1.いつか、再び。
片腕を無くした、”ハードアタッカー”という職業を持つ主人公。
彼の背景に何があるのか、彼が何故勇者パーティーを離れたのか。
これは、そのごく一部が語られる、最初の一である。
事件は突然として起こり、一瞬にして終わった。
「がはッ!!!」
ただの、ほんの一瞬の油断でも許されないのだと、改めて認識することができた。
剣を持った魔物に左腕を切られ、完全切除された上に、その刀身は脇腹にまで到達していた。
「シドっ!」
仲間の魔法使いが言葉にならない叫びを上げる中、勇者アルサールが援護に入る。
それでも剣を持った魔物は止まらなかった。執拗な攻撃を避けながら鬱陶しく思った俺は、残った片手で魔物の首根っこを掴み、顔面に頭突きを見舞ってやった。
俺は満身創痍になりながらも、ようやく魔物はくたばり、一旦の休息が訪れたが、のんびりとは過ごしていられなかった。
「シド!早く腕の治療を…!」
さっきも言ったが、俺は左腕の完全切除に加え、脇腹に刃が入ったお陰で重傷だった。
「シド。う、腕は…その……」
脇腹の治療をしてくれた魔法使いは、言い辛そうに口をどもらせていた。
「…知ってるよ。治せないんだろ?」
「役に立てなくて、ごめんなさい…」
回復魔法は傷ついた体を治すことができるが、完全に肉体から離れてしまったものは治せない。皮の1ミリでも繋がっていれば治るが、切り落とされてしまった場合は効果はない。
俺は謝る魔法使いに"お前の責任ではない"と、魔法使いに回復魔法の礼を言い、体を起こしてみる。
すると、自分の体の変化に気づいた。
今までは両腕でバランスが取れていたが、片腕になったことで重心の位置が著しく変わっていたのだ。
加えて、俺が愛用している剣を持てば、重心の変化は更に戦闘に影響を及ぼすだろう。
片腕の状態で何度か剣を振った俺は、パーティーの仲間にある決断を口にする。
「…こんな所で悪いが、俺はパーティーを抜けるよ」
当時の俺たちが来ていたのは、魔王城から一つ手前の町だった。
自分で言うのもおかしいとは思うが、俺は単身火力なら誰にも負けないほど攻撃に全てを注いでいた。戦闘なら貢献できることも多かったが、片腕になった今は大幅な戦力低下を宣言しているようなものだった。
「何言ってるんだよシド!ここならまたいつでも戻って来れるんだし、一度町にに戻って治療すればいいだろ…!?」
アルサールの言う事には私情が混じっていて、あまり現実的な話ではなかった。
いくら熟練の兵士といえど、片腕を失えばできることは限られる。それは戦闘のパフォーマンスにも影響し、パーティーの火力担当だった俺にとって、片腕の喪失はハードアタッカーの意味を成さないこととなる。
アルサールには友情でそう言ってもらえたのだろうが、俺はもうパーティーに居たくないとも思ってしまった。戦力的にも後継者と入れ替わった方が賢明ということもあるが、もう一つ、俺の私情も込めている。
俺は、"町の近くで彷徨う程度の魔物に腕を切られた"という事実を恥じていたからだ。
それからは、俺はあっさりと仲間に別れを告げて、脱退の正式認可を貰うために、王都に戻る帰路へ着いていた。
俺は術者の声を受送信できる魔法・メッセンジャーを使い、王室宛に事情の説明と俺の代替戦力をパーティーが待機している場所に送るよう伝えた。
王室からの返答は、『王が直々に除隊を伝える』とのことだった。
王都への帰還は、馬を使っても6日の期間を要した。
道中には思い出の残っている場所が幾つかあり、少し懐かしい気持ちに耽ることもあった。
同時に、俺が抜けたパーティーで、仲間たちはこれからも思い出を作っていくのかと思うと、少し寂しいような気持ちもあった。
「…よくぞ、生きて戻った。英雄シルドよ」
俺は羽織っていたローブのフードを下し、国王の前に膝をついた。
