって、魔法でしょう?」


これは、相手の努力を踏みにじる発言に近い。どれだけの努力を積み重ねてこのスキルを手に入れたのか分からないからこそ、私は自分のラッシュ・アウトがシルドのものとは違うのではないかと思ってしまった。


人の肉体の限界を超えている。私にはシルドのラッシュ・アウトがそう見えた。


腕の感覚に続いた音も、斬撃の数とは合わずに1つしか鳴っていない様に感じた。他に誰が音を置き去りに無数の斬撃を繰り出せるのだろうか?


いいや、誰1人として存在しないはずだ。


生身の肉体では限度がある。シルドのラッシュ・アウトは、それの何百倍という負荷を受ける行為だった。


私の言葉を聞いたシルドは難しそうな表情に変わり、何とか捻り出す様に声を出した。


「…実は、自分でも明細に何がどうなっているというのは、理解できていないんだ」


「少なくとも、魔力消費が無く精神力を消費していることからスキルと判断した。それは2連撃の時からそうだったが…」


「何連撃が可能になった時点から…というのは覚えていないが、仲間と旅をしていたある日突然に、今のラッシュ・アウトに近いものができるようになったんだ」


自分の持っているスキルが何なのか、それが理解できないこと自体は珍しくない。


実際、私もギルドに行くまではただの2連撃がラッシュ・アウトだなどと、思いもしなかったことがある。


「もちろん、今の精度に持っていくには難航したこともあった。今でも最大を出すなら、呼吸が整えてある状況じゃないと酸欠を起こす」


「言われてみれば、これについて深く考えたことは無かった。当時はハードアタッカーとして、仲間に貢献することしか頭に無かった。使える物は何でも使う主義だったからな」


「そう……」


シルドの言っている通り、精神力を消費して発動するのであればスキルに当てはまるのだろうが、実力に応じて効果が拡大していくという点も通常のスキルらしくない。


彼は以前に全力で剣を振り回しているだけと言っていたが、逆に2連撃が本当のラッシュ・アウトで、そこから無理矢理に2連撃を繋げていった結果がシルドのラッシュ・アウトなのではないかと考える。


…しかし、それもまた不明瞭な点が出来てしまう。


ラッシュ・アウトは消費する精神力こそ少ないものの、それを連続して発動させているということなら、消費する精神力が馬鹿にならないはずだ。


今、確定してラッシュ・アウトについて言えることは一つ、”前代未聞のスキル”であるということだ。


2連撃から使用者の実力で進化し、通常リーチ外への攻撃も可能で、その効果は魔法の奇跡に匹敵し、消費する精神力も少ない。


ラッシュ・アウトは、レアスキルなんて所じゃ止まらない。


想像すらされない様な、唯一無二の性能だ。



──ドロップ品の換金を済ませ、家に帰る道中


「……んん?」


私は依頼報酬とドロップ品の換金で手に入れた銀貨65枚を大切に持ちながら、何となく森の声を聞いて歩いていた。


「シルド、2階の窓って開けてた?」


「いや、エルが開けていないなら閉まっているはずだが」


嫌な予感がする。


私が2階に着替えに行った時は開いていなかったはず。同じく、私が開けたわけでもない。


「…もしかしたら、盗賊が入ったかも」


「何?」


私とシルドは小走りで家へ向かった。


盗賊が入ったにしては、不可思議な点が幾つかある。


森の声によると、2階の窓以外はどこも開いていないとのこと。


更に、窓を割られていたり、荒らされた様な痕跡が無いとも言われている。


森の声は現状起きていることは教えてくれるものの、起きたことを記憶することはできない。


侵入したのがどんな者だったのかは特定できないが、家で何かしらが起こったのは間違いなかった。


「ドアは…閉まってる」


家に到着した私は、まずドアを確認した。


森の声が言う通り、ドアに荒らされた様な痕跡は無く、ドアどころか家の外観に荒らされた痕跡は一つも見つからなかった。


室内に誰も居ないことは把握済みだから、ドアを開けて中へと入っていく。


(足跡はあるけど、急いでいた感じではなさそうね。何でかしら…)


