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後悔-1

悔しさが男をつくる。

惨めさが男をつくる。

悲しさが男をつくる。

そして強大な敵こそが、

真にお前を偉大な男にしてくれる。

byマンフレート・フォン・リヒトフォーフェン


自衛隊に入隊したのは18歳の時。

高校卒業後だ。


志願こそしたが、

日本を守りたいだとか

人の役に立ちたいだとか

そんな大それた理由などない。

ただ単に公務員という職種が魅力的だっただけだ。


他の職種と比較して規律は厳しいし自由は少ないのかも知れない。

正直訓練はきついし面倒で大変だった。


でも仕事なんてものは須らく大変なものだ。

働きに見合う収入は得る事が出来たし、心身共に鍛えられた。

意に介せずとも肩書は正義だ。

悪い気はしない。

だからこの仕事に就いた事に後悔などなかった。


災害が起これば出動要請が下り、被災地に派遣され救助活動を行う。

それが大きな仕事だ。

そんな事はしょっちゅう起こる訳でもなし、日々の活動は有事に備えての訓練がほとんどだ。


射撃や戦闘術や戦車の扱い。

そんな事は救助活動にもれなく不必要な事だった。

無意味な訓練だと愚痴りながらも、それが役に立たない日常は平和な事なのだろうと思っていた。

世界のどこかでは愚かにも戦争が行われているというが、そんな事俺が知った事ではない。

対岸の火事ってやつだ。


日本は平和主義だ。

だから他国の戦争に介入しない。

軍人とはいえ、あくまで自衛隊。

俺の命が危ぶまれる事は無い。


そう思っていた。


それなのに……なんてこった……


忘れもしない。

あれは俺が入隊してから5~6年くらいだったか?

まぁ、それくらい経ったある日。

俺の階級は伍長となった。

下っ端でも偉くもないが程よい階級だ。


その日はいつもの様に訓練場に赴き、戦車に搭乗していた。

搭乗者はそれぞれ

司令手

通信手

砲手

装填手

操縦手

の計5名だ。

俺は操縦手を務めていた。


我々の小隊は再編成された比較的新しい小隊だった。

チームとして機能する為には、何回か訓練を重ねる必要がある。

平和な日本でその訓練を行う余裕も猶予も十分にあった。

そもそも、小隊が機能する様になったとして、それが活かせる場面があるのか?

この平和ボケした国で、戦車を使う実戦的な出来事が起きる事は未来永劫無い。


と断言していた当時の俺を殴りたい。



その時は直ぐに訪れた。


戦争が起きた。

世界的規模での大戦だ。

各国は挙ってこの戦争に参加した。

平和主義を掲げる日本でさえ、この戦争に参加した。

だが、この戦争に参加した日本を非難する者は1人として居なかった。

居よう筈もなかった。

日本は自ら望んで戦争に参加した訳では無い。

参加せざるを得なかったのだ。


そして、それはどこの国も一緒だった。

世界中が戦わざるを得なかったのだ。

家族をも守る為に……。

国民を守る為に……。

国を守る為に……。

そして、世界を守る為に……。

その“敵”を殲滅させなければならなかった。


だって“敵”は、“人”ではなかったのだから……。


未知なる者の襲撃。

最初に国が1つ滅んだ。

聞いたことも無いような小国だが、とにかく消し飛んだらしい。

突然の出来事に世界は震撼した。

事が事だけに、流石の俺も対岸の火事とは認識できなかった。


公開された“それ”が映し出された映像を見て、世間は様々な憶測をした。

未確認生物か

地球外生命体か

極秘製造された生物兵器か

神なんて言う奴もいた。


俺も映像を見たが、なんて事はない。

ただの“バケモノ”だ。

つまり、やばい。


体長は高層ビルに匹敵する巨体。

造形は人のそれに近いが、骨格的にはトカゲか?

背中には巨体に相応しい大きな翼が生えている。

翼には羽毛の様なものが確認できるが、体の皮膚は白く、そして濁っており、体表は皮なのか関節部分にしわが見える。

首は長く、その先にあるであろう顔面には、口と思しき穴だけが確認できた。

シルエットだけ見ると、西洋風のドラゴンと表現できるが。

色々不気味な見た目をしており、どこか美しさも垣間見える。

天使なのか悪魔なのか。

平たく言って“バケモノ”だ。


バケモノは1体だけでなく、数体は確認されている。

世界中で被害が報告され、直ちに討伐隊が世界的規模で編成された。

そのバケモノを殲滅させる為に人類は一致団結した。

それに伴い、人同士の戦争は一旦終わり、世界中の人々は協力し合う事になった。

悲しいかな皮肉にも、それは平和とはかけ離れた現状によるものだった。







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