好奇の目を避けるために羽織っていたローブだが、玉座の間に入室した瞬間、辺りにいた多くの者が俺の腕を見て騒然とし、反応は予想通りだった。
「シルド様…なんと痛々しい御姿…」
国王と王妃が俺に労いの言葉をかけてくれる中、俺は特に何も思わず、上の空でひれ伏す姿勢を続ける。
「そなたの多大なる貢献により、魔王の拠点に勇者達が到達するまでは、もはや時間の問題と言って良いだろう」
「シルド・ラ・ファングネル。その名声、その実力により、心身共に救われた民は世界中にいると見た」
「その功績を認め、望むものを何でも与えよう」
この国王の発言により、辺りにいる者は再び騒ぎ立てる。
魔王を討伐した勇者達への褒美として望むものを与えるというのが通例だったが、魔王を倒したわけでもないというのに、俺に何でも与えると言ったからだろう。
長年続いている国王と勇者のやり取りとしては例外であり、それを周りの野次馬衆は議論していたのだ。
「静粛になさい!」
王妃が立ち上がり、声色を強めて野次馬衆を黙らせる。
「…我が王よ。私は褒美が欲しくて戦ったのではありません。私は民のため、我が王のために戦ったのです」
「その清き精神、誠に素晴らしいものである。しかし、それではそなたの功績への対価が払えまい。何でも良い、口にしてみせよ」
俺は野次馬衆の前ということもあり、あくまで王国を代表する人間として発言した。
俺の態度に感心する者もいたが、そんな声は望んでいない。
実際は、早くこの騒がしい空間から抜け出し、自分独りで何者にも干渉されない何所かに行きたいと思っていた。
「…強いて言うならば、心身を休められる場所が欲しいです。討伐部隊に選ばれて以来、この身を酷使してきたものですから、長い時間をかけて、身も心も休めたいと考えております」
「……そうか。では、せめて金品を渡しておこう。これなら、そなたがどう過ごそうと役に立つはずだ」
俺は自分の本心を込めて、国王へ休息を要求した。
国王は何かを察したかのように間を置き、近衛兵に袋を持って来させた。
袋には、見なくても分かるほど大量の金品が入れられていた。
「…ありがたく頂戴致します」
俺は渡されたその袋に目もくれず、感謝を言葉にする。
「国王の名において、シルド・ラ・ファングネルの、魔王討伐部隊からの除隊を宣言する!」
「魔王によって占領された多くの大地を開放し、多くの命を救ったまごうことなき英雄である!」
「我らの喝采でもって、正式な凱旋とする!」
「英雄の凱旋を、喝采せよ!」
その言葉を口火に、玉座の間は拍手の音で満ち溢れた。
俺は耳を塞ぎたくなる気持ちを抑え、足早に部屋を出る。
玉座の間を後にしても、王城内では全ての兵士が敬礼をしてくれた。
そして、城下町に出てみれば、民衆からも感謝と労いの言葉を掛けられる。
「シルド様ありがとう!」
「腕は残念だったけど、よう戦ってくれたねぇ」
「カッコ良かったぞ!」
老若男女問わず、色々な人から多くの言葉を貰った。
その度、耳を塞ぎたくなる気持ちと、愛想笑いでやり過ごさなければならないという表裏で、心がかき乱された。
幾日か経ち、ようやく特別に言葉を掛けられなくなった頃、俺は王都から出ていくことを決めた。
重い鎧と振れない剣、国王から貰った金品入りの袋の3つを持ち、門番に許可を貰い、王都を出て歩き始めていた。
そして、王都の正門を出てからすぐの森の入り口に、俺を凝視し続ける怪しげな老人がいた。
一見はローブを羽織った農家のように見えるその老人に、"俺に何か用か"と問うと、老人はフードを外して素顔を見せた。
「いや、別れの挨拶でもしたいと思ったのでな」
老人の正体は、たった今俺が出た王都ベルニーラッジの国王である、ヴァラ14世だった。
数日前に謁見したばかりであり、そもそも国王が一人で都の外に出ていることに驚いた。
「こうして会うのは、何かと始めてだな」
「我が王!?何故、近衛も連れずに王都の外に…?」
