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聖女見習いとディアート

 聖女見習いライリラウンは翌日に、聖王法師の転移で現れた。

 

早速(さっそく)来てくださってありがとうございます!」

 

 法師が転移してくれたので、ルードランと三人でライリラウンを迎えマティマナは弾む声で歓迎する。

 

「こちらこそ。良い機会に感謝します。一度、異界へも通行証の件で訪ねたかったから本当に嬉しいの」

 

 ライリラウンは丁寧に礼をしながら告げた。

 

「鑑定していただきたい品、どんどん増えそうなの」

「はい! 気合いいれてやりますからご安心を」

 

 法師は、全員まとめてマティマナが作業している部屋へと転移させた。

 

「まあ凄い! 変わった品がたくさんね!」

 

 ライリラウンは、マティマナの作業用の大卓を見て驚きの声を上げた。

 

「特殊な鉱石を使っているせいか、見た目はともかく、ユグナルガの国では見掛けたことのない品ばかりです」

 

 法師が応えた。聖なる力が宿っていることはわかるようだが、効能や使い道までは分からないようだ。

 もっとも造ったマティマナ自身も、全くわかっていない。何が出来上がるかも、見当が付かなかった。

 

「慣れてくれば、意図した品が造れるようになるかもしれないのですけど」

 

 マティマナは申し訳なさそうに呟いた。

 

「どれも、強烈な聖なる力がついてますね。収納箱にまで!」

 

 ちょっと驚き顔になりつつ、ライリラウンは「鑑定します」と呟やく。大卓の上で錫杖型の聖女の杖を軽く振りシャランと音を響かせた。

 清浄なる光が杖からあふれ、品々を包み込み、しばらくすると光は紙のようなものに変わる。箱ごとに紙が一枚ずつ。一点物にも一枚の紙。

 

「鑑定完了です」

 

 ライリラウンは丁寧に礼をしながら告げた。

 

「もう完了なのかい?」

 

 驚きながら、ルードランが各箱に入った紙を順に手にして行く。マティマナも、紙と自作の品とを見比べた。

 

『聖霊球:投げると弾け聖なる空間が不浄を駆除』

『聖霊石:武器に吸収され聖なる攻撃を付与する』

『聖霊箱:盗みを防止する宝石箱。宝飾品としての価値』

『聖霊箒:掃くことで地を這う不浄へと聖なる攻撃』

『聖霊刺繍:不浄めがけて飛び包み込んで消滅させる。手入れに使うことで聖なる力を付与する』

『聖霊籠:一晩入れると小さな品を武器化する。芸術的価値』

 

『聖灰球:投げると弾けて灰が積もる。燃やして浄化した状態。足元に落とすと弾けて煙幕のように不浄を弾く防御に』

『聖灰石:防具に吸収され聖なる防御力が付与される』

『聖灰箱:呪いの浄化。一品ずつ入れる』

『聖灰套:聖なる外套。不浄を寄せ付けない』

 

「霊鉱石を触媒に使用してマティマナさまが造ったものは、聖なる力による攻撃ができるようです。灰鉱石を触媒に使用したものは、聖なる力による防御ですね」

 

「たくさん在りすぎて混乱させそうですね」

「見本を届けて、それぞれ個数を決めて貰おうか」

「納品する品は注文に合わせますけど。こんなに素早く鑑定していただけるなら、もっと種類増やしても平気なのかも?」

 

 ライリラウンは、幾ら増えても大丈夫です、と、にっこり笑んでくれた。

 

 実のところ余り種類を増やさないように苦労していた。同じものを造るのにも慣れてきたから、大量生産は問題ないと思う。だが、なんとなく造りたくなったものを種類が多過ぎそうで押し留めるのは、ちょっと辛い感覚だった。

 これからは、思いつくままに思い切り色々造ろうと、マティマナは気合いを入れ直した。

 

 

 