空き巣は家主が帰って来ない内に済ませるケースが多い為、かなりドタバタすることになりそうだが、あちらこちらを走り回った様な跡は見つからなかった。


1階を見て回った後、階段を上がって2階に足を運ぶ。


開いている窓を確認すると、レール部分に土汚れがついているのが確認できた。


家の壁に汚れは確認できなかった為、何かしらの方法で窓を開けて、直接ここに飛び乗ったのだろう。


(私の部屋にも足跡…)


倉庫にされている部屋なども確認したが、荒らされた様子は無かった。それ以外のどの部屋を見ても、全て同じ様子だった。


自分の部屋にも誰かが侵入した跡があったものの、深入りはされていない様だった。


「…何もなさそうか?」


「ええ。何でかしら…」


シルドが私の所まで来て、お互いに情報を交換する。


まず、”家の外側、内側共に、闇雲に荒らされた痕跡は無かった。”


続いて、”何かしらの方法で2階の窓から侵入した。”


最後に最も奇妙なのが、”金品が一切盗まれていないこと。”


話し合った結果、この3つを纏めることができた。


「盗賊なのに、金品を盗んでいかないって…」


「となると、金が目的では無かったということになる」


「……私か、シルドが目的だったって事?」


シルドは”恐らくな”と付け加えて頷いた。


心辺りがあるとすれば、人攫いの件だろう。


あの人攫い達は、別の町へと馬車を移動させている最中だった。


どこに向かうつもりだったのかは知らないが、あの3人が大きな組織に属していたのなら、この一連は組織の恨みを買ったということで合点がいく。


「…エル。お前はしばらく、町の宿で寝泊まりした方が良いだろう」


「え。何で?」


「これが俺かお前を狙った侵入だとしたら、再び仕掛けてくる可能性が高い。違和感を出さない為に俺は残るが、お前は別の安全な場所に行った方が良い」


「でも、シルドは残るんでしょ?危ないわよ…」


「俺は腕に自信がある。それだけで十分だ」


(それを言われたら、この世のほとんどの人は横に並んで出れないわよ……)


