聖なる武器による反撃
シェルモギは、空を飛ぶ巨大死霊鳥たちも合体させはじめた。竜にも似た迫力で、骨の翼を大きく拡げ城壁の内側を舞い、攻撃を仕掛けてくる。結界の外には出られないようだ。
「ああ、なんて迫力なの! たぶん、たくさんの核を持ってる」
竜骨のような死霊鳥に、マティマナは震え上がったが魔法は立て続けに投げた。
ルードランは引きつけるように、というより空間を近づけ間際に寄って行く。
「ルーさま、まさか……っ!」
「そう。良い武器が出来そうじゃないか?」
地上では合体を繰り返した死霊が、骨の組み合わさった巨体になって壁を打ち破ろうとしている。
マティマナは魔法をなるべく広範囲に撒きながら、ルードランの作戦のために溜めた魔法を待機させる部分も用意した。
聖女の杖から撒かれる魔法は、戦う者たちに闇を打ち払う強烈な付与を与え、死霊たちの核は視えたままにする効果を強めている。
「あああっ、無茶だけど、素晴らしい案です!」
「よし、良い位置に来た!」
ルードランは自分の空間に、巨大な竜骨のような死霊鳥が激突する寸前で大量の矢を放った。
複数の核が全て射貫かれている。骨はカケラというよりも、かなり大きな状態で飛び散った。
「ルーさま、すごいです!」
緑の瞳を瞠目させながら、マティマナは叫ぶ。杖に溜め込んでおいた、ふたつの鉱石を触媒にして強化させた雑用魔法を放つ。飛び散る骨たちは、満遍なくマティマナの魔法を浴びた。
武器になったのか、何が造れたのか、全く分からない。大量の品々は城の各地に散って行った。
「マティマナこそ! 何が造られたのだろうね?」
「分からないですが、たぶん、必要な場所に必要な武器が届いたのだと思います」
「次々に造るのがいいね」
「はい!」
もう、こうなれば、何も考えずに造り続けるのが良い。
マティマナの武器を手にしたらしく、あちこちで聖なる光があふれている。
だが巨大化させた死霊の力技で、城や別棟の壁が壊れ始めていた。
シェルモギは、死霊を増殖させているし、まだまだ異界棟からも死霊が流入し続けていた。
核は、無限なのだろうか?
合体した死霊は複数の核を持つが、全部の核を壊すまで大きいまま動いている。
シェルモギは倍加させ、合体させ、死霊は無限だと思わせているが、感覚としては、死霊の絶対数は減ってきてるように思う。
「ああっ、主城の壁が!」
壁に穴が開けられ、小さい穴へぞろぞろと死霊蟲が入り込んで行く。
扉が壊された別棟もある。扉が壊れれば、骨騎士も乱入する。
「城内は、武器が行き渡っているだろうか?」
ルードランは少し心配そうな表情だ。
マティマナが撒いた魔法を介して見る限り、城内の侍女や使用人は色々と渡されている武器や防具で応戦しはじめているようだった。奥まで侵入させないように奮闘してくれている。
新たな出来上がった箒で、死霊蟲を必死で掃き出しているようだ。
「みなさん、凄いです! 箒、良い武器みたいですね!」
気色悪い死霊蟲に、侍女たちはキャアキャア言いながらも、すごい機動力を発揮していた。舞い込もうとする死霊鴉は、箒で叩き出そうとすると細い枝が核に当たるようで倒せている。
新たに異界棟からあふれた死霊が吐く闇は濃い。騎士たちから奪う生気も闇に変換し、濃い闇と共にシェルモギは吸収して膨大な攻撃力と防御力を身につけていた。
その上で少しずつ闇を放出し、種類が増えた死霊を強化している。
不意を突くように、マティマナへと小さな死霊蟲が吹き付けられているのには注意が必要だった。
ルードランとマティマナは死霊鳥を倒し、骨からどんどん聖なる武器を増産する。
「異界棟からの死霊の流入が弱まってきています!」
法師の声が、高らかに城の敷地内に響き渡った。
仮面をつけているので、シェルモギの表情は分からない。
シェルモギは闇の煙幕を撒き散らし、死霊の数を誤魔化そうとする。
さらに、合体させた死霊を倍化させた。
「シェルモギの養分となる闇が減るかもしれませんね」
マティマナは法師の声を受け、ルードランへと囁く。
「死霊に限りがでてきたようで有り難い」
「動揺しているかもしれないから、魔法飛ばしてみます」
ふたつの鉱石で強化した混合の雑用魔法を、一直線にシェルモギへとぶつけた。
シェルモギに打撃はなさそうだったが、異変? なのか、独り言が聞こえてきている。
(死霊蟲が尽きた?)
異界側での異変なのか、探るような気配をさせていた。
怒りに満ちたようなシェルモギの手振り身振りは、身に付けた闇の装束のせいか不気味な死の舞いのようだ。
「退路が断たれたか。まぁ、良い。ライセル城よ、我が根城となれ」
シェルモギは却って開き直ったように、轟く声をライセル城へと響かせた。
帰れなくなったらしい。異界側で何か起こっている。
通路からくる死霊の数は確かに減っている。飛び出してくる数はわずかだ。
(もしかして、異界で何か、とんでもないことが起こってるのかしら?)
(そのようだね。第二王子が何か仕掛けたのだろう。このときのための準備をしていたに違いない)
(シェルモギの国が攻められているのですか?)
(まぁ、もぬけのからだろうから、簡単だ)
(ですよね、死霊は全部、ライセル城に投入されてますよ、これ)
(だから、シェルモギを討てば、戦いはすべて終わる)
マティマナは、ルードランと心のなかで言葉を交わした。シェルモギに聞かれないように念のため、という感じだ。
新たな死霊の流入が止まり、闇の補給が無くなれば徐々にシェルモギを追い詰めることができるだろう。
空から降ってくるバザックスの弾の攻撃が、威力を増している。
「あ、バザックスさま、すごい攻撃です! 魔石が進化したのかしら?」
威力が増しているし、骨騎士は一瞬で消え、合体した核が複数ある死霊も連弾で消滅させられている。
聖なる光が飛び散った。
「進化の上で、マティマナの魔法が付与されたのかもしれないね」
「魔石にも、作用できたの?」
心強い限りだ。
バザックスの攻撃だけでなく、騎士たちによる攻撃でも聖なる光があふれていた。あちこちで聖なる光が煌めき、滞る闇を少しずつ駆逐している。
光が満ちて積もれば、地を這う死霊蟲たちも弱るに違いない。
法師と、ライリラウンの雷に似た攻撃は、シェルモギへと集中して放たれるようになっている。
効果は薄く見えても、少しずつ闇が削れていた。
「みんな、あと一息だ! 聖なる光を放て」
ルードランの皆を鼓舞する声が響き渡り、呼応するように皆の「おおっ!」という歓声が城の敷地中に谺していた。