 聖女見習いのライリラウンは、異界から通行証発行の許可を得たいと思っているようだ。

 ルードランが、契約した王への紹介状を書き、法師がライリラウンを連れて行くことになったが、同行する女性が必要らしい。

 

「マティマナはダメだよ」

 

 ルードランが先に釘を刺すし、法師もそれは分かっていた。

 

「あの……わたし、異界に行ってみたいと思っていたの。衣装を是非」

 

 遠慮がちに声を掛けてきたのは、マティマナの監視、という名目で部屋にいたディアートだった。

 

「ああ、ディアートなら僕の代理にもなれるし、良いね」

 

 ディアートであれば当主代理の代理が可能とのことで、即決まった。

 今のところ、マティマナ以外の者は、鳳永境(ほうえいきょう)に入っても問題ないと思われる。

 衣装代に、と、マティマナは魔法の布を百枚ほど渡しておいた。

 

 

 

 三人は、異界から早々に帰ってきたようだ。転移で部屋へと戻ってきた。

 

「まあ! ディアートさま! なんて美しいの」

「ふふっ。せっかくだから試着したまま購入して、着てきたの」

 

 マティマナが買ったのと同等くらいの品のようだ。それでも、色合いの違いや飾りの盛りかたがディアートにとても似合っている。

 

「どれもお似合いでしたよ」

「本当に。とても素敵です」

 

 法師とライリラウンの言葉に、ディアートの表情は淡く染まり、とても嬉しそうだ。

 

「異界に行って来られて良かった」

 

 ディアートはしみじみと呟いた。

 

「ライリさんの通行証発行許可も、破格の扱いでした。本来、最初の契約者以外は、異界での貢献が条件になるものなのですが。第二王子のお口添えで、無条件で得られました」

 

 冷徹王子との噂なのに、随分と好意的な対応だと思う。

 

「それは良かった」

 

 ルードランはホッとした様子だ。

 

「実質的に国を動かしているのは、第二王子らしいですね」

 

 法師は、仕入れてきた情報を伝えてくれている。

 

「第一王子は?」

 

 マティマナは不思議そうに訊く。謁見の際も、居なかった。

 

「第一王子は戦いの才能がありますが、政治はからきし……との噂です。王位は当分、現状のままだそうですね。王は傀儡(かいらい)で、権力を実質握っているのはフェレルド様という話です」

 

 そんなに公然と噂が流れているのも、ちょっと怖い気がする。

 

「マティにお土産よ」

 

 ディアートはどこからか、大量の花が束ねられた豪華花束を手渡してくる。

 

「異界のお花?」

「ええ。特殊な効果のある花も多いようでしたけど、ライリが見分けてくれたから、安全な花ばかりよ」

「お花たち、鉱石で魔法の道具に変えられるらしいです」

 

 ディアートに続け、ライリラウンも言葉を足してくれた。

 

「異界の方々、魔法細工が盛んなの?」

「いいえ? ほとんど出来ないみたい。ただ、マティの魔法の布を持っているから、魔法細工ができる者がいることは、お見通しのようね」

「でも、こんなに綺麗なのに。道具に変えてしまうの勿体ないかしら」

「少し愉しんで、枯れてしまう前に魔法掛けたほうが良いのじゃないかしら?」

 

 ずっとマティマナの監視役で品を造るところを見ているからか、ディアートは好奇心に満ちた表情で勧めてくれる。

 

「何が出来るか謎ですけど。そうですね。枯れちゃうのは悲しいから魔法掛けます」

 

 花束を抱きしめ、風変わりで心地好い香りを愉しみながらマティマナは応えた。

 

「異界で魔法細工する者でも、聖なる力を宿す方法はないようです。更に鉱石の力も加わるとなると、異界の方々も愉しみなのではないでしょうか?」

 

 法師も何気に愉しそうに、マティマナへと魔法の細工を勧めてくれていた。

 

 


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