シルドは私の身の安全を考えて言ってくれている。だけど、それは私も同じ。


「貴方が居る以上に安全な場所は無いでしょ?宿で1人の方が怖いわよ」


それを聞いたシルドは、驚きと困惑が入り混じった様な表情をしていた。


それは、身の危険を顧みず共に過ごすと言ったことへの意外さと、何者なのか判明していない相手に不安ではないのかという心配から来る表情だった。


これだけの露骨な襲撃跡を目にしているから、襲撃に対する自覚が甘いということではないだろう。自身の部屋にも侵入されていることから、確実に不安を感じているはず。


「軽く言っているが、死ぬかもしれないんだぞ」


「自分が指導している弟子のことが信用できないの?それとも、貴方は私を守らずに死ぬつもり?」


「………」


そうだな、そんなわけがない。


心情からして、俺がこいつを守らないわけがない。


情けの無い反抗心とでも言うべきか。


…心底くだらないな、俺の性根は。


「…これからは、心身共に休められるとはいかないかもしれない。俺は警戒しながら寝るが、お前はどうするんだ?」


「シルドが警戒してるんだったら、私もシルドの近くで眠らないとじゃない?」


「俺としては、そうしてもらえると周囲の危険を管理し易くて助かる」


懸念点があるとすれば、同じ場所で寝ていて万が一にでも誰かが来た場合、変な勘違いをされないかということだ。


個部屋で寝るのではなく、リビングのソファで寝るつもりだが、距離を取っても同じ場所で寝ていることには変わりない。


「自分の部屋からブランケットとかを持ってこないとね」


「そうだな。警戒しながら寝るから、武器や装備なんかも近くに置いてあった方が良い」


エルが”了解”と言って、2階の自分の部屋へと向かって行った。


ここまでやってくるということは、今後家とは別のどこかで遭遇する可能性も高いはず。


今回侵入してきた者の証拠は、家の中に残された足跡以外は何も残っていなかった。


前の人攫い3人の様な下っ端ではなく、賊として地位の高い者がやってきたのかもしれん。


足跡からしても、家の中に入ったのは2人。


合計何人で来たのかというのは見当がつかなかった。家の周辺は場所によって岩場が多く、獣道を通って来たのなら全て見て回れたわけではない。


浮遊する魔法を使われていたのなら、今の話は全て白紙だ。深追いするほど時間と労力の無駄遣いになってしまう。


そもそも、痕跡を消す魔法、残さない魔法は幾らでも存在している。今回の侵入者達の手法からしても、賊として確かな手腕を持った者が仕掛けてきたのは間違いない。


となると、痕跡を消す様な魔法を使っている可能性が高くなる。


「ふぅ…意外と、ブランケットも持って歩けば重く感じるものね」


俺が想像を巡らせていると、色々手にしたエルが2階から戻ってきた。


ブランケットだけでなく、小物入れや短杖などを持っていた。


「その短杖は…?」


「これ?ほとんどのエルフは護身用とか緊急用に持ち歩いていると思うわよ。何も無い状態で魔法を使うよりかは、かなりマシになるからね」


かなり珍しい物だからか、思わず目にしてしまった。


人間の間での短杖は、普通の杖の故障扱いとしてしか見られていなかったが…そういう使い道もあるのか。


十分な長さを持っていない杖は、精密さに欠けるというのが仲間から聞いた知識だったが…


これをレイネが見たら、一体どんな反応をするのだろうか?


ふと料理中だったことを思い出し台所の方へ戻るも、水を張った鍋は火力が弱かったのか温かさは感じるものの、沸騰はしていなかった。


薪をくべる為に玄関にあるストックを回収しに行くと、そこにはメッセンジャーが来ていた。


(スズメ…レイネのか)


メッセンジャーはスズメの形をしていた。


俺が知るスズメの形のメッセンジャーを送ってくるのは、元仲間の魔法使いレーネオラのはずだ。


別段、何かしらの用があって送ってくるわけでもない。あいつが気を遣ってくれているのだろうが、ひと月に2回ほど寄越してくる。


『シド、元気にしてる?』


聞き慣れた声。


だが、それと同時に新鮮な声だとも感じてしまう。


それはエルと過ごしている所為なのか、単に前以上にレイネの声を聞かなくなってしまったからなのかは分からない。


(こいつ…メッセンジャーを寄越す度に最初の一言は必ずそれだが、言葉のレパートリーが欠損してるだろ…)


『私達は今日も今日とて、シドの代わりに来たタンクとアタッカーの子達を鍛えるために、魔王軍本拠地近くの町で奉仕活動をしたり、魔物退治をしていたところだよ!』


言っている通り、俺が抜けた後の勇者一行に送られた俺の代替となる者は、1人だけでは足りなかったらしい。


それも、タンク1名とアタッカー1名という、大きく分けられた職業を持つ2人が送られたとのこと。


俺が抜けてしまった所為で、優秀な戦士2人を送ることになってしまったことについては、ベルニーラッジに対して本当に申し訳なく思っている。


魔王討伐部隊に送られる者、それはつまり選抜部隊に属している者を意味する。


選抜部隊は軍隊よりも強力な戦力を持っており、いざとなったら戦争への参加や、治安維持活動なども行っている。


そこから魔王討伐部隊として抜擢されたのが今の勇者一行であり、アルサール、レーネオラ、タンクのルークに、アタッカーのユーシーだったか?


ルーク、ユーシーとは直接の面識が無いから、あまり俺が語れる者ではないがな。


『2人とも順調に成長しているから、もしかしたら半年も掛からずに本拠地まで行けるかもしれないんだ』


タンクとアタッカーという2大職業が来たから、ハードアタッカーの俺が居た時よりも戦闘は安定するんじゃないだろうか?


正確に言えば、2大職業は”魔法か物理か”で分かれている。


物理の中での2大職業が、攻撃するアタッカーか守りのタンクかのどちらかということだ。


『それでさ、こっちの方だと噂話程度でしか情報が無いんだけど、エルフの女の子を弟子にしたって本当?』


ほう?こいつらが居るの所が魔王城近辺だとすると、ヴォーラックの近辺にもなるのか。


デカルダからだと6日か7日ほど掛かる場所だが、そこまでエルのことが広まっているとはな。娶ったとすら勘違いされていたくらいだから、離れた場所で広まっているのも当然か。


『何か変な事とかしてないよね?一緒に訓練をしてた時からシドが告白されてるのを見かけてたけど、誰1人としてOK出してなかったじゃん?』


『”引退したし、まあいっか!”みたいに、女遊びをする感覚で取ったわけじゃないよね…??』


(俺を何だと思ってるんだ…)


出会ってから3年は経つ仲だというのに、俺がそういう様な人間に見えるのだろうか?