「私も、昔は多くの国々を旅をしたものだ。ほれ、中々に上手く変装できているだろう?これなら、人目も気にせず話せるな」
「まあ、私が旅をしていたのは留学が目的だったがな。はっはっは!」
国王はほくそ笑み、近衛の目を盗んで王都から脱出してきたことに対し、してやったり顔をする。
それも、俺の旅立を見送るためにだと言う。
フランクに話す国王に少し困惑しつつ、敬意を示す姿勢を取る。
「それでシルドよ、これから何処へ向かうのだ?」
「…明確に決まってはいませんが、何処かの山小屋にでも籠ろうと考えています。王都の領地からは出ていくつもりです」
「そうか。仲間には連絡したのか?」
痛い事を聞いて来る国王に、俺は言葉を詰めらせながらも気持ちを表す。
「……いえ、恥ずべきことですが、私が腕を切り落とされる光景を見ていた彼らには、今は顔を向けることができないと言いますか…」
「ほう、仲間に顔向けできないと?」
国王は意味深な笑みを浮かべ、旅の熟練者としての貫禄を見せる。
「はい。除隊する意思は部隊から離れる際に伝えましたが…式典以来、私の口から正式に除隊したことは今も伝えていません」
「なるほどぉ…しかしその気持ち、肯けるとも」
国王は思考を巡らせているかのように唸りながら頷き、俺の"逃げ"に対して答えを出した。
「そなたの人生は、まだ始まったばかりと言えよう。確か、歳は17だったな…選抜部隊から魔王討伐部隊へ鳴り物入りだったことも関係し、冒険以外での外の世界のことは、てんで分からないことばかりだろう」
「ならば、そなたの良いと感じた道を行けば良い」
少し間を置き、ほんの少しの静寂が流れたと思いきや、国王は俺の王都から離れる意思を肯定も否定せず、言葉を繋げた。
「…それが、国王の偽り無きお言葉ですか?」
普段の国王からはかけ離れた態度も影響してか、俺は国王の言葉が信じられずに聞き返す。
「何故疑う?私はそなたの除隊を宣言し、世界中に証明した張本人だ。自分の発した言葉くらい、自分で責任を持つとも」
「………」
「”かわいい子には旅をさせよ。”そういった例えが存在する通り、未だ見たことの無い物事を目にし、経験とさせることは損失ではない」
俺が何も言えずに黙っていると、国王は本心らしきものを語り始めた。
「…だが、何事にも例外と言うものは存在する」
「例外…?」
「そうだ。私は式典にて、魔王討伐部隊が魔王の拠点にたどり着くのは時間の問題と言ったな?しかし、状況によってはたどり着けないこともあるだろうし、たどり着けたとしても魔王に苦戦を強いられ、下手をしたら勇者一行は全員殺されてしまうかもしれない」
「それは…想像に、難くはないです」
「だからこそ、もし勇者一行の苦戦や、更なる戦力を求められた時、君をもう一度呼ばなければならないかもしれぬ」
「だからこそ、英雄シルドよ」
国王はフランクな態度からは打って変わり、真剣な顔つきで俺に念を押してきた。
「これだけは忘れないで欲しい。いつか、再びこの地に戻ってくることになるかもしれない、悪戯な運命をな」
国王は俺の肩に両手を置き、顔を合わせるように促してきた。
それは確かに俺の目を見ていたが、同時に俺ではない何かを見ているようにも見えた。
「……?」
「…いいや、何でもない。肝に銘じられたのなら、もうそなたを留める必要もない。望む場所へ向かうがよい」
それだけを言うと、国王は俺の返事を聞かずに王都の方へと戻って行った。
俺は何も理解できなかったが、深く考えないようにして、森の道を歩き始めるのだった。
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それから1年が経った現在、シルドは王都から3つの都市を越えた先にある、傾斜の穏やかな山に住んでいた。
この山は、”中立国デカルダ”の領地となっているため、山小屋を建てて住むにはデカルダの許可が必要だった。
デカルダは、自国から一度も選抜・魔王討伐部隊に認められる者を輩出していないものの、王都ベルニーラッジと同程度にギルドが盛んなことで有名だった。
ギルドが盛んであれば強者も集うのではと思うかもしれないが、どちらかと言えば討伐依頼よりも、デカルダの占領地にある素材の採集依頼の方が多いため、良くても中級者と呼ばれるような者が集まる国だった。
「………」
シルドは王都を抜け出した後、デカルダのギルドで仕事を請け負って生活をしていた。
戦うことに心血を注いでいたこともあり、シルドにとって、ギルドに所属し戦って金を稼ぐというのは天職とも言えた。
ただ、良くても中級冒険者止まりの多いデカルダのギルドでは、シルドの実力を疑っていたり、腕を切り落とされたことを嗤う者も少なくなかった。
ほとんどの者がシルドを好奇の視線で眺め、取るに足りない者に多い、似た者同士での同調精神により、シルドの待遇は良いわけでも悪いわけでもなかった。
この中立国デカルダにおいて、シルドは誇りある英雄と言うよりも、ただの一冒険者として生活を送っていた。
「…魔獣化した鹿の討伐、終わらせて来た」
ギルドに入り、視線を浴びながら受付に向かうと、最近になって森に出現した魔獣の報告と、魔獣化した鹿の角を預けた。
「ありがとうございます。鑑定させていただきますので、少々お待ちください」
職員は受付の奥へ行き、通報されていた情報との照合、鹿の素材の金銭的な価値などを調べ始める。
俺は掲示板の方へ歩き、次の依頼がないかを探していた。
すると、酔っぱらった男が一人、後ろから声をかけてきた。
「おい!片腕の兄ちゃんよ!」
「………」
いつもの事だ。
こいつは、同じパーティーである男2人を連れて、常にギルドで同設の酒場で飲み過ごしている者だ。
声をかけてきた男の後ろにいる2人は、悪意の籠った笑みを浮かべている。
「そんな片腕でよぉ~、魔獣なんて倒せんのか~?」
酒臭い吐息と、へらへらと笑った顔で、シルドの顔を横から覗き込きこむ。
「いくら英雄様つってもよぉ。凶暴な魔獣が抑えられるわけねぇだろ!?なんせ、片腕しかねぇんだからなあ!」
男は声を大にして言い切り、仲間の笑いを誘った。それで、ギルドにいる少ない幾人かが笑い声をあげる。それ以外は、ただ聞いているだけで、その話が面白いとも思っていないような者の方が多かった。
シルドはいつも通り、反応することなく依頼を探す。
だが、今日に限って、飲んだくれの男は特別しつこく食い下がってくる。
掲示板を見るシルドの視界を手のひらで遮ったり、無くなった片腕の断面部分を突いてみたりと、子供のような悪戯ばかり仕掛けてくる。
「背中に提げてるご立派な二振りの剣もよぉ~、使ってる所ぁ見たことねぇって言われてるしなぁ」
「ほれほれぇ~。古傷が痛むーとか、実は別の人間に討伐させてきましたーとか、何か隠してるんじゃねーかぁ??」
「お待たせしました、シルド様───!?」
職員が何かを言い終える前に、俺は男の首を掴み、宙に浮かせていた。
「ぐっっ!てっ、てめぇっ…!!」
男はじたばたともがき、俺の手から逃れるよう暴れるが、隻腕になった俺には、ある特徴が増えていた。
それは、今まで両腕に負荷がかかっていたものを、片腕一つで受けなければならないことから来ている。
視覚を失くした者は聴覚が上がると言われるように、片腕になった俺は、残った右腕の筋力が上がっていた。
全盛期とは違い、筋力が上がった程度で俺のステータスが上昇することは無かったが、木の幹を抉れ、鉱石を砕き、その内右腕一つで獣を抑制できるようになっていた。
ステータス…つまり、人が分かりやすく人の特徴やスペックを測れるように規定した、複数の項目が変動することは無かった。
しかし、俺の身に実際に起きている変化は間違いないものであり、もしかしたら人の目では測ることができない変化なのかもしれない。