『え?…あー、うん。そうだけど…』


少し呆れていると、話しているレイネの後ろに誰かが居るのか、別人の声が聞こえた。


レイネもその声に反応し、会話をする様子が録音されている。


耳を澄ませて聞いてみると、それもレイネと同じく聞き慣れた声だった。


『──も話したい!シド!元気かー?』


『もっとこっちで話さないと声乗らないよ?』


懐かしいやり取りだ。


出会った時からアルサールは抜けている所があったが、それはレイネも同じだった。


俺、アルサール、レイネの3人で言うなら、一番常識人らしかったのは俺だったな。


だが、アルサールとレイネの2人を比べると、俺の代わりにレイネが常識っぽくなるのか。まともにやれている様で安心した。


(………)


安心した、が……


───この懐かしさを前に、どこか寂しさを感じてしまっている自分がいる。


『実はな、モドさんから新しい剣が届いたんだ!あー…音しか送れないから分からないか』


『うーん…実際の光景を送れる魔法の開発とかも試したけど、一からの魔法式の開発が必要になりそうなんだよね。何年でできるのかとかも想像できないくらい難しいし…』


『そうか…じゃあほら、この音は聞こえるだろ。な?新品だろ?』


何かの金属音が聞こえる。恐らく、指先で剣の刀身をつついているのだろう。


ゴレモドの愛称であるモドさんなんていうのも、久し振りに聞いたな。


(いや、新品かどうかは判断できないんだが…)


疎外感…と言うべきなのだろうか?それとも少し違う気がするが、何か心に来るものがある。


馬鹿馬鹿しいことで笑って、魔物を倒して、人を助けて─────


『ちゃんと音拾えてるのか、これ…』


アルサールは、未だ執拗に”カンカン”と音を鳴らしている。


何だったら、音が近くなってきた次第だ。


『流石に聞こえているよ。あんまり近すぎると、ビックリさせちゃうんじゃない?』


『そうか?』


「………フフッ」


思わず、ほんの少しだけ笑いが漏れてしまった。


寂しくも感じるが、同時に可笑しくて笑えてしまった。


魔王城近くだというのに、こんなに呑気な奴らが過ごしているなんて、後世になって知る者は誰1人として居ないだろうな。


『私は一方的にメッセンジャーを送ってるけど、シドもいつでも連絡してね。一回も返信を貰ってないから、ちょっと心配になってきちゃった』


『そうだぞー』


レイネとは少し離れた所から、アルサールの同意の声が聞こえる。


それは少し申し訳なく思っているが……


そう思っていてもできないくらい、俺にはまだ覚悟ができていない。


お前が無償で送ってくれる厚意に対するほどの、お前に何かしてやれそうな言葉が出せないんだ。


『それじゃあね。また連絡するよ』


『じゃあn───』


録音はそこで途切れていた。


(アルサールのことを考えずに切ったな…)


最後の最後まで馬鹿馬鹿しすぎて、もうどうしてやれば良いのか分からなくなってしまった。


それでも何だか、久しぶりに笑えた気がする。少し、心が軽くなった様な気がする。


メッセンジャーを返し、すっかり忘れていた薪を持って台所に戻る。


「あ、戻ってきた。メッセンジャーが届いてたの?」


台所には、肉を切っているエルが立っていた。


「あぁ。元仲間から少しな」


「わざとじゃないんだけど、ほとんど話が聞こえちゃってたわ。女の人の声は多分、魔法使いのレーネオラさん?」


「そうだが、知っているのか?」


「ええ。勇者一行は今のメンバーしか知らないけど、シルド、レーネオラさん、アルサールさんでしょ?」


種族柄、人の世の事情に興味は無さそうだと思っていたが、それも場合によるのだろう。


「そうだな。今は俺の代わりで2人増えたが…」


俺はそこから、少しだけ昔の話をするのだった。


最後まで閲覧いただき、ありがとうございます。

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