「そ、その手を離せっ!」
「英雄だからって、あんま調子こいてると法に触れんぞ!」
首を絞める力を強めていると、飲んだくれの仲間が「英雄の名が穢れるぞ」と、最もらしいことを言ってきた。
「…英雄と呼んでほしいなどと、誰が望んだ?」
シルドは力を緩め、飲んだくれの呼吸を確保してやる。
もちろん、始めから殺すつもりなどは毛頭無い。
「俺にその称号は不釣り合いだ。誰も頼んでないし、そう呼んだのもただの社交辞令だろう」
「そうだとも。朝から晩まで飲んだくれているお前達の言う通り、俺は最強の部隊にいながらも、腕を切り落とされた人間の恥さらしだ」
「だがどうだ?お前達の仲間であるこいつは、もがいていながらも未だに恥さらしの手から逃れられていない様だが?」
シルドは相手の有無を言わさず、淡々と言葉を並べていく。
続けて、掴んでいた飲んだくれを、仲間のいる席の方へ放り捨てた。
「ぐっ…!げほっ!ごほっ!」
「お前達は所詮、半端者だ。冒険者としての実力は駆け出しを脱した程度で、一般人としては酒に溺れる日常ばかり。労働など話にならない」
「てめぇ…人様を痛め付けやがって!前科がつきたくなきゃ、慰謝料寄越せやぁ!」
「名誉毀損もいいところだなぁ!」
尚も引き下がってくる飲んだくれは、自分が痛め付けられたことに対して、訴えられたくなければ金目の物を寄越せと要求してきた。
ギルドにいる者達は、英雄と呼ばれる立場にいる俺と、ただの飲んだくれの喧嘩がどのような結末を迎えるのかを気にして静まり返っていたが、一斉に呆れた声を飲んだくれに浴びせる。
周りの声を無視しながら、シルドは職員からの報告を聞き、討伐の報酬金をギルドに迷惑料として納めて貰うことにした。
「し、しかし、この角は金貨300枚ほどの価値が見込めますが…!」
職員の声には耳を傾けず、シルドはそのままの足で外に出る。
「これなら、納得できるか?」
戻ってくるなりそう言うと、飲んだくれが使っていたテーブルに、討伐した魔獣を投げ込んだ。
全長2mを越える体長と、いかに強靭だったのかを表すような重量にテーブルは耐えられず、バキバキ、メキメキと音を立てて、ただの木屑となった。
禍々しい体毛に、異色に発達した角の欠けた鹿を前にするなり、飲んだくれ達は怖れるように引き気味になる。
「それを闇市にでも売って金にすると良い。魔獣の価値など、弱小らしいお前達なら良く知っているだろう?」
「それで得た金で酒を飲むのだろうが、お前達が酒を飲むほど俺は強くなる。お前達が酒を飲んでいる間、俺はさらに強力な魔物と戦っているのだからな」
「お前達は、このギルドでそのしょうもない人生を終えるんだ。特別誇れるわけでもない依頼を受けて、貰った金が底を尽きるまで酒を浴び続ける。誰からの信頼も、強さも、人望も子孫も無いままゴミの様に野垂れ死ぬんだ」
飲んだくれ達は、バツの悪そうな顔でその魔獣を袋に詰めた。
すると、ギルドにいた他の冒険者が、魔獣の異変に気付く。
「あれ…あの魔獣、首が折れてるのか…?」
誰かがそう言うと、皆が一斉に魔獣を目に入れ、異様な姿を観察する。
「一蹴りだ。魔獣の角を掴んだ後、何でもないただの蹴りでソイツを殺した。お前達も、殺して欲しかったら言ってみろ」
「いつでも、その首をへし折ってやるからな」
シルドは飲んだくれにそう伝えると、騒がしくなったギルドから抜け出し、帰路についた。
隻腕でありながら、テーブルを木屑に変えるほどの重量を持つ魔獣を投げ、一般冒険者との違いを見せつけたシルドは、もう二度と煽られることは無いだろう。
小説家になろうでは初めまして。趣味で小説を投稿しているNekagという者です。
以前よりpixivで投稿していたこの作品なのですが、本格的な投稿を始めたく、こちらにも投稿を始めることになりました。
諸々の告知については、X(Twitter)を運用しておりますのでぜひご確認ください。